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【何か】譲られた刀剣【おかしい】 


1 譲られ審神者 

当スレッドはさにちゃんねる規約第肆条該当記事となるであろうことを、ここに宣言します。私ことスレ主がスレッドの完結を告げないまま丸三日以上現れなくなった場合、スレ主の審神者名 
および本丸IDの公開を無制限に認め、審神者会への救助申請を出すものとし、また審神者局による令状無しでの立入調査を是認することを、この場を借りて誓います。 

このような使い方をすることになるなんて本当に遺憾ではありますが、規約にしたがってここに事のあらましを記録させていただきます。 
事が無事解決できてこのスレが削除できることを、またこのスレが後に別の誰かの役に立つことがないことを、祈っています。 



2 審神者あらためVIP 

嘘だろ 


3 審神者あらためVIP 

素人釣り人はお呼びじゃねえんだよ馬鹿 
オカ板の第4条とかシャレになんねえよ 


4 審神者あらためVIP 

え、どゆこと? 


5 審神者あらためVIP 

≫4 
知っとけ情弱 
規約見直せ 

さにちゃんねる規則第肆条ってのは「自分は本当にやばいことに巻き込まれてるから助けてくれ」っていう、緊急SOS信号だ 
さにちゃんは審神者の自殺や失踪を防ぐ為に審神者会が作った「審神者の生存戦線サポート」を掲げるシステムだろ? 


6 審神者あらためVIP 

≫5 
すまん、初心者の俺に教えてくれ 
審神者会って何? 
審神者局じゃなくて? 


7 審神者あらためVIP 

≫6 
お前、早く演練組んで他の審神者と知り合った方がいいぞ 
担当は審神者会のこと教えないからな 

審神者局は歴史是正省における対歴史修正主義者担当部局だ。審神者と時の政府の仲立ちをしたり、審神者をスカウトしてきたり、本丸のサーバを管理したりする 
俺らが俗に「お役人さん」って呼んでる連中だ。担当もここの職員って扱いになってる 

審神者会は審神者が作った連盟だ 
審神者局から審神者の権限を守る為に、審神者業やりながら活動してる 
要は「てめーらの身はてめーらで守ろうぜ」って趣旨で、司法から実戦までどこまでも俺ら審神者のバックアップを目指してる団体だよ 

このさにちゃんを管理運営してるのも審神者会のメンバーだ 
最近の審神者は何の疑問もなくクチコミでこれに登録してんのかもしれねえが、ちゃんと自分が使ってるツールのことはある程度調べとけよ 
自分の本丸に何かあってからじゃ遅いからな 


8 審神者あらためVIP 

≫7 
ありがとうございます 
気をつけます 


9 譲られ審神者 

駆け出しの人は、今すぐにこのスレを去ってください。 

3の審神者も言っていますが、オカルト板での緊急SOSは重い。 
オカルト板は現代科学でも解決できない霊障の相談や報告をする場所で、しかもさにちゃん自体が現代の時空電波だけではなく極地にいる審神者でも利用しやすいよう、霊界側にも通じるシステムを多分に練りこんで成り立っているものです。 
おかげでどんな場所にいても接続不良になることは滅多にありませんが、その分「余計なモノ」まで伝播してしまうこともあります。 


話を聞いてくださる方、どうか俺に手を貸してください。 
ですが今から俺が話すことを作り話だと思う方、茶化したい方、そして何より引き寄せ体質の方と石切丸やにっかり青江といった霊剣が本丸にいない方は、どうかこのスレから離れてください。 
あなたの本丸に余計なモノが入ってしまう可能性があります。今すぐさにちゃんを閉じ、履歴を削除した上で本丸を清めてください。 
何かがそちらに行ったら、俺にはどうすることもできません。 

俺も第肆条の適用を宣言しなくちゃならないくらい、捨て身なんです。 
政府に掛け合っても解決できない問題が起こっています。 
少しでも策が欲しいんです。 
お願いします。助けてください。 


10  審神者あらためVIP 

いいから話せ 
まどろっこしい敬語も謙遜も飾りもなしだ 


11  譲られ審神者 

≫10 
ありがとう 

堅いのと文章はあんまり得意じゃないんだ…そのせいでこれから俺が話す内容も非常事態っぽさが感じられないかもしれない。承知しといてくれ 

あとできるだけ、俺らの状況は気兼ねせずに冗談も言ってくれると嬉しい。たまにでもいい。それを見て一瞬でも主である俺が心の底から笑えれば、うちの奴らの力になるんだこうだ 
うちの石切の「現世に愉しみを見出していないと引きずり込まれるよ」っていうお墨付きだ 
真面目にふざけてくれ。頼む 

自分でも命懸けとか言いながら矛盾したこと言ってるのは分かってるんだけど、許してくれ 
俺自身自分が直面してるこれが何なのか把握しきれてないから、打てる手は全部打ってみたいんだ 


12 審神者あらためVIP 

≫11 
善処する 

その前に確認 
譲られ審神者は、今すぐ消えてもおかしくない状態なのか? 
刀剣男士の神隠し案件じゃないよな? 

あとこれからこのスレに張り付く奴らは神剣かにっかり、または退魔の力を持つ連中を呼んで側に控えてもらえ 


13 審神者あらためVIP 

≫12 
らじゃ 

譲られのパッパが不吉なこと言ってて既にちびりそうだが俺に任せろ! 
俺は今!! 
蛍ちゃんに膝枕されながら桃缶開けるという!! 
極楽のような現世生活を満喫している!! 


14 審神者あらためVIP 

ブラック本丸に住む俺に抜かりはない… 
おっと、霊障的な意味だよ? 


15 審神者あらためVIP 

≫14 
お前の本丸霊障物件なのかよww 
はよ引っ越せwww 


16 譲られ審神者 

≫12 
それはない 
現状から考える限り、今すぐ俺自身に何かが起こることはないはずだ 
今も石切丸と愛染(極)についてもらってる 

あと俺の本丸の奴らによる神隠しの線も、絶対にない 

≫13 
裏山 

≫14 
はよ引っ越せww 
引っ越せるうちに、絶対にだ 


みんなありがとう 
少し気が楽になった 

書き溜めたの投下するから下空けといて 


17 譲られ審神者 

ありがと 

俺のスペックからいく 

俺→審神者歴五年。霊力少ない。刀帳で埋まってる枠は30。 
石切丸からは「君に繋がってる縁はおかしい」ってことで評判。何でも一部の刀剣との結びつきは非常に強いらしいんだが、逆にそうじゃないやつとは本っっっ当に薄いらしい。 
例えて言うなら前者だと縄でお互い縛られて結ばれてる感じで、後者だと蜘蛛の糸でどうにかくっついてる感じ? 


(例) 
縁強い男士 
・鯰尾→函館で初どろ。本刀にも「ありえないですよね!」って言われるし俺もそう思う。 
・鶴丸→初太刀。なんとなく回したら来た。どろでも来てくれる。あと毎朝至る所から起こしに来る。頼んでもないのに。 
・宗三→すっげー来る。でもデレてくれない。一番最初に来てくれた宗三に、後から来てくれた宗三はみんな連結させちゃってるから実質一振だけなんだけど、一振で宗三何十本ぶんもの当たりの強さ。つらい。 

縁薄い男士 
・国広兄弟→一度も来ない。ドロップエリア巡回エブリデイしてるのに来ない。 
・骨喰→全然見ない。鯰尾が世話焼きたがってるから早く来て欲しい。 
・江雪左文字→お会いしたい。弟たちがすごく待ってるし特に上の弟が「あなた何か僕らの兄様に無礼でも?」って聞いてくる。 
俺知らないって。ホント、何か仕出かしてたなら出来る範囲でお詫びしたい。俺と和睦できなくてと最悪しょうがないからお願い弟たちに会ってやってお願い。 



18 審神者あらためVIP 

おかしい(確信) 


19 審神者あらためVIP 

五年で30? 
少なすぎない? 


20 審神者あらためVIP 

阿津賀志山をめぐってカカカが来ない…だと…? 


21 審神者あらためVIP 

江雪はともかく、骨喰まんばに堀川まで来ないなんて珍しいな 


22 審神者あらためVIP 

宗三にデレなんてあるの? 


23 審神者あらためVIP 

≫20 
爺様じゃあるまいし(ふるえごえ) 


24 審神者あらためVIP 

五年も審神者やってて左文字のワボミ感じられないとかかわいそう 


25 審神者あらためVIP 

≫23 
やめろ!! 
…やめるんだ……ッ 


26 審神者あらためVIP 

初めて聞くパターンの難民だな 
レア太刀来ねえはデフォだが 


27 審神者あらためVIP 

誰も鶴丸に突っ込まない 


28 譲られ審神者 

≫19 
その通りですげー少ないっぽい 
担当にも記録改竄してこっそり折ってるんじゃないかって探り入れられたことあるけど、本気で一振も折ったことない 

≫22 
たまーに、原材料にデレを含むタイプの宗三がいるらしい 

≫23 
爺様なんてもちろん来ないぜ… 
三日月はおろか、石切以外の三条太刀全員来ねえよ… 

≫26 
まあこれは俺の体質?みたいなものらしくて仕方ないんだって 
生まれつき肌が弱いとか目が凄くいいとか、そういうのと同じで、刀剣との縁に偏りが出る審神者って案外いるんだと。でもたいてい「おかしいなー、なかなか来ねえな」って疑問に思い出した頃に来て解決しちゃうって程度なことが多いらしい。俺みたいな奴は稀で、極端な例なんだと 

でも演練で他の審神者の顕現させた、まだ自分では顕現させられてない刀剣に会えば、少しずつ本霊との結びつきができていくものらしいから気長に待てって、前に講習会で教わった 

だから気長に待ってれば良かったのに 


29 譲られ審神者 

俺はいわゆる兄弟刀やら何とか組って呼ばれるようなコンビグループ刀剣を完璧に揃えられたことがない 
鯰尾には骨喰がいないし、左文字には江雪が足りない。初期刀は歌仙だけど和泉守はいない。藤四郎の長兄もいないしな 
奇跡的に揃ったのは歌仙と小夜の細川ゆかりの刀剣と、石切丸とにっかりの霊剣コンビだけ 


それであせってたのかもしれない 

演練でよく世話になってた先輩審神者が、へし切長谷部と日本号を譲ろうかって声をかけてくれたんだ 
他の引退する審神者から譲り受けたばっかりで、うちにはもう二振とも揃ってるから良ければ世話を見てくれないかって 

嬉しかったよ 
本刀達の了承は得てるからこの場で了承してくれれば契約が成立するって言われたから、すぐ引き受けたいって返事した 

でも、後から考えて見ればその時点で十分おかしかったんだよな 
だってへし切長谷部と日本号って、俺が演練で見かけた限りではどっちもプライド高そうなタイプだろ?それが自分の引き取る相手の顔も見ないで了承するなんて、考えられないよな 
けどあの時は、単純に「ブラック出身なのかな」って思って深くは聞かなかったんだ 
相手の審神者も気心知れてて刀剣を無下に扱うような人じゃないって思ってたから、なおさらタカくくってた 


30 譲られ審神者 

一週間経って二振がやってきた 

俺のところに顔を出した二振を見て、俺はやっと違和感を覚えた 


ちょっと聞きたいんだけど、お前らの本丸のへし切長谷部と日本号だったらこのシチュエーションでどう動く? 


31 審神者あらためVIP 

ニホンゴー ナンテ シラナイ デスネ… 


32 審神者あらためVIP 

俺の長谷部は多分、新しい主の前ではすげえ完璧な笑顔で「主命とあらば、何でもいたしますよ」って挨拶してから、夜になると自分の部屋に篭って床に向かって激しくヘドバンしながら 
「シュメイトアラバシュメイトアラバシュメイトアラバシュメイトアラバシュメイトアラry」って唱え続ける 


33 審神者あらためVIP 

うちの長谷部は繕ってるつもりでも表情に出ちゃう子だからなー 
多分普通に会話するだろうけど、ことあるごとに自分を手放した主のことを悪く言いそう…あああああ「前の主はどうしようもない甲斐性なしでしたよ」って離婚したけど未練がある妻みたいな影のある笑みで罵ってくる長谷部興奮する!!! 
ごめん長谷部私を斬ってくれ!!!! 


34 審神者あらためVIP 

≫33 検非違使さんコイツです 

俺の長谷部はそれ以前に俺を殺してから単騎出陣して散るだろうな 

日本号は主変わっても気にしないと思う 


35 審神者あらためVIP 

≫33 散って良し 

我が近侍こと長谷部ちゃんは「俺はあなたの傍からなんて……いえ、何でも」ってもごもご言ってるんだけどまじなにこの尊い 
そんなことするわけないだろ!ってヘッドロックかましといた 

日本号のおいちゃんは「ま、あんたがそう言うなら仕方ねぇな」って平然と縁側で酒飲み続けてる 

…もーちょっとショック受けてくれてもよくね? 


36 審神者あらためVIP 

≫32 
本当にありえそうでホラーどこじゃねえ 

≫33 
理性を強く持て 

うちも長谷部は見た目普通にしていくだろうと思うけど、心の中ですげー気に病むだろうな 
引き渡しとかあいつの中でワースト中のワーストなトラウマだろ 
絶対勤めていく中のどこかで、皺寄せとか影が出ると思う 

日本号は長谷部みたいに審神者に依存するタイプじゃないから、あっさり渡ってくだろうよ 
でも薄情なわけではないし、自分の在りように誇りがあるから、新しい場所に行っても真面目に仕事するだろ。それに審神者がずれた事すれば、どんな審神者だろうと一言物申さずにはいられないっていう奴だよな 

もちろん、まともな状態で引き継がれた二振なら、って前提があるがな 


37 審神者あらためVIP 

みんなひどいな!! 

私がこうやって長谷部に興奮するって言ってるのは、「私が長谷部にそんなことするわけない」って確固とした信念があるからなんだからね!? 
長谷部は私の第一部隊隊長です!返り血に染まった戦場上がりの長谷部を見るとゾクゾクしますこんないい刀渡せません!! 

いい?妄想だから興奮するんだからね!? 
長谷部に罵られたいと思う審神者は私だけじゃないだろ!!? 


38 審神者あらためVIP 

≫37 
お前が前の主であるっていう前提だったのかよ 


39 審神者あらためVIP 

≫37 
もうこいつのことほっとこーぜ 


40 譲られ審神者 

ボケの大洪水すぎてツッコむの諦めた 
でもみんなありがとな、なんとなく俺のイメージと合ってたみたいで安心した 

そうだよな 
やっぱり長谷部って主へのこだわりが強いから「主」には尽くしますよって顔しそうだし、日本号は長谷部ほど主が変わっても顔色変えなそうだよな 


俺のところに来た長谷部は、確かにみんなの言うイメージに近かった 
本当にキリッて、いかにも仕事のできる刀剣って感じに微笑んで 
「本日よりお世話になります、へし切長谷部と申します。何なりとお申し付けくださいませ」 
って丁寧に三つ指ついて挨拶してくれた 

けど日本号は違った 

俺、日本号ってもっと堂々としてて陽気なところもある槍だと思ってたんだ 
でも長谷部と一緒に来た日本号は、全然そうじゃなかった 

まず、いつも長谷部の一歩後ろを歩くのな 
俺と長谷部の顔を代わる代わる、ちらちら見るんだけど、その顔色がすげー悪い 
まさに土気色っていうのかな 
手にした酒壺みたいな色してるんだ 


41 審神者あらためVIP 


42 審神者あらためVIP 


43 審神者あらためVIP 


44 審神者あらためVIP 

逆じゃね? 


