──鏡よ鏡よ鏡さん……何を映してもらいますか。
「おお、灰かぶりだな。分かるぞ。鏡よ鏡よ鏡さん、今の俺の改善点を教えてくれ。そうだな、出来れば刺突の後のモーションについて頼む」
「これそういうもんじゃないと思いますよ……俺? 今日一番良かった戦いを教えて欲しい」
「美しいものに決まってるよね。鏡よ鏡、世界で一番美しいのは──俺に決まってるんだよなー。ああ、俺の顔を映してくれれば、どんな鏡も魔法の鏡だね」
「……記憶が飛んだんだけど、何だったっけ。ああそう。鏡よ鏡よ鏡さん、世界で一番自信過剰な男の自尊心を恨まれない程度に吹っ飛ばす方法を教えて頂戴」
「鏡よ鏡、俺の一番憎たらしいと思ってる奴の顔に鼻眼鏡つけたところを映してくれ。やべえ絶対笑える。今度付けてこよ」
「鏡さん、鏡さん。私が手にかけるべきは誰?」
「何を映して貰えばいいんだろう。今が満ち足りていて、分からないな」
「鏡よ、鏡! 世界で一番夢見る人に会いたいなぁ!」
「うーん。精霊様のお顔を……特に、水の精霊様の息吹を教えてください。潮の流れが見たいです。そういうの、駄目かなあ?」
「僕の両親が一番幸せだった頃を見せて欲しい」
「鏡さん、お願いだから僕の角膜と貴方を交換──いや、そうやって魔法のアイテムに頼ることなく世界を探求することが僕の使命のはず。安易な方法に頼ってはなりませんね」
「鏡さん、鏡さん、今一番楽しんでる人を映してください!」