※NLCPだらけ。

※勇ロラ勇ロレ勇武賢勇戦僧勇シンライマークリアリオリミネピサロザピサ勇主ビアアンフロヘンマリ主バテリドラ主マリガフォヨハアイ主姫ククゼシヤンゲル主リツイザラフェ

※ピサ勇は殺伐。



















 

 

 鬱金のシャンデリアがアイボリーの壁を煌びやかに輝かせ、紅いレースのカーテンがベルベットの質感で窓の彼方も此方も華やかに彩るその居室は古き良きラダトーム様式であるが、しかしここはラダトーム城ではなかった。窓向こうに広がるのは賑やかしいストリートと水平線を抱くローレシアの城下町で、すなわちここはローレシア城なのである。私も何度も訪れているのだから間違いない。

 しかし、この居室のカーテンはこんなにも優美で深い紅だったのか。円卓に透けて見える百合の花はこれほどに清新であったのか。その卓と、ソファとを縁取る金細工は、こんなにも厳かなものであったか。私の知る、現在ローレシア王太后のみが用いることを許される客室の現役時代を、まさか、あの方と共に過ごすことが許されるなんて。

 私は心なしか震えるティーカップから──厳密にはそれを持つ私の指から──目を逸らし、勇気を振り絞って視線を左横へと向けた。栗色の巻髪が白皙を優しく包み、同じ色の睫毛がシャンデリアの煌めきに対して金に、朱にと色を変えて答える様を、私は知らずうっそりと見つめる。肖像画でしか拝んだことのない麗しいお姿──ラダトーム王ラルス十三世の愛した二つの光玉が一つ、後に初代ローレシア王妃となった淑女、ローレシア様。人は彼女を敬愛の情を込めてローラ姫と呼んだ。

 睫毛がふわりと持ち上がり、空色の瞳がす、と滑る。

「サマンサ」

 小さな、愛らしい唇が私の名をお紡ぎになる。この身が微かに震えたのは、歓喜からか緊張からか。

「お顔の色が優れなくてよ」

「恐れ入ります」

 私は目を伏せた。自然と宮廷言葉が滑り出た。アレンやアーサーと話す時は勿論、私的な席でお父様と話す時でさえ出てこなかったのに。

「ロトの時代始まって以来の賢妃と誉れの高いローラ様とこのような時を共に過ごすことが叶いまして、胸が詰まりそうなほど嬉しくて」

「まあ、ありがとう。わたくしも、貴女のような可愛らしく優れた子がこの血を引いてくれて嬉しいわ」

 ローラ様は双眸を眇めていらっしゃる。私は頬に血が集まるのを感じ、小声でお礼を申し上げるのが精一杯だった。

「今日は是非、たくさんお話して頂戴ね」

 そろそろ皆様お揃いだわ、とローラ様は仰って、正面を向いた。私もそれに倣う。ローラ様のお部屋には、私たちを除いて二十二名の女性が集まっていた。

「ご機嫌麗しゅう、皆様」

 ローラ妃が微笑む。

「今日はこれだけの皆様にお集まり戴けて恐縮ですわ。わたくしにご助言戴ければ嬉しゅうございます」

 わたくしの夫のことです、とローラ様は仰る。

「夫はこの国の政をしております。為政者には求められるものが多うございます。しかしその中でも必要なこととして、他人を魅せる魅力というのが一つございます。人はなんと小細工を申そうと、外見から受ける一瞬の印象や、言動の端々からその人間の印象を直感に決めたがるもの……内実共に溢れ出る『人格の魅力』、もしくは『カリスマ』とでも申しましょうか。こればかりはすぐに養えるものでもございません。ですがわたくしはこれを養う手助けをして差し上げたいのです。そのために、皆様の旦那様の素晴らしい点をお伺いしたくてお集まりいただきましたの」

 密やかに談笑していた彼女らは、ローラ様がお話を始めてから静かに耳を傾けていた。お話が終わってからも静粛なままだった。しかし、やや間が空いてから盛夏の森の如きショートカットの少女が手を挙げます。

「すいません。十秒で簡潔にまとめてもらっていいですか」

「皆様の旦那様の素敵だと思われるところを教えてくださいまし」

 ローラ様のお答えは早かった。きっと彼女らの理解が追いついていないことを察していたのだろう。

 すると網元の御令嬢が立ち上がった。

「べ、別に結婚してないわよっ」

「付き合った覚えはないわねえ」

「付き合いたくもないけど」

 続けて王女付きの女剣士が、盛夏の森の少女が言う。そういえば、この場には結婚やお付き合いをしていない人も集まっていた。理由はローラ様曰く、「偏りのある層ばかりから意見を聞くことは為政者として許されない」とのことだった。