45 審神者あらためVIP 


46 審神者あらためVIP 

≫44 
あの日本号が三つ指つくかよ 


47 譲られ審神者 

≫44 
俺は見たままを言ってるだけだから 
三つ指をついて笑ってたのは長谷部で、顔色が悪かったのは日本号だ 


それでその後、どうしたと思う? 

長谷部が挨拶してから何か言いかけたんだ 
お尋ねしたいのですが、とかそんなようなことを言おうとしたんだと思う 

少し身を乗り出そうとした長谷部の後ろに正座してた日本号が、いきなり長谷部の首を絞めたんだ 

長谷部が気を失って崩れた 
驚いた俺が声を上げる前に、日本号は俺の方をまっすぐ見た。そして切羽詰まったようにこう言った 
「この本丸に牢はあるか?こいつと俺をその中にぶち込んでくれ」 


48 審神者あらためVIP 


49 審神者あらためVIP 


50 審神者あらためVIP 


51 審神者あらためVIP 


52 審神者あらためVIP 


53 譲られ審神者 

できる限り笑わせてくれって言ってるだろ 


54 審神者あらためVIP 


55 審神者あらためVIP 


56 審神者あらためVIP 


57 審神者あらためVIP 


58 審神者あらためVIP 

ムリに決まってんだろナニソレえええええええええええええええええ 


59 審神者あらためVIP 

日本号が長谷部の首を絞める…? 
喧嘩でもねえのに?? 


60 審神者あらためVIP 

真面目に長谷部の首絞めたり「牢にぶち込んでくれ」とか言ったりする正三位なんて想像するだけでまじつらい無理何があったの 


61 審神者あらためVIP 

日本号と長谷部って仲良しこよしじゃねえけど、これは有り得ない 


62 審神者あらためVIP 

日本号ってそんな、いくら相手が長谷部とは言え一方的に首絞めるなんてことする奴じゃねえだろ 


63 審神者あらためVIP 

どっちかっていうと喧嘩仲間って感じ 


64 審神者あらためVIP 

≫63 
それな 
気の置けない関係っていうか 


65 審神者あらためVIP 

あの日本号が自ら牢にっていうのも信じられんわ 


66 審神者あらためVIP 

俺の隣の日本号が「この俺、酒足りてねえんじゃねえの?」って言ってる 
お前な。あるじは明らかに違うと思うぞ…? 


67 審神者あらためVIP 

長谷部が黙って首絞められるのも信じられない 
練度差あるの? 


68審神者あらためVIP 

≫66 
何でお前のところの日本号そんなに冷静なの 


69 譲られ審神者 

≫67 
練度差はないと思う 
手元のデータだと両方再上限だから 

やっぱり驚くのって俺だけじゃなかったんだな 


70 審神者あらためVIP 

当たり前だろ!!! 


71 譲られ審神者 

俺も日本号の口からそんな言葉が出るなんて思わなかったから、何でですかって反射的に聞いたよ 

日「いいから入れろ。話はそれからだ」 
俺「や、さすがにそれは」 
日「いいから!」 

日本号は片腕で長谷部をかついで、俺を引っ張って大股に歩き出した 
俺は抵抗しようとした。でも日本号は凄まじく強い力で俺の手首を握ってて、逃げるのは無理だった 

気付いたら俺たちは座敷牢の前にいた 
日本号は俺を置き去りにして、長谷部を担いだまま中に入った。格子戸を閉めて、俺に鍵をかけろと強請った 

我に返った俺は、どうして座敷牢の位置がわかったのか聞いた 
だって俺、一度も説明なんてしてなかったのに、日本号はすいすいここまで進んできたんだ 

すると日本号は、鍵をかけてくれたら話すと言った 
本丸の施錠は、俺じゃないとできないからな。その時の俺には、日本号はとにかく自分たちを閉じ込めて欲しかったように思えた 

そこで俺はもう一度聞いた 
あなたたちのこれまでのことも、ここまで来る経緯も、どうして閉じ込めて欲しいのかも、鍵をかけたら話してくれますかと 

日本号はもちろんだと言った 
そう言いながら、彼の目は部屋の中央に横たわった長谷部から離れなかった 


俺は鍵をかけた。それを確認した日本号はやっと安心して、俺に全てを打ち明けた 


72 譲られ審神者 

内容については、実際にその時録音した音声データがあるから上げる 

添付:nihongo1.sanifile 
[再生] 

【日本号の声】 
すまん。あんたも、とんでもねえものに巻き込まれちまったな。 

【青年の声】 
そんな……事の次第は分かりませんが、あなた方をお招きしたのは僕ですから。 

【日本号】 
え? あんた、俺たちを招いたのか? 

【青年】 
え、はい。 

【日本号】 
どうして。 

【青年】 
どうして、って。 
僕の本丸は22振しか男士がいなくて、それであなた方をお招きできると、あなた方をお預かりしていた審神者に聞きまして……。 

【日本号】 
は……はは、どおりでこいつがあんたを認識したわけだ。 
あんた騙されたな。俺たちは刀剣男士として戦えるどころじゃねえ、あんたに厄しかもたらさねえ厄病神だぜ。 

【青年】 
え? いや、そんなはずは── 


(重い金属の扉が開く音) 


【へし切長谷部の声】 
……あるじ? 

【青年】 
ッ……は── 

【日本号】 
やめろッ!! 絶対返事をするな!! 

【青年】 
……ッ。 

【長谷部】 
主。また俺に御用ですか? 
ふふふ。まったくもう、主は俺がいないと本当にダメなんですね……ふふ……分かってますよ、お客さんをもてなすんでしょう? 

(畳の上を布が滑る音) 

【長谷部】 
もちろんこの長谷部がやらせていただきますよ。 
近侍も、お食事の支度も、お召し物の用意も……お客様のおもてなしも。 
この間のお食事はお口に合いませんでしたか? ずいぶんと召し上がるのが早かったですね。まったく、主はわがままで困ってしまいます。 
あはは、冗談ですよ。そんなところも素敵です、俺の主。あなたにお仕えすることができて、俺は本当に幸せです。 

(ずり、ずり、ずり。布の音が大きくなってくる) 

【長谷部】 
ええ、今度のお客はきっと……おや。 











そこにいるのは誰だ。 





(凄まじい速さで接近する足音、何かが激突、木が激しく軋む) 






【青年】 
ひ……ッ! 

【長谷部】 
誰だ、誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ?俺と主の邪魔をするのはダレダ?返事をしないかバカモノめ、フフ、ハハハ、ほォらいい子だ返事をしてごらん小僧。主がお呼びだ、返事をしないかウツケが。 
(ギシギシギシギシギシ、木の軋む音が続く) 
(ザリザリザリザリザリ、畳を引っ掻く音が続く) 

【長谷部】 
ハハハ、オマエのことは知っているぞ。この間来た審神者が知っている。あの男はたくさんの客を送り込んでくれたぞ。天下五剣、極短刀……ただ最初に石切丸を送り込んでくるのはいつもの客と同じだったな。もう随分もてなし飽きたようだったから、主はさっさと返してしまわれた。ハハハハハいい加減にしないか返事をしろ貴様 
【野太い男の声】 
貴様貴様キ 
【高い声】 
サマキサマキサ 
【優しげな男の声】 
マキサ──くん。返事をしてくれよ。私だ、お願いだ。助けてくれ。 

【青年】 
ッ、……ッ〜!?!ッ! 



(重いものが落ちる音) 



【日本号】 
……大丈夫か? 
抑えるのに手間取って悪かった。しばらくこれでこいつは起きないから安心しろ。 

【青年】 
……ッひっ……なんだ、ったんですか、今。 
長谷部さんの、喉から……声が……っにぃ……さんの声がっ……! 

【日本号】 
……そうか。あんた、あの審神者の知り合いだったのか。 

【青年】 
兄弟子、みたいな人で。 

【日本号】 
残念ながらそいつは、こいつに取り込まれちまった。 

【青年】 
こいつって……まさか。 

【日本号】 
そうだ、このへし切にだ。 
こいつはタチの悪いものに取り憑かれてる。いや、それよりももう、「タチの悪いものになっちまった」って言った方がいいのかもしれねえな。 

【青年】 
うそだ……そんな……。 

【日本号】 
もう何度目になるか、分からねえ。 
こいつはずっと、審神者たちの手を転々としては審神者とその本丸を吸収して回っている。 
俺は審神者たちと協力して、どうにかこいつを抑えようとしてきたんだが……今度はあんたの本丸に狙いを定めたようだ。 

【青年】 
どうしてそんなことに……。 

【日本号】 
長い話になるが、話させてくれ。 
事の起こりは、俺たちの初めの主の息子だった。 

………… 

…… 





◆ 


 
 あんた、俺と長谷部が同じ審神者のもとに顕現された刀だって話は聞いてるか?

 ……そうか。引退した審神者から譲られてきた、としか聞いてないのか。

 その人じゃねえな。俺たちを最初に顕現させたのは、それなりに歳のいった女審神者だった。

 これがまた、鬼みてえな婆さんで──こう言うとよく主馬鹿だった頃のこいつは目くじら立てたもんだが──人の身を得たばかりで物見遊山気分だった俺の横っ面を、俺の本体をブン回して張り飛ばしてくるようなとんでもねえ人だった。

 でもまあ、御転婆でも面倒見のいい人だった。厳しく仕込まれもしたが、その分万屋やら酒屋やらに連れて行ってももらった。現世の珍しい酒やグラスを買ってくれたこともある。
 ……贔屓目抜きで、いい人だったんだろうと思うぜ。
 
 ところがこの主が俺の教育係にって任命したのが、よりによってこの長谷部だった。
 おっと、勘違いするなよ? あの頃はこいつも普通だった。そりゃもちろんへし切長谷部だからもとからひねくれてはいたが、前はまともに筋の通ってる、自己主張の激しい主命上等特攻野郎だったんだぜ?
 
 ただなあ。そんな長谷部が普通だった頃から、俺とこいつの相性は最悪だった。
 
 他の審神者から俺達の話を聞いたことがあるなら、何となく察しはつくだろう。俺もへし切も口が悪ぃ、鼻っ柱が高ぇ、おまけに手足が出るのが早ぇと来たもんだ。
 俺が顕現した初日っから喧嘩した。理由は何だったかな……そうだ、確か口の利き方に腹が立ったんだったか。はは。似たような喧嘩を何度もしたから、ついいつどの喧嘩をしたかが分からなくなっちまう。
 
 最初の時は口喧嘩だった。その後しばらく互いに無視し合ってた。だが気に食わねえもんって、無視しようとするほど目についちまうだろ? それで、ついに殴り合いの喧嘩になった。
 
 正直俺は、あの時長谷部が何を言ったのか、あんまり覚えてねえ。それに対する俺の返事がきっかけで、こいつが手を出すことになったんだと思うが……それより、こいつが殴って来たのに腹が立ってなあ。
 ……ははっ。
 すまんな、思い出したら笑えてきちまった。
 なに、そんな深刻な顔するんじゃねえよ。今になって思えば何でもねえ、阿保みてえな喧嘩だったんだ。
 
 あの頃、こいつと俺の練度差はすげえもんだった。無理ねえよな。片や顕現したての槍、片やネエチャンだった審神者が婆さんになるまで、ずっと一線で張って来た刀だ。俺達の実力を数値で管理してるあんたなら、見当つくだろ。
 
 なのに、唸りをあげて飛んできたはずのこいつの拳は、俺の頬に痣を作っただけだった。
 そう、手加減しやがったんだ。こいつ、キレてたクセに。俺相手に。
 
 俺はカチンと来た。人の身に慣れねえから練度は全くと言えど、日ノ本一の槍だぜ? それがお情けかけてもらって、無様じゃねえか。
 しかも相手は、気に食わねえ長谷部の野郎と来たもんだ。いけ好かねえ野郎に手加減されれば、余計腹が立つだろう? なに、そうでもねえ? ははあ。最近の若いのは大人しいんだな。俺らの最初の主は、あんたくらいの年頃でもまだ取っ組み合いしてたって言うぜ?
 
 まあ、それはさておき。
 いよいよ勘弁ならなくなった俺は、真っ向から長谷部を煽った。どうしたおら、主に仇なす敵は斬るんだろ、てめえの忠誠はそんなもんか薄情者がって──そうだ、思い出した。あン時はあんまりにもこいつが主主主命主命うるせえから、からかったんだ──そう言って、本気で今の主を思ってるなら中途半端な真似するんじゃねえとけしかけた。
 
 ……どうしようもねえよな。ほんっと、笑っちまうくらいどうしようもねえ見栄だよ。
 だが、こいつもこいつでな。弱ぇ犬ほどよく吼えるって嗤って流しゃあいいのに、真に受けやがった。貴様って呟いた声が地獄の底から響いてくるようだったね、うん。
 どうなったかって? はっ、決まってるさ。
 この野郎、手加減しねえで殴りやがった。
 
 初めての重傷だったわ。殴られたのは顎だったってのに、首の骨が逝った。いてえどころの話じゃなくてよ、ぼきんって音がしたと思ったら、首から下の感覚がねえんだ。
 
 そこから記憶がすっぱり抜け落ちて、気付いたら手入れ部屋だった。起き抜けに、看病してた薬研藤四郎から「長谷部にあんな風にされて生きてたのは、旦那が初めてだぜ」って言われて、喜んでいいんだか悔しいんだか微妙な気持ちになったっけな。
 その後、俺が目が覚めたって聞いて来た主に長谷部共々ぶん投げられて、微妙な気持ちなんてどっかにすっ飛んでっちまったけど。
 
 ……やっと笑ったな。
 可笑しいだろ? そうなんだ。今思い返してみりゃあ、笑いしか出ねえ話ばっかりなんだ。
 
 散々下らねえ喧嘩をした。こいつは教育係だってのに褒めもしねえで貶してキレてばっかり、俺は俺で、こいつの上げ足とったりおちょくったり。口喧嘩は日課同然、無視と嫌味は四六時中、おまけに定期的に殴り合いまでするもんだから、他の野郎どもには呆れられるわ、審神者にはしょっちゅう呼び出し喰らうわで。俺と長谷部が審神者部屋で並んで正座、ってのが、あの頃は本丸名物みてえに言われてた。
 
 全くなァ。よく主も、俺に長谷部をつけたよな。
 俺達は相性が悪かった。教育係とその弟子としては、最悪の組み合わせだ。俺もこいつも、全っ然、ぶつかるのを躊躇わねえからな。いつでも全面衝突、こいつらがいたから博多のあたりは修羅の国になったんだなんて、散々からかわれてよ。
 
 だが主はそれでも、教育係を替えようとしなかった。
 不思議だよなあ。俺に「特」がついた後でも教育係を外さなかったんだ。その頃にはもう、俺も人の身には慣れ切っていたんだが、そのままだった。
 
