2018年

2月

18日

診断ネタ

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2017年

12月

31日

ifWE

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2017年

10月

01日

家守①

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2017年

7月

29日

【D】舞台袖の向こうから【Ⅺ】



・Ⅺの旅立ちまでのネタバレ(微量)
・台本形式の主人公クロスオーバー
が含まれます。

ご注意下さい。


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2017年

3月

22日

「淑女」と書きたいもの

拍手ありがとうございます!嬉しいな!

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2017年

1月

29日

【D】ある淑女の日記⑧


拍手ありがとうございます!
嬉しいです!ありがとうございます!




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2017年

1月

25日

【D】徒然話+小話


拍手ありがとうございまーす。
なんだか急にとてもいっぱいもらえてびっくりしました。ありがとうございまーす、嬉しいでーす。



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2016年

11月

28日

【刀】末世パロ⑦

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2016年

11月

27日

【刀】末世パロ⑥

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2016年

11月

23日

【刀】末世パロ⑤

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2016年

11月

21日

【刀】末世パロ④

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2016年

11月

16日

【刀】末世パロ③

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2016年

11月

14日

【刀】末世パロ②

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2016年

11月

13日

【刀】末世パロ①

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2016年

10月

17日

三槍阿保話【腐】FINAL

※にほ!へし!腐!

 

 

 

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2016年

10月

10日

三槍阿呆話【腐】⑦

※腐った刀ネタがあらわれた! にほ! へし! 注意!




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2016年

10月

08日

三槍阿呆話【腐】⑥

※例の如く腐ってる!にほへし!
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2016年

10月

03日

三槍阿保話【腐】⑤

※刀です。腐です。にほへしです。ご注意。今回にほおてにほとんっぽいの(CPではない)もあるのでなおさらご注意。

 

 

 

 

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2016年

9月

25日

三槍阿保話【腐】④

※腐ってます。にほへし。

 

 

 

 

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2016年

9月

24日

三槍阿保話【腐】③

※毎度の如く刀ネタ腐ってます。にほへし注意。

 

 

 

 

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2016年

9月

22日

三槍阿保話【腐】②

※腐です。にほへしです。

 

 

 

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2016年

9月

20日

三槍阿保話【腐】①

※刀ネタ腐話です。にほへしです。



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2016年

8月

28日

HQでⅥパロ-3話③

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2016年

8月

08日

HQでⅥパロ-3話②

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2016年

7月

19日

HQでⅥパロ-3話①

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2016年

5月

01日

HQでⅥパロ-2話⑧

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2016年

4月

30日

HQでⅥパロ-2話⑦

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2016年

4月

17日

HQでⅥパロ-2話⑥

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2016年

4月

10日

HQでⅥパロ-2話⑤

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2016年

4月

09日

HQでⅥパロ-2話④

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2016年

4月

03日

HQでⅥパロ-2話③

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2016年

4月

02日

HQでⅥパロ-2話②

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2016年

3月

30日

HQでⅥパロ-2話①

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2016年

3月

28日

HQでⅥパロ-1話⑨

※キャーHQのDQⅥパロディよー!アレすぎるわー!流血沙汰もあるわー!逃げてー!

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2016年

3月

24日

HQでⅥパロ-1話⑦

※HQのDQⅥパロっていうアレなヤツ。十四歳的なアレとかアレとか注意。

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2016年

3月

20日

HQでⅥパロ-1話⑥

※HQでDQⅥパロっていうアレなヤツ。

 

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2016年

3月

20日

HQでⅥパロ-1話⑤

※HQでDQⅥパロっていうアレなヤツ。

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2016年

3月

19日

HQでⅥパロ-設定2

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2016年

3月

19日

HQでⅥパロ-1話④

※HQでDQⅥパロっていうアレなもの。捏造とか捏造とか捏造とか注意。

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2016年

3月

18日

HQでⅥパロ-1話③

※HQでDQ6パロディ(九割捏造)というとんでもないものです。

 気が向いた方のみ、お付き合いください。

 