 ローラ様がお三方にそのことについて説明している。その一方であちらこちらからお話の声が聞こえる。

「あなたリッカちゃんだよね。貴女もお付き合いしてる人はいないでしょ」

「は、はい。でも……失礼ですが、貴女は?」

「私はラフェット。貴女のお父さんと、貴女の従業員を知っているって言えば分かるかな」

「父とナインを? すいません、何も知らなくて、挨拶もせず」

「大丈夫。私だってまさか君に会えるとは思えなかったし、そもそも一姫君に召喚されるとは思わなかったからね。彼女、何者だろう」

 宿王の少女と天使界の書記長が言う。その隣で、天空の花嫁らと隣国の王妃が語らう。

「ビアンカさん、フローラさん。お二人もいらしてたなんて」

「あら、マリアさん。私たちも招待状を貰って来たのよ。夫が持ってきて、是非行ってくれって言うから。でも、素敵なお城ね。フローラさんはここに来たこと無いと思うって行ってたけど、どう? やっぱり来たこと無い?」

「はい。けれど一つだけ、分かることがあります」

「なあに?」

「あの王妃様は、千年に一度生まれるか否かという天性の淑女……選ばれし女帝ですわ」

「さあ、皆様」

 ローラ姫は微笑む。不思議と座が静まる。

「旦那様の素晴らしいところを教えて下さいまし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 一方その頃。色調の正反対な、いかにもローレシア調のシックな隣室には紳士が集まっていた。本当に全員紳士って言われると微妙なんだけど、紳士ってことにしておこうか。ホニャララという名の紳士って、昔の人もよく言ってたからね。男はみんな、ホニャララだし。

「アーサー、これはどうなっているんだ」

 案の定、初代ローレシア王こと竜王殺しの勇者様が訊いてきた。そうですよね。僕もそう思います。何でよりによってこの役に僕を選んだんですか。そんなことを訊いたら、あの方は微笑んで仰った。

 ──貴方が夫も初代ロトも他の英雄達もうまく丸め込める上に、最も冷静で口が硬いと判断したからです。お礼は五つ星パティスリーのスライムケーキで如何かしら。

 よく分かってる。さすが、ローレシア開国の黒幕。

「急に集まってもらっちゃってすいません。ともかく、先にコレを聞いてくれますか」

 僕は指を鳴らした。隣室の声が筒抜けになる。

『旦那様の素晴らしいところを教えて下さいまし』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

「最初はムーンブルクの王女さまから」

「わ、私ですか」

 ローラ様に名指しされて、口が乾く。その上に恥ずかしい。

「私の恋人は……顔とかちょっと怖くて、あんまり笑ってくれないんですけど、でも強くて優しくて本当は情に厚くて、とっても頼りになるんです。格好いいんです。あんまり、面と向かっては言えないんですけど」

 内緒にしてください、と私は縮こまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「怖いけど優しくて情に厚い」

「頼りになるんです。カッコいいんです」

「ひゅーひゅー」

「るっせー黙れッ」

 ロトの初代と天空の初代が囃す。さらに僕が口で適当に茶化すと、案の定我が遠い血の兄弟ことローレシアの王太子殿下は怒鳴った。次いで真っ赤な顔を片手で覆い、唸る。

「内緒にする相手が、違うだろうが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次は武闘家さん」

 ローラ様が振ると、黒髪を二つに結った彼女は宙を睨む。

「旦那について、か。強いて言うなら馬鹿なところ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もっっっと! あるでしょ!!?」

 初代ロトが叫んだ。我が先祖ながらやかましい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロトさまは?」

 短い黒髪の美少年が如き女勇者は、気怠げに答える。

「生活に必要なこと、大体全部やってくれる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そりゃあね。君の身の周りのこと、全部僕がしてるからね」

 賢者の男は項垂れた。大変そうだ。

 



 

 

 

 

 

 

 

 

「僧侶さんは?」

「肝が据わってるところなら、認めてあげてもいいわ。あと、戦闘方法とご飯の好みが合うところ」

 女僧侶はきりりとした美しい貌で白い歯を見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「誰がお前みたいな頭でっかちに認められて喜ぶもんか」

 そう言うくせに、男戦士の顔は既に笑みが隠しきれていない。さてはこいつ見栄っ張りだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エルフさんは」