 一度どうにも気になって、何で俺に長谷部をつけたままなのか聞いたことがある。
 俺はあの本丸で一番新参の、そして最後に来た男士だった。未熟だからなのか、それとも俺が本実装される前の分霊だからなのかと訊いた。
 すると主はすぐ、違うのだと答えた。俺に問題があるわけじゃない、これは私のわがままなんだ、と。
 
「だってあんなに子供みたいな顔する長谷部なんて、あなたが来るまで見たことなかったから。ほら、長谷部って、私の前だとできた刀剣の顔を崩したがらないじゃない」
 
 あの人はそう言って笑った。珍しく目尻にうっすら皺までつけて、えらく柔らかく笑うもんだから、俺もしょうがねえなって頭を掻くだけで精いっぱいだった。
 
 ……ああ。あの頃は認めんのも癪だったが、今なら言える。
 嬉しかったんだよ。ずっといつでも新米みてえに扱われてくのかと思ってたら、当てにされててよ。おまけにこれは俺にしかできないことだなんて言われて、馬鹿みてえに誇らしい気分になっちまって。
 しかも主や他の男士から、長谷部はあれでも俺を頼りにしてるんだって言われて、まあ悪い気はしなかった。こっぱずかしい気持ちが半分、浮かれた気持ちが半分。その頃にはもう、長谷部とも喧嘩だけっていうわけでもなかったしな。
 
 はじめはぶつかってばっかりだった俺達も、一年経つ頃には普通に肩肘張らねえで話ができるようになった。三年経つ頃にはそれまでに喧嘩した回数と笑い合った回数が並ぶようになって、七年経つ頃にはやっと、手加減なしで手合せができるようになった。
 そして九年が経った時。俺は長谷部と同じ第一部隊で出陣して、無傷で生還できた。
 
 ようやくだった。俺のいたあの本丸では、第一部隊で難易度の高い領域に出陣し、無傷で戦うことが出来て初めて一人前扱いされる。主も皆も祝ってくれたが、ただ一人素直に祝わねえのがへし切長谷部っていう刀の性なんだろうな。
 俺が一人前として認められた祝いの夜。いつもみてえに、長谷部は腹の立つ高飛車な調子で俺に言ったさ。
 
「良かったな、日本号。安心して浮かれておけ。その隙に、誉は俺が総取りしてやる」
 
 腹立つだろ? だから俺も言い返してやった。
 
「ああ、浮かれさせてもらうぜ。無礼講極まってぶっすり刺されねえよう、足下に気を付けろよ、教育係殿?」
 
 その返事はクソなほど綺麗な笑顔と、庭に向けられた親指で返って来た。早速お言葉に甘えて足下を刺しに行った……結局、主の手で二人して庭に埋められたがな。
 
 土から頭だけ出した状態で、俺達は約束した。
 教育係も恩も何も関係なく、これからは武勲を競い合おう。そして俺達の主に、最良の結果をもたらそうってな。
 
 ……楽しかった。
 本当に、楽しかったんだ。
 ちょいとお転婆が過ぎるが誰よりも強ぇ俺達の主と、そんな主を慕う野郎どもと、その中でも一段と憎たらしくて気の置けねえ、クソ生意気な刀と。
 毎日騒いで、戦って、笑って、酒飲んで、ってな。最高だった。
 
 もう少しだったんだ。
 俺はまだ追いついたばかりだった。もう少しで、本当にあいつと肩を並べられると思ってた。
 
 ちょうどその頃だった。主の倅が、変な本丸を見つけてきたのは。
 
 おう、そうさ。主同様審神をやってた倅が、結婚するから引退すると言う余所の審神者から、怪しい本丸を引き継いでくれと提案された。それが全ての始まりだった……俺の知る限りでは、な。
 
 その本丸の話は、俺も主の隣で聞いていたから覚えている。
 倅の語りようを簡単にまとめるなら、そりゃあもう綺麗な所だって話だった。
 広々とした座敷に充実した設備、政府の設定したものより見事な景趣。設備も景趣も、手間暇かけねえと豊かにならんのだろう? それが最初から備わっているというのは、大層魅力的な話らしいな。
 しかもそれだけじゃねえ。刀剣は既に全て屋敷に揃っていると来てやがる。倅の話じゃあ、政府が実装の認可さえすればすぐに手元で顕現させられるんだとか、そういうことを聞かされたみてえだったな。
 
 ……変な顔してるな。やっぱり、あんただって怪しいと思うだろ? 当時戦場かたまに行く万事屋程度しか「外」を知らなかった俺だって、話がうますぎると思った。
 もちろん俺たちの主だって手練れだ。すぐ、これは相当まずいものに捕まったと気づいたらしい。

 だって、想像してみろよ。
 あんた、審神者ならきっと分かるんだろ。全刀剣男士が揃ってるって、どんな気分になるもんなんだ? その全刀剣男士と綺麗な本丸と、それを両方手に入れるとして、あんたはどっちの感動を先に口にする?
 
 主の倅は、本丸にいた刀剣の話なんて、聞かれなけりゃまともに話そうとしなかった。話したのは、その本丸の素晴らしいこと、美しいことばかりで──実装されていない刀剣の分霊が置いてあるっていうそれだけで十分おかしいのに、問題視してなかった。
 
 確かにあの倅は、もともと本丸に惹かれてるところがあった。審神者になった時期が悪かったんだ。あの頃は、本丸となる土地が不足していたらしい。それで俺が顕現された二年後くれえに、主の本丸に仮住まいする形で、審神者業を始めてたんだ。本人としちゃあ何時まで経っても母ちゃんの膝元で、表にこそ出さねえが居心地悪かったんだろうよ。
 
 だが、それにしたって倅の様子はおかしかった。
 何度俺達の主が諭しても、あの本丸を手に入れたいあの本丸をこの手にの一点張り。あからさまに顔つきや外見の変化することこそねえが、平時は冷静で論理的な性格のあいつが、顔色一つ変えずただただ本丸が欲しいとだけ繰り返す様は異様だった。
 
 これでまだあいつが鍵さえ預かってなけりゃ、幽閉ちまって静まるのを待ったところなんだがな。あいつが持ってきた本丸の鍵だというそれが怪しかった。
 
 形がな、和錠のそれなんだ。分かるか? 丸に質素な棒がついた、すげえ古典的な鍵だったんだよ。
 最近のは、カード型だとかパネル式だとか、色々あるんだろ? 審神者によっては術式だけで十分だって奴もいるようだが、触媒がないと呪術ってのは危ねえところがあるから、俺もあった方が安心だと思うぜ。あと、もしものことがあった時に、術を知らねえ者じゃねえと開けられねえって言うんじゃ困るからな。
 
 悪い、話が逸れたな。
 そう、古典的な鍵だったんだ。錆びついてるみてえな色合いの、赤茶けた鍵だ。事実錆も浮いてるように見えたな。綺麗だ綺麗だって言われる本丸のわりに鍵はこれかよって思うような──だからこそ、ぞっとしねえ鍵だった。
 あんなもん、今時使う審神者がいてたまるか。
 
 主は本丸の正体を掴もうと、鍵の解析を行った。鍵は気に食わねえことでもあったのか、主の指先に火傷を負わせて、近づけようとしなかったらしい。だが主は負けじと解析して、どうにか本丸の座標だけは掴めたところでぶっ倒れちまった。
 熱が出たんだ。乗せた濡れ布巾がすぐ干上がるほどに額が熱くて、おまけにウンウンうなされた。
 このまま死んじまうんじゃないかと誰もが思った。そんな心配話を聞くたびに、長谷部の奴はそんなわけあるかと一蹴してたが、奴も内心では怖かったんだろう。毎日主のそばにいたがっていた。主が寝てる間は少しでも楽になるよう布巾を冷やし直して、起きた時は甲斐甲斐しく水やら食事やらの世話して。初期刀の蜂須賀虎徹に宥められてようやっと仮眠にいくような有様で、主の熱も下がりそうにねえってのに、このままだと長谷部まで倒れるんじゃねえかと、皆ひやひやしてたわ。

 それなのに、やっぱり主の倅はおかしかったんだよなァ。
 お袋が体調を崩したっていうのに、うなされてる枕元に行っちゃあ顔を覗き込んで、「俺をあそこに行かせてくれ」って言うんだ。
 おかしいだろ? あの時ばかりは蜂須賀もキレたし、長谷部もいい顔しなかった。

 主はついに折れた。座標も掴めたから何かあったら迎えに行こうっていう腹積もりで、倅の本丸転居を許した。
 ただし、条件をつけた。必ず第一部隊は神剣を多く入れる編成にすること、一ヶ月に一度は必ず自分の所へ顔を出しに来ること、そして己の長谷部を入れて移り住むこと。
 この三つの条件を守れねえなら、自分が引きずってでも連れ戻しに行くぞと念を押した。
 
 そうして倅は、てめえの刀剣と長谷部を連れて新しい本丸に引っ越していったわけだ。
 長谷部は至って普通に、出陣するのと同じ雰囲気で出かけて行った。後ろ向きな姿勢なんざ一度も見せなかったし、俺たちも大丈夫だろうと思ってた。なんせ主は散々長谷部に「お前は自分の刀だ。絶対帰って来い」って念を押してたからな。下げ渡すわけじゃねえし、こんだけ長く仕えてきた間柄だから大丈夫だろうって、タカくくってたんだよ。
 
 しかし倅が本丸から出て行った途端、一向に引きそうになかった主の熱が、スッと下がったのだけは気味が悪かった。
 やっぱりやべえところなんだ。そう思っても倅は出て行った後だ。奴が一ヶ月後、約束を守って顔を出すのを信じて待つことしかできねえ。

 あの時の一ヶ月は長かったな。
 果たして倅は約束を守った。条件通り月に一度、母親の元へ顔を出しにきた。会う度、奴の顔色は輝いていくようだった。ああ、本当だぜ。俺はくだらないことで嘘はつかねえ。
 奴はいかに新しい本丸での生活が楽しいかを語った。どんなに本丸を歴史修正主義者から守るのに忙しいか、どんなに本丸が魅力的か、美しいか──聞きもしねえのによく語ったさ。

 主の方からあっちの本丸に出向こうとしたこともあったが、できなかった。主があっちに行こうとすると、鍵の解析の時につけられた傷が疼きだすのさ。治ったはずのそれが熱を持って、痛くて動けなくなる。
 おかしな話だろう? 明らかに変だろう。
 だが息子は何ともないと言うし、あっちにこちらが行くこともできねえしっていうんで、まんじりとともしねえまま、結局俺たちは奴の訪れを待ち続けた。
 
 ところが十一ヶ月後、倅が顔を見せる予定だった約束の日。ついに奴さん、来なくなった。
 
 主は心配した。どうしたのか、何かあったのか。
 屋敷へ出向こうとした。だが、屋敷に行こうとするとまた、指がちぎれそうなほど痛み出す。あの鍵にやられた痕だ。

 手の痛みを無視して進もうとすれば腕が重くなる。それを無視すれば頭が痛くなる。それでも自分の刀剣に抱えてもらって向かおうとすれば、刀剣は固まるわ主の腰は抜けるわときたもんだ。
 俺も経験したから分かるが、あの感覚は異常だったぜ。主を支えようとするだろう? すると、そのまんま固まっちまうんだ。腕も足も、動かしたくても動かせなくなる。そう、まるで刀に戻っちまったみてえにな。
 
 それでも主は気丈な人だったから。知り合いの審神者数人に頼んで抱えてもらって、その屋敷へ一緒に転移した。俺を含めた刀連中は、情けなくも主の帰りを待つことになった。
 
 主が帰って来たのは昼過ぎだった。
 転移装置の光とともに姿を現したのは、主とあの……一年前に新しい本丸へとついていった長谷部だけだった。
 長谷部の様子が普通じゃねえってことは、すぐ分かった。目も口も半開き、身体には力が入ってねえ。自分よりずっとタッパのねえ主に、寄りかかってると来てやがる。

 すぐ野郎どもが集まってきて、長谷部は手入れ部屋に連れて行かれた。俺もそっちに行こうかと思った矢先、主に袖を引かれた。
 主の顔は真っ青だった。

 判断を間違った、ごめんなさい。主は俺にそう言った。
 俺は、屋敷でのことを聞いた。
 
 転移装置で飛んだ先は、話に聞いた通りの小綺麗な本丸だったそうだ。転移してすぐ、見事な梅の木の満開が迎えてくれた。ワッと花弁が真っ青な空に舞ってな、花吹雪みてえに、ひらひらと舞い降りてきた──これには警戒してた他の審神者連中も見惚れ、主も確かに綺麗だと思ったらしい。

 ただ、やはりどこか妙な塩梅だったそうだ。

 主はその違和感を言葉にするのに、えらく迷っていた。あのはきはきした人が珍しく、考えてんで考え込んでやっと口を開いた。

 主人曰く、あの屋敷は「綺麗すぎた」。
 いくら審神者の霊力によって成り立ち、付喪神の神気で満ちたこの世ならぬ場所と言えど、本丸はいくらかはこの世にも本拠を構えている場所だ。畑の作物は育てようとしなきゃ育たねえし、厩だって放っときゃあ糞尿で臭くなる。畑当番も馬当番も、審神者の霊力を体に満たすための労働だが、だからこそ本丸というのは「手をかけなくてはならない必要が不可欠」な場所なんだ。

 それなのにあの本丸には、手をかけなくてはならなそうな部分が少なかったらしい。

 本丸は静かで、人っ子ひとりいねえ。仕方なしに主達はあちこち探し回りながら、屋敷を見て回った。

 座敷の畳は息子達やその刀剣達が生活しているはずなのに青々として、目のひとつひとつが擦りきれずふっくらしていた。
 障子も襖も張り替えてねえって話だったのに、日焼けも何もしてねえ。まっさらで、障子は透かしの竹の柄がくっきりと見えた。襖は唐紙の、絢爛な牡丹柄だったそうだ。
 厩には馬がいたが、糞尿を掃除するための道具が微塵も見当たらなかった。

 ……変だろ。
 おまけに庭は色んな種類の植物が揃ってたそうだが、枯葉やら花弁の落ちて茶色くなったようなのなんて、ひとつもなかったらしい。

 たまに梅の花びらが漂ってるのを見てるとな。
 さっきまで確かに舞ってたその白いのが、地面に触れた途端、すうっと溶けて消えちまったんだと。

 おかしいよな。

 巡りながら倅や奴の連れて行った刀剣──特に第一部隊を組んでいたはずの、蛍丸とか太郎とか次郎とか、石切丸、にっかり青江──たち、長谷部の名を呼んでいたそうだ。

 建物の中はしんとして、誰の声もしねえ。そう言えば、鳥の声さえ聞こえなかったって言ってたな。
 ただ風の音だけが──さらさらと、それに合わせて何かがなびくような、そんな音はずっと聞こえていた。

 それは藤棚……豊かな房の垂れ下がる、見事な藤波の揺れる音だった。烟るような紫の花の群れ、その向こうはほの明るくて、壁のようなものも見えなければ藤以外の何も見えなかった。とてもじゃねえが、そこへ足を踏み入れてみる気にはならなかったそうだ。