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2016年

3月

15日

HQでⅥパロ-1話②

※HQのDQⅥパロディ。捏造とか捏造とか捏造とか、色々注意。

 

 

 

 

 

 

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2016年

3月

12日

HQでⅥパロ-1話①

※HQでDQ6パロディ(九割捏造)というとんでもないものです。

 気が向いた方のみ、お付き合いください。

 

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2016年

3月

12日

HQでⅥパロ-設定

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2015年

12月

25日

III1st小ネタ

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2015年

3月

19日

現パロ「影を見て踊る者達」

※稲野巧実様「舞踏会を離れて影二つ」を読まれるとより楽しんで頂けると思われます。


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2015年

3月

15日

現パロ「光の導きを見つめて」

※気持ちのいいないようではないので注意。えぐいの苦手な方は戻って戻って!




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2015年

3月

03日

現パロ「特殊能力犯罪対策室」

 公安十課の本拠地は神秘庁舎にある。公安庁舎ではなく、特殊能力を含めたこの国の多種多様な不思議を司る神秘省の本部に拠点を構えていることが、この部署の特異性をあらわしている。

 公安警察第十課、別称特殊能力犯罪対策課は内外ともに秘匿された組織である。その理由は多々あるが、その専門分野の特別さと、国の切り札であり最後の手段的な性格がその大きな一因として挙げられる。

 彼らは特殊能力が関連する犯罪なら天下御免で出動し、国家と国民の安全を最優先に任務にあたる。しかし特殊能力犯罪と一口に言っても、大抵の事件は警察や他の公安で対処できてしまうことがほとんどである。だから彼らに回って来る仕事というのは所謂難事件と呼ばれたり、国家の存亡に関わったり大規模な国民への損害が想定されるような代物ばかりだった。

 神秘庁舎二十七階、霊能課と魔物管理課が七割、備品室という名の物置が二割を占めるこの階の片隅に特殊能力犯罪対策課の札はかかっている。窓は東向きで日当たり良好、冷暖房完備の過ごしやすい一室だった。

「フーガ、新しい書類来たよー」

 ビスケット色をした飾りのない扉を、ピンクポニーテールの女が潜る。子どものように背が低いが身のこなしはきびきびとして、溌剌とした顔立ちは黒い瞳に理知的な光沢を宿して素早く自分の来た道と室内とを窺った。

 彼女の帰還を迎えたのは至って質素な部屋構えである。長方形の空間、中央は向い合せになった八つの事務机が占め、それを挟んだ窓と反対の位置にやや大きめのデスクがある。机は空席の方が目立っており、それぞれの所有にもとづいて座った三人のうち二人が彼女を仰いだ。

「あ、キラナ。お帰りなさい」

 先にそう声を発したのは、令嬢めいた優しい笑みを浮かべる女性だった。淡く水色と銀を帯びた髪は卵型の顔の脇を背中へまっすぐ流れている。肌は髪よりもなお白く、瞳だけが赤く透き通っている。雪うさぎのような女性だった。

「ただいまぁ」

「今度は何の書類だ?」

 白い女性に手を振った桃色の彼女へ、だるそうな表情をした男が問いかける。体つきは立派に逞しいが表情は死んでおり、短いこげ茶の髪と顎に生えた無精ひげ、光を宿さない一重瞼の瞳と相まって疲れ切っているような雰囲気を醸し出していた。しかしその座る席は向かい合った机群から離れた、簡素ながら少し大きめのデスクである。

 彼こそがこの公安十課課長、即ちリーダーを務める者だった。名はフーガ。もとは海の分野に属する軍人である。特殊能力持ちの部下六人に対して彼だけが能力を持たない一般人だったが、その頼りになる人柄でメンバーに慕われ、チームをよくまとめていた。