「そうね」

 森のエルフは、年長らしからぬ無邪気な笑みで言う。

「本当は争いなんて大嫌いなのに、一生懸命戦って、私や世界を守ってくれるところかしら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へーへー、言っとけ言っとけ」

 二代目天空の勇者は頭の後ろで手の甲を組む。彼、結構表情の読めないひねくれ者だと思うけどね。今日の彼の耳の色は正直っぽいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴッツイところね」

 華やかな美貌の踊り子はカラカラと笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴッツい」

 桃色の鎧の戦士が反復する。失礼ながら僕は吹き出した。褒め言葉だと分かっているのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私のワガママをなーんでも聞いてくれて、付いてきてくれるところ!」

 おてんば姫は言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姫様ァ」

 案の定、神官は感極まった涙声を出した。二代目天空の勇者が茶化しに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勇敢なところかしら」

 耽美な占い師は静かに微笑む。

「私のことを怖がらず、受け止めてくれる。父の遺産も、恐ろしいものなのに向き合ってくれた。感謝しているわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「当然のことです」

 錬金術師の弟子は微笑み、頭を下げた。笑顔が彼女と似ていると思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「優しいところです。他者を傷つけることも恐れないその非常なまでの優しさが怖かったこともあるけれど、勇者様や皆さんのお陰で変わりつつある。そう、私は感じています」

 可憐なエルフは儚い声で、しかし口元に笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、心配かけてんぞ」

「うるさい」

「シャンとしろよ、ピー坊」

「やかましい。分かっている」

 魔族の王は、絡んでくる二代目天空の勇者を鬱陶しがるように、長い銀髪を払った。しかし彼を巻いた後にふと向けた視線は、とてもまっすぐで真摯だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は誰かと恋愛したり、支えあったり、そういいうことをするつもりはないの。暴走したアイツの息の根を止め続けて、いつか完全に殺してやるって決めたから」

 盛夏の森の少女、二代目天空の女勇者は毅然として告げる。












「そうか」

 天空の男勇者は、片割れの言葉を聞いて言う。

「お前たちはそういう道を選んだんだな」

 悲しげな顔をしていた。彼女の言う相手はここに来ていないのだと、来られないのだと僕は悟った。そして、本人たちは認めないのかもしれないが、そのような恋をしているのだと思った。













「どこがなんて言われたら困っちゃうわね。気が付いたら好きだったのよ。あの人の全部が」

 村娘から王妃になった女性は、照れくさそうに、でも明るく言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕も困っちゃうな」

 グランバニアの王は頭を掻く。人好きのする笑みを浮かべる、その様を見て僕も彼女の言う意味が分かった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一生懸命なところと、正直なところ。アンディといると、心が癒やされますわ」

 サラボナの令嬢は笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕の方が、癒やされてるんですけどね」

 吟遊詩人は涙ぐむ。こういう感受性がいいんだろうなと僕も思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「繊細で、格好いいところかしら。見た目も性格も、両方」

 ラインハット宰相の妻ははにかんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、繊細は余計だろ!」

 ラインハットの宰相は突っ込みを入れた。グランバニアの王が首をかしげる。

「え、ヘンリーは繊細だよね?」

「おいおい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んーとね、どんな時でも明るくて、前向きで、カッコいいよね!」

 カルベローナの娘は屈託なく言う。満面の笑みが眩しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まーな!」

 初代天空の勇者は胸を張った。また似たもの夫婦か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「青い人、スキ。カワイイ、カッコイイ」

 ドラゴンの乙女の目はキラキラと輝いている。恋する乙女の瞳は、純粋な愛情を湛えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スキ、カワイイ、カッコイイ」

 真似をする初代天空の勇者の顎に、最強の剣士の裏拳が綺麗にめり込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、相変わらずとろくさいけど、最近は話にならないこともなくなったわねっ。あたしの下僕が板に付いてきたってことかしら?」

 網元の娘はそっぽを向いて言う。ツンとした鼻が可愛らしい。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生まれてからずっと下僕だからねえ」

 漁村の少年にして救世主はのほほんと笑う。もしかして、これはすごい惚気なんじゃないだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「笑顔です。私に元気をくれます」