 やがて屋敷の端へとつく。物見櫓と蔵が立っていた。

 その蔵の前に、長谷部が佇んでいた。長谷部はぼんやりと、開きっぱなしになった蔵の中を見つめていたそうだ。
 
 主人が声をかけると、長谷部は振り返った。ゆっくりと、こうべを巡らせて……柔らかく笑った。

 やっといらしてくださったのですね。遅いから心配していました。

 長谷部はそう言った。主は審神者連中の背から下ろしてもらって、長谷部の足元にどうにか座り込んで問い質した。
 いったいどうしたんだ。息子は、息子の刀剣達はどうしたんだ、と。

 長谷部は主を見下ろして、緩く微笑むだけだった。審神者の一人が主に、一度引き返そうと提案した。ここは明らかにおかしい。長谷部の様子も普通ではない、と。

 審神者達は長谷部を連れて行こうと腕を引いた。だが奴は、まったく動こうとしなかった。それどころか激しく抵抗した。

「やめろ、俺には務めがあるんだ! この本丸を守らねばならない、触るな!」

 札を使って拘束しても、長谷部は暴れた。まるで自分の周りにいるものが全て敵であるかのような口ぶりで、主は衝撃を受けて、座り込んだままその様を眺めていたそうだ。

 しかし突然、長谷部の動きがぴたりと止まった。
 同時に、奴の顔から表情が抜け落ちた。急に暴れなくなった長谷部に、審神者連中は拍子抜けしたらしかった。本当に突然、それまでの暴れようが嘘だったみてえな、棒立ちの人形同然になっちまったんだと。
 あの時主は、その長谷部の様子がよほど気にかかったらしくて、こうも喩えてたな。
 動き方を仕込まれた絡繰り人形が、ふとその仕込まれたものを忘れてただの人形になっちまったみたいだった、と。

 だが、本当に不気味だったのはこの後だ。
 糸の切れた人形同然だった長谷部が、いきなり笑った。これがまた、昔のあいつならまずありえねえ、ちょっと甘えたような無邪気な笑顔で……その顔のまま、口を開いて言った。

「まーまー。慌てないで、ここにいようよ」

 喋り方が変わっていた。
 だがそれより審神者連中がぎょっとしたのは、声質だ。
 漏れたのは、長谷部の声とは全くもって違う、高くて甘い声だったという。
 裏返ったわけじゃねえと主が言うんだから間違いねえんだと思うが。
 それは、紛れもなく蛍丸の声だったそうだ。

 審神者達は凍りついた。その間にも長谷部は話し続ける。

「せっかちだねえ」
「まだ長谷部の番ではないよ」
「長谷部殿は、まだ少し先です」
「いいじゃないか。ねえ、置いて行きなよ」

 にっかり青江、石切丸、太郎太刀、次郎太刀の声だった。それぞれまるでその刀そのものになっちまったみたいに、表情は勿論、声までまるっきり違ってたそうだ。

 審神者達は立ち尽くした。その間にすぐ長谷部は我に返ったようにまた顔を歪め、滅茶苦茶に暴れ出した。

「やめろ、俺はここから動かんぞ! 離せ!」
 
 異様だ。おかしい。恐れをなした審神者達は、一目散に逃げ出した。後には主と、拘束されてもがいてた長谷部だけが残された。

 それから主は札の拘束が後から効いてきたらしい長谷部をどうにか引きずって、這いつくばりながら帰って来たんだそうだ。

 事の顛末を話し終えた主は、俺に言った。

「日本号、あの屋敷に行ってはダメ。あそこは……みんな、いるわ」
 
 みんなって誰だ。俺は聞いた。
 
「みんなよ! 息子も蛍丸も石切丸も太郎太刀も次郎太刀も! みんなみんなみんな!」
 
 主は尋常じゃなく取り乱していた。何を言っているのか分かりづらかった。

 俺と他の刀数振で、どうにか主を寝かしつけた。夜も更けた頃にはすっかり落ち着いたみてえで、俺らは安心してた……だがそれも甘かった。
 
 翌朝、主の布団はもぬけの殻になっていた。それからまもなく通達が来て、俺達の主が時空を漂ってるのを発見された、と伝えられた。
 主は、煤にまみれて死んでいた。手には松明と、真っ黒で二つに折れた棒みたいなもんを持って……。

 あの人は、あの本丸を燃やしに行ってたんだ。そしてそのまま、自分も燃やしちまったんだな。腕も胴もかっすかすの炭みてえになっちまって。
 
 政府の役人によって主の遺体が本丸に運ばれて帰って来た時は、刀も槍も薙刀も集まっておいおい泣いたさ。仕方無えだろ。情けねえなんて言ってくれるなよ? 人間には分からねえかもしれねえが、主一人をみすみす死なせちまったなんて、無念でしょうがなかったんだ。
 
 だが俺だけは、泣くにも泣けなかった。
 どうしようもなく悲しかったさ。良くしてくれた主だったんだ。俺達がもっとよく見てりゃあ死ななかったかもしれねえんだ。悲しくねえわけねえだろ。

 でもなあ、妙だったんだよ。
 だって、普通ならどこもかしこも炭になりきってるはずの主の……その、両の眼球だけが燃えずに残って、しかも手の中の鍵を凝乎と見つめてるような気がしたんだ。
 
 さらに気になったのが長谷部だった。
 前の晩は放心状態でぴくりともしなかった奴が、その翌朝になった途端元気に動き出した。しかもあんなに屋敷では主に抵抗したっていうのに、帰って来た主の亡骸を前にしてさめざめと泣いてたんだ。

 ……え? 普通じゃないかって?
 あんた、へし切長谷部って刀を知らねえな。無理ねえ話だが。

 考えてみろ。主が死んだのは何でだ? あの本丸のせいだろ。へし切長谷部は自分が主に対して如何に尽くせるかっていう、そこにこだわる刀だ。ならばあの本丸にいたくせに、こんなことになる前にことを防げなかったてめえの責任を思って、舌を噛み切るくれえのことしてもおかしくねえんだよ。普通だった頃の長谷部ならな。
 そんな非を抱えているはずの長谷部が、他人の前であからさまに悲しむなんざ、以前だったら考えられねえ行動だった。

 どうにもおかしい。
 まだ終わってねえんじゃねえかって、俺は思ったんだ。


 ……。

 …………。


 ……主が最初に帰って来た時、話を聞いてたのは俺だけだった。
  何で主は、俺にだけあの話をしたんだろう。
 他の奴が聞いてたならば、今頃どうだったんだろうか。

 もしかしたらあの時にはもう、あの人は先の事態を予感してたのかもしれねえ。

 …………。


 俺たちの本丸は解体になった。

 男士の多くは刀解を願った。その願いは政府で技術者として働いてた、残った方の主の息子が叶えてくれた。
 審神者でもなけりゃあ、普通刀解なんてさせたがらねえもんなんだが。あいつらきっと、寂しかったんだろうな。

 刀解を願わなかった連中は、それぞれ他の本丸へもらわれていった。
 
 長谷部は刀解を望まず、随分若い審神者の所へもらわれていくことになったと聞いた。
 嫌な予感がしたよ。その頃にはもう、俺ははっきりした根拠こそねえまでも、長谷部が変わっちまったってことに確信を持ってたからな。なに、すぐ分かったさ。付き合いだけは無駄に長ぇんだ。

 俺は長谷部と一緒に引き取られることにした。長谷部と俺を引き取った最初の審神者は、あんたよりもう少し小せぇようなボウズだった。笑うと笑窪のできる人懐こそうな男で、前の長谷部がちょうど折れちまったところだったから、こいつのことを知って他人事とは思えなかった、拙いところが目立つだろうがよろしく頼むと言っていた。

 ところが一ヶ月も経たねえうちに、その審神者は消えちまった。

 突然だ。蒸発しちまったんだ。影も形も見当たらねえ。出掛けた様子もねえのに。

 全員で探し回っていたら、今度は刀剣男士が消え始めた。一本ずつ、不規則に間を空けて。ただ姿が消えるわけじゃねえ、本体が屋敷のどこかに、ぽつんと落ちているのだけが見つかる。どうして、なんてあの時は分からなかったさ。

 最初に消えたのは、主に一番近かった山姥切だったか。次が薬研通。それから丸一日経った頃、乱藤四郎が消えた。山姥切は近侍部屋で、薬研は医務室で、乱藤四郎は厠の前で、それぞれ本体だけが見つかった。

 主が消えたから、刀が物に戻ったのかと思うだろ? 違ったんだ。そうだったら、どんなにまだ良かったか。

 薬研が消えた後、山姥切の本体に異変が起こった。
 錆が浮き始めたんだ。その刀身にふつりと、かさぶたみてえな赤黒いのが付いていた。

 驚くだろう? 主のいる付喪神に錆なんて、ありえねえ話だ。

 仰天して集まった刀達の前で、山姥切の本体はみるみるうちに錆びていった。磨こうとしても、主がいねえ。手入れもできず、なすすべもなく。山姥切は俺達の目の前で朽ちて朽ちてただの鉄の棒みてえになって、折れちまった。
 触れてもいねえのに、ぽっきりとな。

 そこからは悪夢だった。薬研が同じように錆びた。と思えば、厠に行った五虎退が乱藤四郎を持って帰って来た。奴は厠に行くと言って姿を消したばかりだった。半狂乱になる粟田口の前で、奴もまた山姥切たちと同じ道を辿った。取り乱した兄弟達は、気分を落ちつけてくると言って外へ出たまま、戻らなくなった。

 何が起きているのか分からないが、一振になった奴が消えていくらしい。そう考えて、残った連中は全員で一つ所に集まるようにした。だが俺は、そうし始める前から元凶が分かっていた。分からなくちゃおかしいだろ。

 長谷部だ。決まってる、こいつしかいねえ。長谷部は審神者の失踪に動揺したような様子を見せていたが、非常事態だからこそこの本丸を守ると言って、厨やら畑やら厩やらといった生命線の管理のために動き回っていた。
 自分一人だと分からないことが多いからと、てめえ以外にも歌仙やら陸奥守やらといった面子に声をかけて仕事を分担していたようだが、そんなのは目くらましだ。奴はその頃にはもう、審神者と随分打ち解けて本丸運営の重要な部分を任されるようになっていた。そんな奴が仕事の、何が分からねえって言うんだ?

 長谷部はうまく本丸に溶け込んで、信頼を勝ち得ていた。不幸なことに、あの本丸は昔から奴をよく知る刀が少なかった。だから誰も奴を怪しまねえ。

 対して俺は、本丸の連中から警戒されていた。長谷部が俺を避け、嫌っているような言動を繰り返していたからだ。そんな俺一人が警戒していても、事態は改善するわけがねえ。どんどん刀が消え、錆びては折れていく。

 結局残った刀が俺と長谷部と残り二三本になったところで、やっと異常に気付いた役人が本丸を解体した。

 俺と長谷部は調査を受け、問題がないことが確認された──そう、異常なしだったんだよ。俺も長谷部もな。だからすぐ、別の主のところへ移ることになった。

 次の本丸の主は若い女だった。前の主のこともあるからな。俺も、後で何もしなかったなんてことは避けたかった。
 この時も長谷部についていった俺は、ヤツがいない隙を狙って、審神者にこれまでのことを話した。長谷部に警戒しろ、あいつはおかしくなっちまったんだ、これまでにあいつの主が仮の者も含めて三人いなくなってるってな。

 だが……人の心ってのは、ままならねえもんだなあ。

 審神者は警戒した。だがそこを逆手に取られた。
 ほら。長谷部はこの通り、見目だけは悪くねえだろう。しかもヤツは、見方さえ変えれば「刀剣男士として顕現してからこれまで、慕った主に次々と去られている不遇の男」だ。

 絆されちまったんだろうなあ。

 え? 命がかかってる状況でそんなことあるのか、って?
 若いなあ。あんた、悪い女に騙されても知らねえぞ?

 そうだな、喩えてやろう。近所に「あいつは過去に付き合った男を全部殺してるんだ」って噂されてる美人のネエチャンがいたとしよう。それがひょんなことから話してみたら、なんと実は逆で、「過去に付き合った男が薬狂い賭け狂いのろくでなしばっかりで、自殺を繰り返されたばっかりに悪い噂が立っちまったかわいそうな女」だったと知れたら、あんたどう思う?

 ちょっと同情する、か。そうだな。疑惑はまだ晴れねえまでも、前に比べて興味が湧くだろ? あるいは幸薄の美人も悪くねえなとか、いやそこまではいかないが、ちょっと近づいてみたい、くらいは思うんじゃねえの?

 俺はその過程は聞いてねえから、知らねえよ。だがとにかく審神者は、俺の見てねえ間に長谷部によってガードを緩ませられちまったんだろうな。

 或る晩、ついに俺は見た。

 審神者部屋から声が聞こえた。審神者の「長谷部」って囁きが、聞こえた気がしたんだ。
 ちょうどその手前の廊下を通りかかろうとしていた俺は、足音を潜めて隣部屋に入り込んだ。そこはちょうど近侍部屋で、奇しくも業務中だった加州が、審神者部屋と繋がってる障子窓で中の様子を窺おうとしてたところだった。

 加州は俺を見て追い返そうかと迷ったらしいんだが、あいつ結構勘がいいだろ? 俺の様子から何かあるらしいと察して、黙って一緒に隣を覗くことを許してくれた。

 審神者部屋では、審神者が長谷部の話を聞いてたようだった。長谷部はどことなく消沈したような痛ましい様子で、これまで自分の身に起きたことを語っている。内容はだいたい、俺がこれまであんたに語ってきたのと同じようなもんだった。婆さんのもとに顕現されたところから、その倅に連れられて怪しい本丸に行くことになるまではな。
 だが、その先は違った。

 あいつは人の手を渡ってしまって悲しかったこと、そしてあの怪しい本丸での、美しい思い出を語った。その屋敷がどんなに綺麗か、そこでの生活がどんなに楽しかったか、既に感じていた悲しみを忘れるほどに心満たされるものだったか──そうだ、あの倅審神者が母親に語って聞かせた時と同じように、心底うっとりした様子で、よ。

 ひとしきり語って聞かせてから、長谷部は審神者に少しだけ、膝半分程度すり寄った。加州の柄を握る手の節が、白く浮き上がっていた。

 長谷部は熱っぽく審神者を見つめて、囁いた。

 あの場所は、本当に美しいのです。浮世の憂さも忘れるほど──きっと、あなたの忘れたいことも忘れさせてくれるでしょう。

 するとそれまで俯いてた審神者が、顔を跳ね上げた。奴はすまなそうに詫びる。

 すみません。俺はあなたの力になりたくて、他の刀剣からあなたの昔を聞いてしまいました。
 ですが話を聞いてみて、あなたの過去は一人で抱え込むには重すぎると、俺は思いました。
 審神者になった方というのは、現世を捨ててもいいと思えるほどの傷を負ってらっしゃる方が多いと聞きます。ですが、あなたの傷は特に深い。
 あの屋敷に救われた俺とあなたが出会ったのも、きっと何かの縁。あの美しい屋敷にあなたはお似合いです。俺に、紹介させてくださいませんか。
 
 俺を見て下さい、主。
 
 長谷部はそう言った。
 はい。審神者は返事をして、長谷部を見つめた。

 たった一瞬。長谷部と審神者の目と目が合った。それだけの間に。

 ふっ、と。幻みてえに審神者は消えちまった。

 本当に誰もいなかったように、来てた羽織の一つも残さねえで、消えちまったんだ。

 俺は唖然としたさ。見たものが信じられなかった。だがそれ以上にてめえの見た景色を信じられない、いや信じたくなかったのは、一部始終を見ていた加州の方だ。

 あいつは窓を開け放ち乗り越えて、正座したまま見上げてくる長谷部にてめえの切っ先を突きつけ、えらい剣幕で問いただした。

 主に何をした、主をどこへやった。あの人の昔を知ってたのは俺だけなのに、なんでお前が知ってるんだ、ってな。
 長谷部はそんな加州を、不思議そうに眺めていた。それからあいつの言葉が収まった頃に、緩く首を傾けて言った。

 何を言ってるんだ。お前の主なら、ちゃんといるじゃないか。

 加州は怪訝そうに長谷部の顔を見た。
 しばらくはそのままだったが、やがて加州の肩が跳ねた。ガタガタ震え出すあいつの様子がおかしかったから、俺は加州を呼びながらその顔を覗き込んだ。真っ白だった。目を瞠って、長谷部を見ている。そこで俺もつられて、長谷部を見たんだ。

 最初は気付かなかった。長谷部はただ笑ってるだけ。前だったら信じられなかったが、ここ最近は見慣れちまった、嘘臭ぇ至って穏やかな表情だった。

 だが俺も、気付いちまった。

 最初は、長谷部の目ってやけに光をよく映すんだなと思ったよ。あいつの目が、月光を反射してきらきら光ってるみたいに思えてな。
 更によく見て違和感を抱いた。そして気付いた。違う。そうじゃねえんだ。

 奴の眼の藤色だと思っていた部分は、藤の花だった。月光に見えた白い輝きは白壁。虹彩の色でも光の反射でもねえ。藤棚の向こうに白壁の見事な武家屋敷がある、そんな景色が長谷部の眼の中に在ったんだ。

 藤の本丸だ。

 俺達の最初の主が見に行って命を落とすことになり、その倅も魅了されちまった藤の屋敷。
 燃やされたはずのそれが、どうして長谷部の眼に映っている?