「このあいだの邪神教無差別爆破事件。もうちょっと詳しい資料が欲しいって」

「お抱えの専門家に聞くんじゃダメなのか」

「専門家じゃ見てないから分からないんだって。破壊神が降臨するくだりとか信者にどんな影響を及ぼしてたかとかそういうのをもっと知りたいんだそうで」

 フーガは溜め息を吐いた。彼の武骨な左手の横には処理待ちの書類が山積みになっている。淑女がやや躊躇いがちに口を開く。

「あの、お邪魔でなければ私が少しお手伝いしましょうか?」

「ああ……そうしてもらえると助かるよ、アリア」

 彼女ははにかんで席を立ち、フーガのもとへ赴くと書類を覗き込む。

「これなら私、全部書けます」

「頼む」

 頷いて書類を受け取り自分の椅子へ戻る。すぐに白紙へ目を落としてペンを走らせ始めた。

「一応確認します。召喚されたのは破壊神ナンバー百五十一シドー、全長七メートル八十二センチ、体重測定不能、推定年齢一万五千歳、性別なしで間違いないですか」

「ああ」

「戦闘中に見せた行動は飛行、巨大な爪を駆使した物理攻撃、口からの火炎放射、自身の外傷の回復で間違いなかったでしょうか」

「そうだ」

 フーガに確認しながら、彼女は止まることなくペンを動かし続ける。まっさらだった報告書がみるみるうちに黒くなっていく。

 アリアは「悟りの書」と呼ばれる特殊能力を持っている。彼女の見聞きしたものは全てその限度知らずのデータバンクに記憶管理され、求めればすぐに必要な情報を出すことができた。またこのデータバンクを利用して、出会った能力者の能力を真似して使うことができ、これも現場での戦闘だけでなく作戦会議や研究に役立っていた。

 必要なことを確認し終えると、彼女は集中して書類の詳細を詰め始めた。フーガはちらりと時計を窺って、己のデスクで伸びをしていたキラナに目を移した。

「スランとテングに連絡取れるか? もう撤退も報告も済んだんじゃないかと思うんだが」

「おっけー」

 彼女は気楽に答え、己の米神に右の人差し指を添えた。まるで受話器なしに電話をかけているような格好になる。

「スラン、聞こえる?」

 突然一人で喋り始めた。目はフーガではなく、自分の机に置かれた植物の小鉢を見ている。

「フーガが様子聞けって。もう撤退できた?」

 尋ねて、少し黙る。室内にはアリアの走らせるペンの音だけがしている。

「うん、そう。もうこっちに向かってるわけね? テングは?」

 それからまた黙る。傍目から見れば会話をしているようだが、相手の姿も声も全く見えない。だが彼女はまるで相手が目の前にいるように一人喋っている。

 これがキラナの能力「大声」である。彼女はこの力を糸のない、または糸の見えない糸電話にたとえる。どんなに遠くにいる人でも、彼女が選びさえすれば相手に自身の声を届け、また相手の声を聞き意志疎通をすることが可能だった。

「もうすぐ着くって」

 キラナは更に二言三言喋ってから会話の結果をフーガに告げた。彼は別の書類に向かいながらも顔を上げ礼を言う。チームメンバーの動向を探り報告するのが彼女の常だったが、連絡を受けてフーガが礼を言わないことはなかった。

「あー疲れたわあ」

 その時、おざなりなノックと共にドアが開いて新たな人影が入って来た。タイトなスカートに大きく襟を開けたシャツ、ジャケットを雑に羽織った妙齢の美女である。ヒールが高く鳴る度に、首の中ほどで切りそろえた髪が炎のように舞う。

 淑やかさのかけらもない豪快さで椅子に腰を下ろした彼女に、フーガが声をかける。

「ルネ、どうだ?」

「あの司書さん、シロよ。本当に禁書に興味があっただけで盗んではいないみたい」

 ルネは「ガイアの剣」という能力を持つ班員だった。何もない宙から炎を生じさせたり大地奥深くに息づく巨大なエネルギーをも操ったりできる破壊力の強い能力であるため現場での荒事を得意としているのだが、彼女の炎は何も物質だけに働きかけるものではなかった。

