貴方はDQで『制限時間はあと一分』をお題にして140文字SSを書いてください。

「早く、早くするんだ……!」
 レックはぜえぜえと荒い息で急かす。言われなくたって全力で走ってる。後ろから追ってくる罵声、怒声、そして空の酒瓶や誰かの靴や道端に落ちていたのだろうゴミたち。こんなものが絶えず背中を狙ってくる状態で、焦らない奴がいたら見てみたい。
「早くしねえとっ……俺が本物の歌姫アンナじゃねえってバレちまう!」
「最初っからバレてるわアホ!」
 アレンは一蹴した。ああ、このバカにモシャスをかけて歌姫の真似事をさせようなんて言い出したのは誰だっただろう。いくらモシャスで外見を誤魔化せても、この大味な性格の男がかの伝説的歌姫になりきれるわけがなかった。
「アーサーの奴、どこ行きやがった! 歌姫を連れてくるんじゃなかったのかよ!?」
「アレンアレン見てこれヤバイ!」
 隣を走る見た目は歌姫、中身は脳足りんが悲鳴を上げ、首にかけた懐中時計を示す。アレンの息が刹那止まった。
 モシャスが完全に解けるまで、あと五十九秒!




20160724