 俺が疑問に思った時、奴の眼の中に新しい影がちらちらと動いた。屋敷の手前に何かいる。
 なびく藤波、眩い白壁。その手前で蠢くその影は……俺はその正体を認めて、ぎょっとした。

 女だ。さっきまでここにいたはずの加州の女主が、長谷部の眼の中からこっちに向かって手を振ってやがったんだ! おいでおいでって、笑いながら手招きして加州を呼んでいた!

 加州は絶叫して──止める間もなかった──長谷部を斬った。長谷部は倒れて、動かなくなった。加州は叫びながら走り去り、そして、追って来た俺や騒ぎを聞きつけた他の刀剣の目の前で、赤々と燃え盛る鍛刀部屋の炉に身を投げた。
 
 …………。

 翌朝、突然連絡の取れなくなったことを訝しんだ担当がやって来た。すぐ政府に通報された。
 たくさん人間が来て調べられて、俺もてめえが経験してきたことは洗いざらい吐いたさ。前の主だった審神者親子が妙な本丸にひっかかったせいで死んだこと、次の主も消えて、今回の主も消えちまったこと、その原因が俺と一緒に来たへし切長谷部にあったことまで、正直に全部な。

 最終的に、役人連中は「問題だったへし切長谷部は折れたのだから」ということで、それ以上事件の発展はないだろうと考えた。結果、あの本丸は「今のところ異常はないが、付喪神同士が争い命を落としたために今後も要経過観察」として、政府の役人から転身した審神者が、監視役も兼ねて新しい主として住まうことになった。

 俺はこの時も、まだ本丸に留まることにした。刀解してもらおうかとも思ったんだが、俺が本実装前の分霊であること、またこの本丸にはまだ俺がいなかったことから止められた。それに俺もまだ気になることがあったから、刀解されるのはやめにしたんだ。

 ああ、そうだ。長谷部の瞳の中に、何故かつて話に聞いていた藤の屋敷の光景が見えたのかが分からなかったっていうのもある。だがもっと気がかりだったのは、長谷部自身の事さ。

 あの斬られた長谷部の残骸は、走り去る加州を追いかけていた間に消えていたんだよ。……な、気になるだろ?

 そうして引き継がれた本丸は、しばらくの間、前の主の死に沈んでいた。だがやがて、戦や任務に追い立てられるようにして活気を取り戻していった。新しい審神者も本丸の空気に慣れて、刀達もようやく現実を受け入れた。

 その頃しばらくは、平和だったからな。俺ももう平気なのかと思いかけたよ。何せあの本丸には、俺が来る前からちゃんと別のへし切長谷部がいたからな。俺の知っていた長谷部とは似ても似つかない、あんまり笑わねえが無駄な口は利かねえ、俺と下らねえ言い争いもしないような、しっかりしてて寡黙な長谷部だった。姿形は全く同じでも、言動は全然違う。俺の知らない長谷部が、俺の知るあの長谷部の存在を打ち消してくれる気がして、何となく安心した。さすがにもう大丈夫か、と俺も思い始めた矢先だった。

 本丸内に妙な噂が立ち始めた。「本丸のあちこちで加州清光の霊が出る」って話だ。

 もちろん、ただの加州清光じゃねえ。その頃にはもう新しい加州が来ていたが、そいつじゃない。そもそもこの本丸で初期刀として働き、へし切長谷部を斬り捨てて炉へ飛び込んだ加州清光の亡霊だ。

 加州は、あの長谷部を斬った時の姿のままだという。血濡れの本体を下げては本丸のあちこちに現れて、虚空を睨んでいた。そして誰かが話しかけようとすると、加州はそいつを見つめて何か話すんだ。何を言ってるのかは分からねえ。だが目撃した連中は、恨みを言っているわけではなさそうだったと、短刀から大太刀まで口をそろえていった。
 目元を顰めて眉を吊り上げ、こっちを見て何か言いながら首を横に振る。ああいう様子はよく戦場で見た。親しかった刀達は、こう言っていた。

 あれはまるで、警告をしているようだったと。
 「危ない、逃げろ」そう言っているように見えたそうだ。

 その噂を聞いてから、俺は加州の亡霊に会えないか本丸を歩いて回るようになった。
 あの長谷部を斬った加州だ、もしかしたら奴が再び現れる前触れでも告げようとしているのかもしれない。ならば警戒しなくちゃなんねえな、って。

 ……ここで俺はまたドジを踏んだ。

 俺は消えた長谷部のことばかり考えて、奴の足跡を追おうとしていた。そのために、加州の姿を探していた。
 だが本当に注目していたら気付いてただろう変化が、この頃から起こり始めてたんだ。

 あんた、分かるか?

 ……。

 ……分からねえか。

 …………。

 あの、もとは女審神者のものだった寡黙な長谷部だ。

 あいつが変わり始めていたんだ。ちょっとした受け答え、審神者の呼びかけに答える声、任務に向かう時の歩き方に、飯の時手をつける皿の順序。

 ……。

 もう分かるだろう。

 あの、女審神者のものだった長谷部が、俺の教育係だった長谷部に似てきてやがったんだ。

 あんたは同じ本霊から分かれた分霊の、それぞれの個体の見分けがつくか? 演練に行き慣れて、更にてめえの刀剣と一緒に過ごす時間が長くなると、より見分けがつくようになるらしいな。

 俺もよく、最初に俺を顕現させた婆さんに言われたもんだった。あそこの本丸の日本号に比べて、俺は髪が二割増し程度乱れている。あそこの本丸の日本号は芋焼酎を好むが、俺は日本酒を好むんだなとか。それからあそこの本丸の日本号は照れると豪快に笑うんだが、俺は苦笑いして目を逸らすんだ、とか。

 言われた時はそんなの知ったこっちゃねえと思ったもんだったが、いざ自分が見比べをするとなると気になるもんなんだな。ただ俺の場合は、決して楽しい発見じゃあなかったが。

 最初に気付いたのは、風呂に入ってた時だ。
 俺は流しに向かって髪を洗ってた。背後の大風呂で、長谷部と燭台切と鶴丸国永が浸かって何か話していた。何かジイさんが面白いことを言って、長谷部が笑った。

 「あの」長谷部の笑い方だった。

 反響の仕方がそっくりだった。俺は思わず振り返った。だが鶴丸も燭台切も普通に会話を続けていて、特に異変は感じていないようだったから、最初俺はてっきり「あの」長谷部のことを思い出し過ぎていたせいだろう、気のせいだと思ったんだ。
 だが、そうじゃあなかった。

 俺が湯船に浸かりにいった時だ。浸かろうと身を屈めて、うっかり頭にのせていた手拭いを湯船に落としちまった。しかもそれが運悪く、長谷部のところへ流れて。

 長谷部はそれを取って一度湯船の外で絞り、顔を顰めながら俺に放ってよこした。ついでにこう言った。

「日本号、大風呂ではタオルを湯につけるな」

 ……はは。てめえの記憶力が良すぎて、あの時は嫌になったぜ。

 手拭いを絞って投げる時のぞんざいな仕草、俺の名前の発音、指南役じみた言い方、呆れてるみてえに顰めた眉の角度。

 ああそうだ。あの俺がよく知ってる、教育係の長谷部の所作に声色だ。全部全部、そっくり同じだった。

 気に食わねえ野郎ほど見ちまうって言っただろ? そうさ、俺は散々あいつを見てきたんだ。嫌でも目についたし耳についた。奴の動作も言動も、気付き出せばもう、どんな些細な癖でも目に付くようになった。

 分霊なんてほとんど外見に差はねえ。強いて言うならあの本丸の寡黙な長谷部は髪の色がやや明るくて、俺の教育係だった長谷部は暗かったが、あの時あの本丸の長谷部の外見自体は変わってなかった。だが、微妙な雰囲気が変わってた。人間の一卵性双生児って奴もそうだろう。ほとんど同じ外見してても、似た環境で過ごして来た双子でさえ、微妙な生活の違いで人格の差を感じさせるもんだ。そしてこれが、その個体の差として大きく印象を与えるものになる。

 審神者に答える声が、僅かに前より張るようになった。呼びかけられて振り返る時の、首の傾け方。迷ってから口を開く時の、唇の動き。考え込む仕草。敵に予想外の動きをされた時の、目の瞠り方。

 俺の知らない長谷部が、俺の知っている長谷部にどんどん馴染んでいくようだった。

 単純に、あのおかしくなる前の長谷部が戻って来ただけだったなら、まだ良かったんだけどな。世の中、そんなに甘くねえ。


 ……。

 …………。


 俺は気付いたさ。

 あのへし切長谷部が。主君に誰よりもアピールしたいと内心思っているあのへし切長谷部が、審神者のことを「主」と呼ばなくなったってことにな。

 これは、かつて折れたへし切長谷部にも起こった変化だった。
 あいつは藤の本丸に行った後、婆さんのことも、坊ちゃん審神者のことも女審神者のことも、一度も「主」と呼ばなかった。呼んだのは女審神者を吸収する前、奴に例の屋敷の話をした後の一回だけだ。

 つまり。藤の屋敷へ行っておかしくなったあの長谷部が、戻って来ちまったんだ。
 あいつが、この本丸の長谷部に憑いちまった。

 気付いたらもう、放っとけねえだろう。
 俺は審神者の元へ出向き、かつてあった事件と俺の懸念について話した。
 
 この時の主は用心深い人だった。俺の話をしっかり受け止めて、早急に手を打ってくれたよ。

 俺たちは過去の例から分析した。
 長谷部の目を見たらダメだ。理屈は知らねえが、あの目で見られると消えちまうらしい。
 一人きりで向き合うのもダメだ。奴は言いくるめるのがうまい。必ず相手がてめえの目を見ずにはいられねえ展開に持ってくる。
 審神者は何が何でも近づけちゃいけねえ。審神者がいねえと、後の事態に歯止めが効かなくなったからな。

 その結果、長谷部を座敷牢に閉じ込めて審神者が結界を張ることになった。
 他の刀には「長谷部は悪いものに憑かれた。だから近付くな」って主が言っといたんだが。
 ……思いやりっていうもんは、どうしてああも裏目に出るかねえ。

 燭台切が消えた。
 審神者と俺の目を盗んで、長谷部の牢に近づいたらしい。結界が破られたって言うんで主と俺が駆けつけた時には、牢の前に本体が落ちていた。
 長谷部は牢の内側から、それを薄ら笑いで見つめていた。

 案の定、燭台切は錆び始めた。だが審神者がいたから、手入れをすればある程度錆びの進みを緩めることはできた。逆を言えば、止めることはできなかったわけだが。

 その間、審神者は事態のこれ以上の深刻化を防ぐために、また解決策を求めて走り回った。
 牢に結界を張り直し、本丸の刀共にきっちり説明して、一人では決して近付かないこと、二人ずつ当番を立てて見張ることを約束させた。
 燭台切の錆を取り除きながらも、敵を分析するため、情報収集に奮闘した。

 自分の感じた疑問、他の刀があげた疑問。関わらず片っ端から調べたようだったな。

 こうなるきっかけが俺や長谷部の語る藤の本丸にあるとするなるば、あの本丸を調べればいいのではないか。
 あの本丸はいつのものなのか。
 最初の主は誰か、歴代の所有者は?
 長谷部のやっていることは、きっと覗き込んだものを吸い込むという術の類だろう。
 この術はどういう仕組みなのか。解呪は可能なのか。

 しかし調査の末に分かったのは、どうしようもねえ現実だけだった。


 審神者は俺達に語った。

 曰く、あの本丸について調べた。
 過去の、俺と長谷部を最初に顕現させた主が例の本丸を燃やして死んだ事件の仔細を求めて政府の記録を漁り、当時の関係者を探して話を聞いてみたそうだ。

 分かったのは、あの本丸は政府に認知されていなかったものだということ。

 本丸番号が登録されていなかったそうだ。そして現在の審神者の国のどこにも、あの本丸らしきものは無かった。鍵が無かったら、また俺たちの婆さん審神者が解析してなかったら、その座標すら誰も知ることが無かっただろう物件だった。

 しかし鍵の形、相当古い本丸であるらしいこと、そして政府も認知しておらず、政府の実装未実装認定に関わらず多くの刀が納められていたということから、審神者はこの本丸が審神者局が定められる前にできたものではないか……それも、いわゆる『来し方の清庭』にあたるものじゃないかと考えたそうだ。

 ……顔色が変わったな。ほう。前の審神者も、あんたを適当に選んで騙して俺達を押し付けた、ってわけじゃあなかったってことか。

 そうだ。審神者局が設置される前にできあがっていたものならば、もう本物の神域に近い。
 現在の本丸の多くは、政府によって急拵えで作られた神域なんだろ? だから一つところに収まって神気を供給するのに適した付喪神と、それを見立てる審神者が必ずいねえと、神域として機能できねえ。
 だが審神者局設置前からあった本丸っていうのは、長い年月を経て、審神者や神なくとも自分で神気をまとって清らかさを保てるそうだな。この庭を見つけて所有できた奴は幸運なんだろう? なんせ、何もしなくとも神気が満ちて霊力が勝手に湧いてくるんだからな。古い神域が消えていく現代にとっちゃあ、桃源郷みてえなもんだと聞いた。

 けれど、あの藤の屋敷は違うだろ。

 …………。

 そう、あんたの想像通りだ。あの藤の屋敷は確かに神気を保つことができる。だがその保ち方は、ちと攻撃的だ。
 あの本丸は、てめえで霊力を補給する。てめえの手で飲みたい酒を掴み取って口に運ぶように、霊力を他所から供給できる。