「でもちょっと盗み見しちゃったのね。都合悪いこと覚えてたから忘れてもらったわ」

 炎の蜃気楼的な性格を用い、他人の意識を朦朧とさせ心に秘めたる内容を話させること、またその記憶を改竄することもできる。だから彼女は荒事だけでなく尋問や情報収集も担当することが多かった。

「何を覚えてたんだ」

「ヘルハーブの合成方法」

 ルネはキャスターつきの椅子にもたれかかり、デスクの引き出しを探りながら答える。綺麗にネイルの施された指がキャンドルを探り当て、満足そうに微笑んだ。対してフーガは眉根を寄せる。

「そいつ、本当にシロなのか?」

「アタシが見た限りシロよ。何ならサタルに見てもらう?」

 群青の一重瞼が一方をちらりと見やり、首を横に振った。

「それには及ばない。監視がつくんだろう?」

「もっちろん! 当分肩凝っちゃうでしょうね、かわいそうに」

 台詞は同情する風だが、口調は上機嫌である。それもそのはず、彼女は今机上に据えたキャンドルの灯火を眺めているのだった。

 ルネは能力のせいか否か炎に異常なロマンを抱いており、定期的に火を見ないと落ち着かない性質なのである。

「ただいまーっ!」

 再びドアが開いた。子供のような甲高い声と共に現れたのはぽっちゃりして背の低い縞々衣装のピエロである。その後ろに銀の短髪と緑眼が爽やかな美青年が続く。高い位置にある彼の肩には、ライフルが負われていた。

「ヒトナナマルマル、命令通り射殺しました」

 銀髪が淡白に告げる。彼の感情を押し殺したような強張った顔を見つめ、フーガは頷いた。

「特殊の方から報告は受けている。犯行グループを除けば、民間含め死傷者はゼロだったそうだな。スラン、お前の狙撃とテングの変化のお陰だ。よくやってくれた」

 テングと呼ばれたピエロはまさに道化めいた大きな一礼を返したが、銀髪は中性的な顔をくしゃりと歪めた。

「すいません……」

 彼は顔を俯け、眉間に指を添える。

「俺、やっぱり狙撃向いてないっす。何十も殺ってるのに、慣れない」

 銀髪のスランの持つ能力は名を「鷹の目」という。彼の「目」は高く天にあり、神経を集中させれば集中させるほど、遠近関わらず何でも見てとって正確な位置を把握できる。分かりやすく言うと、彼は歩く人工衛星だった。

 この力は目標物の捕捉追跡に長けており、またその正確な把握力から遠距離射撃とも好相性だった。そのため、スランは絶対的な実力を誇る射撃の名手としても知られていた。

「それでも撃てるお前は凄いよ」

 フーガは立ち上がり、デスク群の傍に佇むスランに歩み寄った。彼の得物を吊るしたベルトを掴む長い指にはタコが見られる。それはたゆまぬ鍛錬の証だった。

 沈んだ顔つきの部下に、フーガは静かに語りかける。

「お前が奪った命もお前の痛みも必要だとか、そんなことは思わないし言わない。だが礼は言わせてくれ。お前のおかげで、死ぬかもしれなかった命が助かったんだ。それを忘れないでくれ」

 スランは再び大きく顔を歪めた。細くなったエメラルドの淵に水晶が生じ、彼は慌ててそっぽを向く。目がしらを抑える彼に、傍に座っていたキラナがハンカチを差し出す。

 彼の倫理に苛まれながらも瑞々しい感性、それでいながら現場では標準を反らすことなく躊躇いなしに引き金を引く勇気を、班員達は愛していた。

「みんな、見てっ!」

 湿っぽくなった空気を吹き飛ばすようなテングの声。いくつもの面々が声の方を向くと、ピエロの輪郭が急に薄くなって消えていく。しかし色だけは淡く残り、きめ細かい粉砂糖をまぶしたようなピエロが陽気にジャグリングを開始する。リズミカルに回る玉はやがて絵画的な向日葵に変わり、ピエロも細く伸びて人の形を失い、気付けば花飾りの可愛らしいおもちゃの観覧車が立っていた。