 幼い大神官は恥ずかしそうに俯く。











「オイラ、フォズを元気にできてたか! 良かった!」

 狼少年はニカッと笑う。心が痛くなるほど純粋だ。










「アホなところなら、嫌いでもないわね」

 王女付きの女剣士は快活に言う。











「手厳しいぜ」

 そう言いながら、音楽家は満更でもなさそうだった。












「優しくて強い、兄のような安心感のあるところです。ミーティアの、一番の騎士様ですわ」

 トロデーンの姫君は両手の指を組んで胸に当てた。












「よっ、騎士様! 王子様!」

 二代目天空の勇者が茶化す。けれど、肝心のトロデーン近衛隊長は黙って微笑んでいた。












「あのスケコマシのいいところ? 無いわよ。あっ、たまに空気読めるところ? 真面目になる時はいいかもね」

 魔法剣士の末裔は、橙のツインテールを揺らして口の端を釣り上げた。













「ひでぇな、俺の子猫ちゃんは」

 赤い聖堂騎士は肩を竦める。この人、クールそうにしてるけど意外と負けず嫌いなのかもしれない。笑ってるけどちょっと悔しそうに見える。












「イノブタマンはイノブタマンだよ。好きなところ? そんなの、聞かせてやる義理はないね!」

 セクシーな女盗賊は鼻で笑い飛ばした。












「あれはな、ヤンガスの良いところを誰にも知られたくないって意味だぜ」

「あー。確かに、ゲルダさんってそういうところあるよね」

 聖堂騎士と近衛隊長はしたり顔で頷いているが、盗賊本人は激しく首を横に振る。

「ぜってー違うでがす!」












「まず恋人じゃなくて、友達で仕事仲間なんですけど、うーん……みんな、顔は良いし何やかんやで助けてくれるって言います。私も、そこは良いところだなって思ってます」

 宿王の娘は言葉を選びながら、一生懸命話す。












「ロクサーヌさんのことですね」

 もと天使の少年は言った。それ、本人に怒られるんじゃないかな。












「天使が他者を愛するのは当たり前よ。その前提で言うなら、あの人の頑固でロマンチストで朴念仁なところ、まあ嫌いじゃなかったかな」

 天使界の書記長は片目を瞑った。












「何の話をしているんだ?」

 真面目な上級天使は首を捻る。師弟って似るんだね。
















 

「皆様、ご協力に感謝申し上げます」

 ローラ姫は頭を下げる。私も合わせて頭を下げた。ローラ様のお陰で、今日は素敵な話がたくさん聞けた。違う世界に住む人とのこのような機会はなかなか持てない。これだけで十分素敵なことだ。

 でも、もう一つだけ我儘を許してもらえないだろうか。

「あら、サマンサ。どうしましたの?」

 ローラ様は私の視線に気付いてくださった。私は勇気を出して尋ねる。

「あのっ、初代ローレシア王の……ローラ様の旦那様は、ローラ様にとって、どのような方なのですか?」

 するとローラ様は唇を軽く指先で押さえて、目を丸くなさる。

「あら、いけませんでしたわね。わたくしのことを言わず、皆様のことばかりお尋ねするなんて。そうね、わたくしのことも話さないと」

 ローラ様は両手を膝の上で優美に重ねる。

「わたくしの夫のとても愛おしいところは」

 空色の瞳が狭められる。

「女のわたくしの言うことにも、きちんと耳を傾けてくださること。いつもわたくしを守って、優先してくださるところかしら」

 

 

 

 

 

 

 

 






 紳士部屋では自然と拍手が起こっていた。

 何も言及されないのではないかと思っていた初代ローレシア国王が、思いがけない妻の言葉に跪かんばかりの喜びを見せたからだ。

「ローラ姫……」

 昔の呼び名に戻っている。

「俺は一生懸命、貴女をお守りします!」

 また拍手が大きくなった。おめでとう、おめでとう、などというわけのわからない掛け声も聞こえる。

 僕もまばらな拍手をしながら、本当に胸焼けがひどいや、これで女子会が解散しきる前か後か、様子を見てうまく被らないように解散させないとなあ、ああ手間だなあでもスライムケーキの為ならば等と考えながら、ふと先ほど聞いたこの劇の黒幕の言葉を思い出した。

 ──女のわたくしの言うことにも耳を傾けてくださること。いつもわたくしを守って、優先してくださるところかしら。

 そんなこと言われたら、男は余計彼女の言うことをよく聞くだろうなあ。特に誠実一途な祖先ならば。

 やはり、ラダトームの勇者と魔王と、両者を惑わせた姫君は恐ろしい。

 僕は早く彼女の掌中から逃れるべく、何も知らない紳士達に解散の号令をかけることにした。
















20181118 お題箱リクエスト作品