 そのために、他所から人を呼ぶんだ。

 最初、倅審神者にこの本丸を譲った男が言っていた「この屋敷は寂しがりだ」っていうのは、多分このことだ。歴史修正主義者が寄ってくるのもやたら人や刀を魅せるのも、虫を食う花が虫を呼び寄せる原理と同じなんだろうよ。
 綺麗な庭もやたらと豪勢な屋敷も、人をふらふら寄ってこさせるための餌ってことさ。

 人喰い屋敷……いや、刀剣喰い屋敷か?
 何だっていいだろう。奴が、そこに住んだ者をてめえの肥やしにしちまう化け物だってことに変わりはねえ。

 だが化け物は、身体を失った。何故か。婆さんに燃やされちまったからだ。
 あの人は今となっては数少ねえ、審神者が戦を始める前から審神者となっていた人間だった。きっとてめえの倅の捕まった本丸が『来し方の清庭』だってことにも、行ってみて気付いたに違いねえ。
 きっと婆さんは、あの本丸の滅し方を知っていた。だがあの人ももう、往時ほどの力は無かった。おまけに最愛の倅が死んだ直後だ。
 化け物の身体を燃やすだけで、力尽きちまったんだろう。あるいは燃やしたところで、あの化け物に心を喰われちまったか。
 どちらかは知れねえが、結果化け物は身体を失いながらも、新しい器に乗り移ったんだ。

 おう、そうさ……長谷部だ。
 婆さんに連れ戻された、俺の本丸にいた長谷部だ。

 屋敷は長谷部に付け込んで身体を奪い取り、また自分を肥やすための糧を吸収するようになったんだ。長谷部の目を見つめた奴が吸い込まれちまうのは、奴の中にある屋敷に引きずり込まれたから。連れて行かれたからだ。
 奴らはそのまま、あの屋敷の住人としてあの屋敷を肥やす糧になるんだ。
 美しいあの本丸の、新しい獲物を呼び寄せるために咲いた花の肥料になるか。あるいは鮮やかな白壁の漆喰にされるか。そういうことなんだろうよ。

 人にも散々聞いて回ったがこんなものは前例がない。解呪の仕方も、見当がつかない。
 審神者は俺達にそう説明して、項垂れていた。

 だから審神者は、この長谷部は封じ続けるしかないのではという結論に達した。
 これ以上誰かが取り込まれないよう、人を近づけないようにする。結界を張り続ける。それしかできない。
 奴はそれを実行した。

 あいつは偉かったよ。くたびれた感じの、これといって目立つところのねえ審神者だったが、引き継いだだけの本丸で、あんなに刀剣や他の本丸を守るために尽力していた。
 燭台切が結局錆に飲まれて折れちまって、そうなった時も謝っていた。あの人はやれることをやったっていうのにな。
 それからもどの刀剣も、あの長谷部の犠牲にならないように気を配って……。
 頭が下がったよ。できるものなら代わってやりたかった。

 その審神者も、半年が経つ頃に死んだ。
 自殺だ。あの長谷部の牢、あいつを閉じ込めた結界の中で、舌を噛み切って事切れていた。
 一人であいつに結界を張り続けていたから、きっと侵食されちまったんだろう。あいつに引き込まれる寸前に、かろうじて自分の命をかけて最後に結界を張ったんだ。あいつを閉じ込めるために。

 連絡が途絶えたせい、だったのかね。審神者が死んですぐ、政府の連中が調査しに来た。
 さすがに今度ばかりは、調査して異常なしでも──そう、「異常なし」だ。連中、何も異常を発見できなかった──さすがにへし切長谷部を始末するしかないだろうという結論に至った。

 長谷部は持ち去られた。念のため本丸も閉鎖になり、刀剣男士も全て刀解されることになった。勿論俺もだ。


 ……。

 …………。


 ……ふふ、分かってるだろう。

 ここに俺がいるんだから、これで終わらなかったってことは、赤ん坊でも分かるだろ。要領が悪くてまったりしてて、出来の悪ぃ推理小説みてえだ。なあ?


 ……。


 はははっ、そうさ。
 俺は気付いたらまた顕現されていた。
 
 今度の主は女学生さ。まだ始めたてだったらしい、「やった、日本号だ!」なんてはしゃいでやがった。
 だがこっちはそれどころじゃねえ。
 記憶を遡った。残念なことに、あの藤の本丸に巻き込まれた俺の記憶だった。本霊の記憶はもちろん、婆さんに顕現されたところから政府のお役人に刀解されるまで、しっかり覚えてやがった。

 鍛刀部屋を飛び出した。
 俺の眼前に広がったその風景は……その本丸は、景趣の季節こそ違っていたが、俺の見知ったもの。
 あの、舌を噛み切って死んだ審神者の屋敷だった!

 俺はお嬢ちゃん審神者に詰め寄った。何であんたここで審神者やってんだ、ここは閉鎖になっていたはずだろう、って。
 お嬢ちゃんはきょとんとして答えた。

「ここ、閉鎖じゃないですよ? 人からもらいましたもん」

 背筋を、薄ら寒いものが走り抜けたね。

 嬢ちゃんの話によると、嬢ちゃんはどこぞの本丸の見習いだったらしいんだが、「親切な審神者のおじさんがこの本丸を譲ってくれた」ってことだった。

 冗談はやめてくれ、って思うだろ?
 はは、冗談じゃねえんだよ。お嬢ちゃんはどこまでも本気だったわ。本当に見える嘘つけるほどの、器用な嬢ちゃんでもなさそうだったしな。

 しかし、不幸中の幸いなのか。他のその時顕現されてた刀達に、俺のような記憶はないらしかった。だから前の本丸にいた連中は、無事本霊に帰れたんだろう。

 そしてこの時まだ、へし切長谷部は顕現されていなかった。

 俺はあの後の長谷部がどうなったか、気になった。だがこの嬢ちゃんに下手な好奇心を持たせるといけねえ。だから奴の辿った道を仮に三つとして、それぞれへの対策を考えた。

 一つは政府によって始末された奴が、本霊に無事帰れたというもの。そうであって欲しかったが、これは多分まずねえ。そうなってたら、俺だけがこんな記憶を持ったまま顕現されるわけがねえ。
 二つ目は奴がまだ、持ち去られたどこかで封じられているというもの。封じてる誰かには悪いが、頑張ってほしいと思った。奴も身体を一つところに縛られれば、他所に行って誰かを取り込むこともしねえだろ。
 三つ目は、刀解だか封印だかをされても、奴がここへ帰ってくるというもの。正直これが一番、可能性としては高い。

 奴が帰ってきた時、俺はどうしたらいいか。
 とにかくいち早く動きを封じて、嬢ちゃんに粘ってもらうしかねえ。

 俺は嬢ちゃんに拝み込んだ。頼むから、へし切長谷部が顕現したら俺に奴の教育をさせてくれ。あいつはちょっと危ない刀なんだ。

 顕現してくれるな、とは言えなかった。詳しい本当のところも話せなかった。奴が本当にここに帰ってくるか、確信が持てなかったからな。それから理由もなく同じ分霊を何度も刀解するようなことがあれば、本霊が審神者に障りを与えるかもしれねえ。下手な博打は打てなかった。

 嬢ちゃんはおおらかで素直な子だったから、了承してくれた。そんなに俺が警戒するっていうなら、長谷部っていうのが顕現した時のために、俺を近侍にしてすぐ有事に備えられるようにさせてもらってもいいかと、真面目に聞いてきた。俺は了承した。長谷部について間違った認識を与えてるようでちょっと罪悪感はあったが、これも仕方ねえ。これ以上余計な犠牲が出ないようにするためだ。てめえにそう言い聞かせた。

 俺は嬢ちゃんの近侍になった。演練に行くたびに「お前のところの日本号はやけに真面目だ」なんて言われてる声も聞こえたな。真面目なわけじゃあなかったさ。ただ、いつも気が休まらなかったってだけでよ。

 新しい刀が来るのが怖かった。次こそ長谷部じゃねえか。あの、俺の知ってる狂っちまった長谷部。長谷部の皮を被った、本丸の化け物が来るんじゃねえかって。
 いつあの藤の香りを纏う怪物がやってきて、こっちを見て薄ら笑いを浮かべるものかとビクビクしてた。正三位が情けねえよなぁ。でもそんなこと言ってられねえんだよ。
 てめえの親しかった奴が、何度もなんども蘇っては刀剣や審神者を喰らう──前に婆さんが見てた映画ってやつで、そういう化け物がいたな。ぞんび、とか言ったか。ぐちゃぐちゃしてる血塗れの、動く屍だろう。
 でもあいつらはまだいいじゃねえか。身体をふっとばせば、退治できるんだから。
 へし切長谷部は神だ。奴の中には、てめえで神気と霊力を養える古来からの神域があるんだ。それも人喰い神域だ。
 俗の穢れは、聖のしきたりをもって祓えばいい。じゃあ聖は、暴走する聖はどうやって追い払うんだ。畏み畏み候、鎮まり給えって言うのか。言って通じたら苦労しねえよ。通じたら、あいつも俺もこんな苦しい目に遭わなかっただろうよ。


 …………。

 ……。


 十一回目の鍛刀で、長谷部が来た。
 その長谷部は、普通の長谷部と違っていた。来たばっかりのへし切長谷部って言うのは、審神者を見るなり精一杯格好つけた笑み浮かべて、「へし切長谷部と申します」って。あんたのためなら何でもするぜって、売り込むんだろ。

 けどあの長谷部は、鍛刀部屋に佇む俺と審神者を見て……先に、俺の方に声をかけた。

「日本号か」

 呼びかける声が、やけに沈んでいた。その割にどこか親しげでぞんざいだった。
 その呼び方を、俺は覚えていた。

「長谷部なんだな? 俺と前にも一度、一緒に顕現された──」
「お前にそのような射殺す目で見られるへし切長谷部は、何人もの主を殺してきた俺しかいないだろう」

 長谷部は自虐的な笑みで応えた。
 瞳を覗き込んだが、屋敷は見えなかった。俺はてめえの動悸が激しくなるのがわかった。だが決してそれは喜びからじゃねえ、胸騒ぎだった。

「ここにいる俺は、生霊のようなものだ」

 久しぶりに話したまともな長谷部はそう前置いて、手短にあの屋敷に行った後のことを話した。

 あの屋敷に行ってから、長谷部たちはおかしくなったらしい。

 長谷部は最初、ずっと異様なまでの幸福を感じていた。現世での記憶から遠ざかって、ただ屋敷の美しさだけを見ていたせいだと思う、と振り返った。
 長谷部はそうだったが、他の五振の刀剣と倅審神者は違ったそうだ。放心しちまったか、或いはしきりに苛立っているような様子だったらしい。倅は特に情緒不安定だったそうだ。

 初めに、倅が屋敷を出て行こうとした蛍丸を刀解した。次は意見したにっかり青江。その次に勝手に動こうとした石切丸。次いで太郎太刀、次郎太刀。そして我に返った長谷部が止める間もなく、自身で首を吊って死んだ。

 それぞれ、転居してから一ヶ月、三ヶ月、五ヶ月、七ヶ月、九ヶ月、十一ヶ月後程度のことだったと長谷部は語った。
 あいつは暗い眼で言ったさ。

「屋敷のことを考えてる時、俺には周りで起きている事件が事件として感じられなかった。ただ桜が散る、葉が落ちるのと同じような……ただの景色の移り変わりのようにしか、思えなかったんだ」

 ひらひらと、欠けて落ちる刃は花弁と同じ。
 斃れる人も、朽ちた巨木と同じ。

 長谷部は倅の亡骸を前にして、やっと異常に気付いた。
 自分も他の者も、ここに来てからおかしくなってしまった。俄かに恐ろしくなって、倅を担いでこの屋敷を出ようとしたそうだ。
 藤棚を潜ろうとして、しかしそこで意識が途切れた。

「その後は、お前が見ていた通りだ。俺は主に頂いた身体をあの屋敷に乗っ取られてしまっただけでなく、主ご自身やその刀達を危険にさらして死なせてしまった。付喪神失格だ」

 言いながらあいつは笑った。
 泣いてるみてえな顔だった。

「お前が残っていてくれてよかった。頼む、俺を──」

 滅してくれ、と。
 あいつは言った。

 ……。

 …………。


 ……あいつはまだ、政府に身体を封印されたままだったらしい。屋敷はその身体を捨てて、前に封じられ、しかもかつての自分の欠片を溶かした炉のある──ああ、あの加州に砕かれて消えた長谷部の破片は、炉にくべられてたらしい。誰がやったんだろうな──あの、俺が三人の審神者に仕えた本丸から、再び世に出ようとしたようだった。
 だがあの屋敷が封印から抜け出して生きるためには、まず土台になってる俺の馴染みだった長谷部がいないといけねえからなあ。それで先に長谷部を寄越した、だからあの時だけ正気で、俺とあいつは話ができたんだ。

 俺はあいつを折った。

 それから、審神者に頼んだ。
 砕けたこいつと生きたままの俺を、炉にくべてくれってな。
 俺だって一応倶利伽羅龍を宿す身だ。それが封じるための柱になればという、その一心だった。

 嬢ちゃんは泣いて嫌がったが、最後には納得してくれた。
 俺達はもう一度死んだ。


 ……。

 …………。


 ……あーあ、疲れちまった。


 あんたも終わりのねえ長話を聞いて疲れただろ。ここまで語れば、あとは見当がつくよな?

 そうさ、繰り返してんだよ。
 色んな審神者の手を渡って、こいつを封じようとしたり滅ぼそうとしたり、そんなようなことをずっとずっと、な。

 俺達が顕現される先、必ず誰かが消える。顕現の仕組みはどうも、穢れの伝染と似たようなもんだな。主に同じ炉の火から生まれてきたり、これまでの主と親交のあった審神者の元に出てくることになってるようだ。

 屋敷もてめえが滅ぼされねえよう、考えてるんだろう。あれ以来、この身体の本当の持ち主の長谷部は出て来ねえ。それどころか、この長谷部は俺のことすらまともに認識しなくなった。
 だが同じ炉から最初に顕現されて一緒に溶けたこともある仲だからな。さすがの清庭様にも、俺を断ち切ることはできねえらしい。

 
 散々足掻いた。封じるのがダメなら内側からどうにかならねえかって、あえて屋敷に刀を送り込んでみたりな。しかしうまくいかねえ。結局これまでに十二人の審神者が、死ぬかまたは辞めるような結果になった。

 …………。

 ……そうだよ。その通りだ。
 
 あんたが十三人目の主になった。

 あんたは俺達を、どう扱ってくれるんだ?




 

……

〔音声再生終了〕




73 譲られ審神者

以上

質問あったら≫130くらいまでに頼む
多少すぎてもいいからばんばんくれ


74 審神者あらためVIP



75 審神者あらためVIP



76 審神者あらためVIP

≫73
以上じゃねーよふざけんな

おいお前ら、気持ちはわかるが安価かかってるから早く何か言え



77 審神者あらためVIP



78  審神者あらためVIP



79 審神者あらためVIP

や、これむりだって



80 審神者あらためVIP


つらいな…



81 審神者あらためVIP

まて
なんて言っていいのかわからん



82 審神者あらためVIP

なんでこんなことになったんだよ
政府何してたんだよ



83 審神者あらためVIP

言い表しようのない気持ちでいっぱいでちょっとショートしてる

なに どうしたらいい



84 審神者あらためVIP

や、一番辛いのは日本号で今多分一番不安なのは譲られなんだろうけど…
怖いし辛いし切ねえし不気味だし…やばいだろこれ…



85 審神者あらためVIP

日本号辛い…これは辛い……



86 審神者あらためVIP

昔の、顕現された頃のこと話してる日本号の声が優しすぎてほんとだめ

最初の審神者のことも長谷部のことも、本当に大事だったんだなっていうのが伝わってくる



87 審神者あらためVIP

この日本号疲れてるんだろうな
声がすげぇ枯れてるし、覇気がない



88 審神者あらためVIP

俺も思った
俺のところの日本号なんて酒焼けでいつも声ガラガラだけど、これはそういうのじゃなく本当に掠れてる



89 審神者あらためVIP

俺氏の長谷部、このスレ一緒に見てたんだけど今眉間に皺寄せて黙ってる
どしたって俺が聞いてもなんか唸っててはっきり答えなかったけど、寝転がって酒飲みながら音声だけ聞いてた日本号が「お前のせいじゃねえだろ」って声かけたら、それに長谷部が「それはそうだが、このスレッドの俺は怠慢だな。何人もの主に迷惑をかけるとは」ってやっとまともな答え返した

なに黒田エスパーなの



90 審神者あらためVIP

日本号と長谷部ってそういうところあるよな
基本的に会話凸凹なんだけど、たまに変な通じ合い方する



91 審神者あらためVIP

そうそう

うちの長谷部と日本号、食事の時に目玉焼き食ってる長谷部がアレ(醤油)を取れっていうと日本号はソース渡すし、日本号がそれ(洗濯物畳み)やっとけって言うと長谷部は洗濯物を干すし、二人三脚は見てた厚の腹筋が重傷になるほど下手くそなんだけど、戦術立てる時は方針まとまるのすげー速い上に要領いいし、二人が買い物仕切る時もコスパがいい(ただし酒はこっちが示した最低金額上限まで買う)



92 審神者あらためVIP

黒田だなwww



93 審神者あらためVIP

まじ九州男児wwwww



94 審神者あらためVIP

それに博多が入るともっとすげえぞ
ザ・黒田ワールドが発動して黒田以外の世界が五秒遅れてるように感じられるって獅子王が言ってた


95 審神者あらためVIP

≫94
お前のところのCCOジョジョ読者かよwww



96 審神者あらためVIP

うちは博多と長谷部の連携がすごいぞ
経理全部この二人に任せてるんだけど、仕事中
「あれ」「ん」「頼む」「任しとき」ってほぼ単語で会話してるのに意思疎通ができてる

あと二振揃って日本号おいちゃんを使い走るのがうますぎて怖い
正三位とは…



97 審神者あらためVIP

なあ、せっかく黒田のいい話してるところにすまん

俺の長谷部もこのスレ見てたんだけど、音声の再生が終わるなり
「この俺はもうダメですね。本霊から切り離されて自我が乗っ取られてます」
って言ってる



98 審神者あらためVIP

≫97
すまん、その話の方が譲られに役立ちそうだ
詳しく頼む



99 審神者あらためVIP

俺のとこも
「この俺は輪郭こそかろうじてへし切長谷部ではありますが、中身は別ですね。まともな交渉は難しいでしょう」って



100 審神者あらためVIP

≫98
「この俺は何かに憑かれています。そしてそのような異物のついた分霊を、本霊は受け入れません。だからこの分霊は、自分と主従関係を結んだ主のところにしか行けないんです。そのせいで鍛刀する度に、この同じ憑かれた俺が帰ってくるのでしょう。
また、元からいた別の俺が次第にこの憑かれた俺になっていくという現象ですが、おそらくこれは後者の俺が新しい俺に取り憑いて食ってしまっているのではないかと。この俺は穢れと同じようなもの。その主従関係を結んだ主と本丸に憑いています。だから新しい俺がこの本丸で暮らしていけば、主のお力に馴染んでいくにつれてこの取り憑いた俺の力も伝わっていき、じわじわと汚染され、吸収されてしまうということになるのだと思いますが」



101 審神者あらためVIP

うわ



102 審神者あらためVIP

つまりどうあがいても…ってことかよ



103 審神者あらためVIP

祓えないのか?



104 審神者あらためVIP

≫103
俺は≫99の長谷部の審神者だが、長谷部の話によると
「この俺に憑いているものは、自我が統一されきっていない巨大な思念体であるように思われます。この録音された俺の声が不規則に変わるのがその根拠です。従って、一度や二度祓っただけでなくなるものでもなさそうであると考えられます。さらにこの俺は既に石切丸や神剣を吸収したと言っています。これはつまり、彼らの太刀では祓えないということなのでは?」だと


105 審神者あらためVIP

あー…そうなのか



106 審神者あらためVIP

おいまじかよ



107 審神者あらためVIP

俺の日本号も「こりゃまずいな。よりによって神の中を隠れ家にされたんじゃあ、祓いようがねえ」と



108 審神者あらためVIP

うちの石切丸はこの音声再生し出した途端スパンてふすま開けて
「君、また何か邪なものに手をつけたね!?まったく」
って文句言いかけたけど日本号の声聞いた途端
「…これは…厄介だね」
って言ったきり黙り込んでる



109 審神者あらためVIP

こっちは次郎ちゃんがそれ
長谷部が暴れるところから一緒に聞いてたんだけど、すげー険しい顔して「日本号も長谷部も嘘を吐いてるわけじゃないね。日本号だって倶利伽羅龍の槍のはずだけど…いや、ただの穢れじゃないから祓えないのか」だと


110 審神者あらためVIP

≫108
おまえ前科なにしたの



111 審神者あらためVIP

≫110
マヤ族のダイヤのネックレスっていうオーパーツ買ったと思ったら遡行軍の目ん玉でできた数珠だった


112 審神者あらためVIP

≫111
よく生きてられたな



113審神者あらためVIP

≫109
次郎さんそれ詳しく



114審神者あらためVIP

≫113
次郎ちゃん曰く「長谷部に憑いてるものは穢れみたいに伝染するもののようだが、穢れではない」んだと
「何かが間違いなく長谷部に取り憑いてる。日本号はそれに巻き込まれて、障りが出てるって状態かな。でもはっきりした悪意は感じられないんだよねぇ。あ、途中で長谷部が出してた知らない男の声は本物の別人の声みたいだよ。これはもう亡くなってるね」って



115 審神者あらためVIP

神剣の表現って分かるような分からないようなだよな



116 審神者あらためVIP

神剣でも正体掴めないとか…やばくないか?



117 審神者あらためVIP

うちの蛍も似たようなこと言ってる
もうちょっと分かりやすくって言ったら「そうとしか言いようないんだよ」って渋い顔された



118 審神者あらためVIP

悪意感じられないってマジかよ



119 審神者あらためVIP

て言うか、譲られの前に日本号達預かってた人、もう亡くなってるのか…
つまり、今は長谷部の中に?



120 審神者あらためVIP

≫114
長谷部自身については?
さっき別の長谷部が自我をどうのって言ってたけど、まだ完全に飲まれたわけではないんだろ?



121 審神者あらためVIP

≫120
「同調してる」ってさ
その長谷部に憑いてるものと長谷部が一体化してるんだと



122 審神者あらためVIP

じゃあ長谷部は霊媒みたいな感じなのか?

憑いてるのは例の藤の本丸?



123 審神者あらためVIP

しかし本丸って意志あるのか?



124 審神者あらためVIP

その前にこの音声で言ってるコシカタノサニワ?って何?



125 審神者あらためVIP

こういうケースは初めて聞いたから分からんな

それこそ譲られに聞いてみるべきだろ



126 審神者あらためVIP

コシカタノサニワは聞き覚えねえな
人名か?



127 審神者あらためVIP

そうだ安価だ安価
お前ら考えろ、聞きまくれ
その方がアイディアも出るし考えもまとまる



128 審神者あらためVIP

≫124
まじかよ 知らないのか
今は安価だから言わないけど、知っとくといいぜ

ってことで俺からも
譲られはこの「コシカタノサニワ」を知ってるのか?



129 審神者あらためVIP

今譲られはどうしてる?
まだ誰か消えたりしてないか?



130 審神者あらためVIP

日本号と長谷部は今どうしてる?
まだ牢なのか?



131 審神者あらためVIP

問題の本丸の座標ってわかるか?
そこに行くことはできないのか?



132 審神者あらためVIP

その本丸に関わってきた審神者達って、譲られが調べてみても分からないか?もしわかれば、その人達に話を聞くことはできないか?
最初にこの本丸持ってた結婚するから引退したっていう人とか、詳しそうだろ
データベースで照会かければ連絡取れるんじゃないのか?



133 審神者あらためVIP

政府に連絡したか?



134 審神者あらためVIP

譲られ、神剣はパッパ以外いるの?



135 審神者あらためVIP

その前に譲られ、今いるか?
無理すんなよ。ここに顔出すのは書き込める時でいいから



136 譲られ審神者

お前らありがとな
いるよ、今はひと段落つけて書き込んだり刀剣達の様子見に行くくらいしかできないから大丈夫だ

説明ややこしくなるから質問された順番に答えられなそうだけど、少しずつ答えるから待っててくれ



137 譲られ審神者

質問まとめ

・コシカタノサニワとは何か
・今俺ら(俺、日本号、長谷部)はどうしてるか
・問題の本丸の座標は分かるか
・問題の本丸に関わってきた人間と連絡は取れるか
・政府に連絡したか
・俺のところにいる神剣


まず今俺らがどうしてるかから

俺は日本号から話を聞いた後、牢屋の中に早急に長谷部を封じるための陣を組んだ。それから日本号が牢のそばで、基本的に寝ずの番してくれてる。
日本号曰く「こいつ、今じゃあ俺のことを基本的に認識しないようにしてるみたいだから、俺が牢の入り口にいれば出て行こうとすることはないと思うぜ」だって

ただ日本号が倒れたらどうしようもないから、時間を決めてうちの刀剣二振に見張りしてもらってる。その間、日本号には隣の部屋で寝てもらうようにしてる。今日本号は寝てて、代わりに長曾根と厚に見張りしてもらってるところ。たまに石切やにっかりにも様子を見てもらってる
ちなみにうちにはお祓いっぽいことができるのは石切とにっかりと、あと一応愛染と大倶利伽羅しかいない


ただ、もう一回長谷部に脱走されてるんだよなあ



138 審神者あらためVIP

おい待て


139 審神者あらためVIP

それまずいだろ


140 審神者あらためVIP

早く言えよ



141 譲られ審神者

≫138 ≫139 ≫140
ごめん、もう一応終わっちまったことだから言ってなかった

昨日の昼間、長谷部が脱走したんだ
俺と日本号で、近侍の歌仙と、お祓いできそうメンバーに長谷部の話をしてた時に隙を突かれた

これまでの行動パターンから、長谷部は審神者か本丸中心メンバーか知り合いか、または何か抱え込みやすいタイプの刀剣のところに行って取り込もうとするって日本号から聞いてたから分担して見当つけて探しに行った

当たりだった
畑当番してた小夜の所にいた。あと少しで小夜が取り込まれるところだったらしい



142 審神者あらためVIP

っぶねええええええ



143 審神者あらためVIP

小夜ちん!



144 審神者あらためVIP

確かに狙いどころだよな
畑はなかなか人来ないから、長話して取り込むには絶好の場所だろ



145 譲られ審神者

ただ小夜は長谷部の話を全部聞いて、その眼の中に例の本丸の姿も見ちゃってるらしいんだよ…
今は平気そうな様子だけど、ふとした拍子に引き寄せられないか心配

小夜の件もあったから、昨日のうちに本丸のメンバー全員集めて事の次第について話した
とりあえず長谷部は交代で見張ること、一人で長谷部と話をしないこと、何か怪しい様子があったら俺や歌仙、石切などに話すこと、って禁則事項を確認しておいた

小夜もまだ無事
宗三と歌仙がしっかりついてくれてるから大丈夫だろう
「小夜にこれ以上何かあったらあなたを末代まで祟ります」「そうだな、即刻首を刎ねなければならないな」って言ってるから、頼もしい限りだよなうん


146 審神者あらためVIP

≫145
譲られ、また宗三との縁強くなるんじゃ…?


147 譲られ審神者

≫146
言うな
俺もそれ心配してるところだから言うな…!



148 審神者あらためVIP

お小夜無事でよかったぁぁぁ



149 譲られ審神者

次≫問題の本丸の座標は分かるか

分かってるし行ってきたけど役には立たなそう
長方形の焼け野原があるだけだから

焼け落ちてから五年経ってるんだけど、たまに風が吹くと焦げ臭い匂いがする気がした
あとどこからかさらさらって何かがなびく音とか、藤の香りも

ただ、何もない空間だけが残ってるってやっぱりきな臭いだろ。ほぼ放置らしいのに、雑草の一本も生えてなかったってのも変だ

ここにあった本丸は物質としては無くなったけど、残ってるんだろうな



150 審神者あらためVIP

こわ…



151 審神者あらためVIP

譲られ行動力すごいな



152 審神者あらためVIP

今は政府に管理されてるだろうに新しい本丸を建てようとしないなんて、変だな



153 譲られ審神者

次≫政府に連絡したか

一応したけどあてにはしてない
日本号の話にもあったけど認知されてない本丸だし、もう長谷部の処理についても一度失敗してるっぽいからなあ
異常なしならば動かないし動けないっていうのが、お役所スタイルの基本だし

でもあわよくば助けてくれないかなーって
(多分無理)


次≫コシカタノサニワとは何か

「来し方の清庭」な
俺も前の仕事の都合で知ってなくちゃいけなかったから知ってるよ

これが一番お前らに知っといてもらいたい件だな
これを知ってる知ってないで、この件の理解が随分変わる


来し方の清庭は、西暦2205年よりずっと前から存在する、俺たちで言うところの「本丸」だ
ただし俺たちみたいな雇われ審神者の住む本丸とは違って、昔から筋金入りの神職として暮らしてきた原始の審神者たちが神々と語らってきた、本物の神域だ

そもそも今現在政府によって定められた審神者の制度っていうのは、この古来からいた審神者の暮らしぶりのコピーなんだよ

政府が歴史是正省を立ち上げて審神者局ができる前から、審神者はいただろ?ずっと昔、それこそ天皇が大王って呼ばれてたような頃にはもう、審神者って言葉はあった

政府指定の審神者養成機関で「修身館」ってあるよな。そこでは特に公の歴史としては教えないけど、そもそも歴史是正省に審神者局が置かれるようになったのは、この古くから細々と生きてきた原始の審神者の力に注目したからだ

審神者は時の降り積もった神に自覚を持たせ、現世に下ろし、心を通わすことができる
時を渡ってやってくる得体の知れない連中をさばくには、いつの時代いかなる空間にも存在できる神って存在に活躍してもらうのがちょうどいいだろ
人間には付喪神っていう、戦ってもらうのに最適な存在もいる
それを利用すればいい

そう考えた政府のお偉いさんが審神者連中と取引して審神者を研究し、その技と才能を見抜く方法、力を伸ばす方法を手に入れて、審神者を育成することができるようになったんだ


だが所詮は審神者制度なんて、すごく綺麗な原画をそれなりに綺麗に大量印刷できることが利点っていうだけのコピー機と似たようなものだ
原画の綺麗さにはかなわない

2205年以前の天然産審神者は、2205年以降の政府産審神者に比べて断然力が強い
こっちはにわか公務員兼神職、あっちは筋金入りの神職だから当たり前なんだけど


だからそういった天然審神者たちが使ってた古い本丸は、俺たちの急拵えの本丸に比べて質が良くて、神気と霊力に満ち溢れてて審神者をいつも生活させずとも安定した神域になっている
「来し方の清庭」はこういった神域に対して憧れた人々が付けた呼び名なんだ

だが来し方の清庭は正真正銘の神域だから、逆に言うととんでもないことが普通に起こりかねない、あの世みたいな場所なんだよなー

今回問題になってる本丸のことを俺たちは藤の本丸とか藤屋敷とかって呼ぶことにしてるんだけど、これなんてまさにそうだと思う

本丸は霊界に近い場所だから、本来の時の流れや現世の法則から遠いところにある
その分審神者や刀剣たちの内的世界と密接に結びついてるからその変化によって景趣も好き勝手変えることができるし勝手に変わることもあるわけだけど、これがいい影響を及ぼすこともあれば悪い影響を及ぼすこともあるだろ?
俺が前に20世紀のホラー映画見た時なんて、急に襖や障子に斧で開けられたみたいな穴が開いて、そこからすごい笑顔の男の顔が覗くっていう現象があちこちでしばらく続いたよ

俺らならまだにわか神職だからそういう可愛い程度で済むけど、本物の神職が住んでた清庭だとそうはいかないんだよな

多分、この藤のお屋敷ではこれまでにこの場所の性質を変えてしまうような何かがあったんだ
その出来事がこの、人喰いの性質を作っちゃったんだと思う



154 審神者あらためVIP



155 審神者あらためVIP



156 審神者あらためVIP



157 審神者あらためVIP

…ここ何スレ?
審神者豆知識スレ?



158 審神者あらためVIP

オカ板だよな?
譲られ異様に詳しくないか?



159 審神者あらためVIP

譲られ何なの
本当に審神者なの?



160 譲られ審神者

≫159
普通に審神者だよ!!失礼な!!!



161 審神者あらためVIP

譲られってもしかして、
もと審神者局勤め?



162 審神者あらためVIP

え、役人?



163 審神者あらためVIP

役人が審神者になんてなれたっけ?



164 審神者あらためVIP

≫163
あんまり見ないけど最近は増えてきただろ
特に七年前にあんまりに過労死不審死する審神者が多くてブチ切れた審神者会が審神者局にスト起こしてから導入された、審神者局審神者及び見習い雇用制度ができてから、毎年ちょっとずつ希望者募って試験パスした奴を採ってるよな



165 審神者あらためVIP

役人ってこんなに審神者のこと詳しいか?



166審神者あらためVIP

≫165
役人だからこそだろ

あと譲られはやけに審神者局に詳しいみたいだったから、そんな気がしたんだが



167譲られ審神者

≫161
オサッシノトオリデス

だが頼むからお前ら解散するなよ!!?
頼むから!!!俺と政府と役人は嫌いでいいから日本号と長谷部と俺の刀は助けてくれ!!!

俺もともと審神者志望して役人になった落第役人だから!捨て犬みたいなもんだから!大目に見て!!!!



168 審神者あらためVIP

譲られの下から必死に訴えるスタイル、俺嫌いじゃないぜww



169 審神者あらためVIP

別に解散せんわ
おいちゃんには普段晩酌で世話になってるからな!



170 審神者あらためVIP

天は長谷部を愛する者の下に人を造らず、長谷部を愛する者の上に長谷部を作るのです



171 審神者あらためVIP

≫170
後光が見える



172 審神者あらためVIP

≫171
もうちょっとキリストっぽい言い方で頼む



173 審神者あらためVIP

≫171
光あれ



174 審神者あらためVIP

≫171
光あれ!



175 審神者あらためVIP

≫173≫174
RPGかよwww



176 審神者あらためVIP

≫167
譲られー
給料上げてくれって頼んどいて



177 譲られ審神者

≫176
無理に決まってるだろ

俺審神者局技術課術式係だったんだぞ



178 審神者あらためVIP

うわ



179 審神者あらためVIP

一番アレなとこですやん



180 審神者あらためVIP

日陰



181 譲られ審神者

≫180
うるせー!

毎日運営係に急かされ機械システム係にいびられる日々だった根暗部署で悪いか!!術式大事だろ!!?イモリの黒焼き齧ってて何が悪い!!



182 審神者あらためVIP

イモリwww



183 審神者あらためVIP

今時そんなもん齧ってる人間いたんかwwww



184 譲られ審神者

俺霊力少ないからなー(白目)

術式儀式システム好きじゃないとオススメできない部署ですわ
俺はそういうのしか取り柄ないし、いい先輩にも恵まれたから別に辛くなかったけど、セブンイレブン当たり前なところはあったからあんまり就職勧められない気をつけたほうがいい



185 審神者あらためVIP

セブンイレブン…
7時出勤23時退勤…



186 審神者あらためVIP

いい気分…



187 譲られ審神者

≫186
誰が言えとww


話もとに戻す

そんなわけで何が起こるか分からない怖い本丸がうちに来ちまったわけだけど、とりあえず刀剣被害ゼロを目指しながら様子見てうまくいけそうなら封印目指すって感じかな

うまい封印の仕方知ってる奴いたら教えてくれ



188 審神者あらためVIP

譲られまじ強メンタル



189 審神者あらためVIP

こいつなら大丈夫なんじゃないかな
(こんなに霊的方面で本丸の仕組みについて語ってくるやつ初めて見た)



190 審神者あらためVIP

イモリの黒焼きだしな



191譲られ審神者

≫190
関係ねぇわ!

いやでも正直な話、刀剣は守れても俺はダメかもしれん
そうなったらすまんがどこかで食い止めてくれ
俺もできる限りのヒントは残す

長谷部と日本号がここに来てからずっと、部屋の中に甘ったるい匂いがしてるんだよ
藤の花の匂いだ
俺の庭、藤なんてないのに



192 審神者あらためVIP

≫191
いやいやいや譲られしっかりしろ!



193 審神者あらためVIP

お前なら大丈夫だろ、知識もあるんだから



194 譲られ審神者

≫193
知識しかないんだよ
役人経由で審神者目指したのも、普通に審神者養成学校から審神者になるには霊力が少なすぎたからだ
コネもないし

すまん、あんまりこういうの言いたくないんだけど色々じわじわ効いてきてて…

さっきの音声聞いただろ?
長谷部が最初に暴れる前に、ギイィ、って戸が開く音がしただろ

あれ、何で出来てる扉の音に聞こえた?



195 審神者あらためVIP

え?
金属だろ



196 審神者あらためVIP




197 譲られ審神者

だよな

でもうちの牢、木製だから



198 審神者あらためVIP



199 審神者あらためVIP



200 審神者あらためVIP

譲られは長谷部たちを入れたのは座敷牢だって言っただろ
座敷牢はあくまで軟禁用、あと長期的に結界を張るならば金属より木だ
金属ならば強い魔除けの結界が張れるが、その分だいぶ霊力が喰われるし、何より同じ金属性の刀剣男士を閉じ込めるには向かない

木材は万人に負担をかけない
だから最近の本丸の座敷牢は木製の格子戸が多い



201 譲られ審神者

あの音、俺が実際日本号と話してた時聞こえなかったし
日本号もそんな音聞こえてねえって言うし

あれ、どこの扉の音なんだよ



202 審神者あらためVIP

呑気なコメントしててすまんかった
思ってたよりやばいな…



203 審神者あらためVIP

音ならばまだ譲られに害を加える気はないんだろうから、負けるなよ
多分あっちは譲られの気持ちが折れるのを待ってるからな



204 譲られ審神者

≫202
いや気にしないでくれ
和ませてって言ったの俺だし
正直結構助かってる
刀剣たちは頼りになるけど、それでも同じ人間と会話できると落ち着く

まだ大丈夫だ
まだな


すまん脇にそれた
質問続き行くわ

次≫問題の本丸に関わってきた人間と連絡は取れるか

日本号の言うお袋さん審神者を運んでいった人達の一部とは連絡が取れた
て言うかその人達もそうだし、お袋さん審神者もその息子さんも俺の知り合いだった
お袋さん有名だから、お前らも名前くらいは知ってるかもな

あと、お袋さんを除いた長谷部と日本号の主だった十一人の審神者は、一人を除いてみんな亡くなってる
その生き残った一人は、さっき日本号の話に出てた女の子審神者な

詳しくは言えないけど、もう辞めてて今は審神者会でサポートに回ってるらしい

で、連絡取れる人とは全員連絡とってみたけど、決定的に役立ちそうな情報はなかった



205 審神者あらためVIP

役立つ情報なし、か
きついな



206 審神者あらためVIP

これで退けられたみたいな攻略法があるとよかったんだけど



207 審神者あらためVIP

ちなみに婆さん審神者なんて名前なんだ?
何か手がかりになるかもしれないし、譲られの言う有名が本当に有名か確かめてやるよ



208 審神者あらためVIP

譲られ、めちゃニッチなイメージあるからな



209 譲られ審神者

まだスレ一個分も話しきってないのにお前らの俺のイメージどうなってんのww

安心しろ、間違いなく有名だ
お袋さんの審神者名は柘榴
赤金の母堂って、聞いたことないか?



210 審神者あらためVIP



211 審神者あらためVIP



212 審神者あらためVIP



213 審神者あらためVIP



214 審神者あらためVIP



215 審神者あらためVIP



216 審神者あらためVIP

ウソデスヤン



217 審神者あらためVIP



218 審神者あらためVIP



219 審神者あらためVIP



220 譲られ審神者

いや、本当に



221 審神者あらためVIP

なんでそんっおまっ

早く言えよバカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ



222 審神者あらためVIP

思いっきり婆さんって言っちゃっただろうが!
ふざけんな罠だ!俺は悪くないィィィ!!



223 審神者あらためVIP

やだアカガネキとかレジェンドオブ審神者ですやん


224 審神者あらためVIP

日本号早く言ってそれ!!!
まさか、ネキの槍だったなんて…!!!



225 審神者あらためVIP

《新参のおまえらへ気持ちを落ち着けたい俺からの情報整理コーナー》
⚫︎アカガネキとは?
審神者名「柘榴」。通称「赤金の母堂」「アカガネェさん」「赤金の姉御」「心臓の女王(ネット限定)」姉貴、転じてネキとも。
審神者会を創設した中心メンバーの一人で我らが誇る特攻隊長。政府が審神者局を設ける前から審神者として活動し、政府が歴史遡行軍との初戦の参加者を募るにあたって最初に志願した。自身が戦場に立つことこそないが相当腕っ節も霊力も強い。危険な任務には率先して取り組むものの、刀剣を折ったことはない。
呼び名は、彼女の部隊がいつも戦から帰ってくる度、着衣に一切の乱れがなくその刃だけが返り血で真紅に染まっていたことに由来する。

コンコン動画で赤金の母堂で検索かけてみろ
ご本人様(袴のオールドビューティ薙刀装備)による刀剣への実技指導が見られる



226 譲られ審神者

さっすがすごい有名人



227 審神者あらためVIP

≫226
お前本当になんなんだよ!!
すごいどころじゃねーわ!!!



228 審神者あらためVIP

五年前ネキが亡くなったと聞いて、全国のアカガネキファンがどれだけ泣いたか…


まじかよ
そうだこのスレのさっきの話



229 審神者あらためVIP

あ…そうか
それでお葬式の棺閉まってたのか…



230 譲られ審神者

≫228
そうだよ
日本号と長谷部を最初に顕現させた主は母堂だった



231 審神者あらためVIP

そうか
赤金の姐さん、自分の刀を守ろうとして亡くなったのか…



232 審神者あらためVIP

くそ
なんだろう、譲られとも赤金さんとも面識あったわけでもないのに悔しい



233 審神者あらためVIP

赤金さんがよく連れてた長谷部、この話の長谷部のことなんだよな



234 審神者あらためVIP

姐さんって言えば長谷部だったもんな
若い頃からずっと傍にいた



235 審神者あらためVIP

そう言えば赤金さんって刀剣男士のテスト実装によく協力してたけど、日本号は赤金さんが最後に協力したテスト実装の槍だったのか



236 譲られ審神者

≫235
そういうこと
テストで様子見ながらだから、育成にもすごく時間かかったって


息子さんにはまだ術式係に勤めてた時にお世話になってた
若いのに審神者会の中堅役職についてて、審神者局と審神者会の仲立ちみたいなことをやってくれてた
蘇芳さんっていう審神者名で、ずいぶん助けてもらったんだよ

俺が仕事でヘマ思想になった時に職員でもないのに助けてくれて、その後も何かと気にかけてくれた

口数少なくてあんまり笑わなかったけど、
審神者になりたいって言ったら具体的なアドバイスくれたし、ご飯おごってくれたし、愚痴にも付き合ってくれて、差し入れくれたこともあって
でも俺が審神者になるための実技試験に向けて勉強してた頃に連絡取れなくなって、受かってから会いに行こうとしたら、亡くなってたことを知ったんだ

あの時は亡くなった理由もわからなくてただただショックだったんだけど、まさか今になって分かるなんてな

世の中、何があるのか分からないよな



237 審神者あらためVIP

その人多分知ってる
審神者会の会計やってた人

親切だよね
あとイケメン



238 審神者あらためVIP

俺も知ってる
審神者会本部に出かけたらフロントにいて
クールイケメン眼鏡くそって思ったけど
階段で転んで顔面打ち付けて鼻血出したジジイに躊躇いなく自分のハンカチ貸しておぶって救護室連れてってるの見て完全に負けた



239  審神者あらためVIP

≫238
何それ見たかった



240 審神者あらためVIP

譲られ、大丈夫か?
分かってると思うが、あんまり感傷的になって長谷部に取り入られるようなことがないようにしろ

お前が取り込まれたら、刀剣たちも巻き添えだからな



241 譲られ審神者

分かってる

日本号の話から考えるに、長谷部の中にある屋敷は親しい人を利用して外側の人間を釣り上げるんだ
赤金さんも蘇芳さんも利用されるかもしれない
それから俺に日本号たちを託した先輩も…

一番何か知っていそうで怪しいのは、最初の蘇芳さんにこの話を持ちかけた人だ
日本号にも聞いてみたけど、この人の実在を確認できた審神者は誰もいなかったらしい
俺も似た人がいないか調べてみたけど全く



242 審神者あらためVIP



243 審神者あらためVIP

譲られどうした



244 審神者あらためVIP

≫241
おい何かあったのか



245 譲られ審神者

待て



246 審神者あらためVIP

後でもいいからかならず返事くれ



247 審神者あらためVIP
 
≫245
譲られ!!



248 譲られ審神者

すまん落ちる
悠長なこと言ってられなくなった


博多が消えた
長谷部の前に本体が落ちてた


始まったんだ