「今日も絶好調じゃない? すごくない!?」

 観覧車がテングの声で言う。キラナとアリアが可愛いとはしゃぎ、ルネは悪くなさそうに笑みを大きくしてキャンドルに視線を戻す。スランはおおっと軽い驚きの声を上げ、フーガは目を細めて首を縦に振った。

「ああ、凄いな。お前の『変化の杖』はどんどんすごくなってる気がする」

 ピエロのテングの能力は「変化の杖」、その名の通り変化が得意だった。自分だけでなく他者の姿や風景も自在に変え、よほど距離が遠くならなければ声も変えて喋らせることも可能である。変身術だけでなく幻術も含んだ稀有な力で、潜入に攪乱に尋問にオールラウンドで活躍している。

 テングは次から次へと色々なものに姿を変えて見せる。アリアとキラナ、スランが喜ぶ様、キャンドルと見つめ合うルネの幸福な顔、順に安堵したように眺めたフーガは、デスクの片隅に腰掛けたままピクリともしない男を見て時計を仰いだ。時刻は十八時になろうとしていた。

「もう時間だが、動かないな」

 室内が瞬時に静まった。ルネ以外の目が動かない男に注がれる。男は短い黒髪を軽く遊ばせ、ダークスーツを小綺麗に着こなしている。アイマスクをして腕を組み椅子に寄りかかる姿は居所寝をしているようだが、マスクから覗く整った顔はマネキンのように動くことをしなかった。

「ちょっと見てみます」

 スランがライフルをデスクに立てかけ、足早に接近する。そして男の顔へおもむろに耳を寄せ、呟いた。

「息してないっす」

「起こせ」

 フーガの鋭い一声。炎の女を除いた班員達が男に群がった。

「おーい帰って来いサタル!」

「サタルっ起きて!」

「起きなさい、起きなさい僕達の可愛いサタル!」

「今日は貴方が初めてパルミド亭に行く日だったでしょ!?」

 スランとアリアは真剣そのものである。テングとキラナはどこか冗談めかした調子で揺さぶり言葉をかけるが、その底には表面に反した切実な響きがあった。

「う……ん?」

 ややあって、揺さぶられるだけだった男が身じろぎした。班員達ははっとして手を引っ込め固唾を飲む。胸の前で組まれていた手が、ぎくしゃくと硬直から戻った。

 右の手がアイマスクを持ち上げる。現れた双眸は明るい青に煌めいていた。

「ああ、今日パルミド亭で焼肉の日だっけ? 普段着持ってきたかな……」

 彼は眩しそうに目を瞬かせぼんやりと言った後、周りを囲む仲間の顔つきと時計を見、そして己の胸に手を当てる。夢見るようだった双眸が急速に焦点を結ぶ。

「心臓がばくばくしてる。のめり込みすぎたみたいだ」

 ごめんみんな、と彼は微笑んだ。取り囲んだ面々がそれぞれ息を吐く。

「普段に七割は割くなと言っただろう」

 フーガがデスクから厳しい声を浴びせる。サタルは立ち上がり、優雅な所作で課長の方を向いて変わらぬ笑みを見せた。

「ごめん。最初は五割だったんだよ。でも思いの外手こずらされてね。一カ所に分身を五人も作っちゃった」

「サタル、何度も言わせるな」

 フーガは言及する口調を緩めない。

「お前がこの課に欠かせない班長だからこそ許されてるが、本来なら『神に近き者』は国の法だけでなく国際条約で禁術に指定されている分魂術と憑依術、服従の術に分類される力だ。この三つが禁じられている理由……分かってるよな?」

 緊迫した雰囲気に、当人より他の班員の方が思わず居住まいを正した。

 この世界には禁術というものがある。これは術者そのもの、または他者を直接的に著しく害する可能性がある術の通称であり、よほどの切迫した事情がなければ使うことは許されない。国によっては使用だけで極刑に科せられることもある。

 課長のもと現場での指揮を司る十課班長、サタルの『神に近き者』は特殊能力でこそあるものの、この禁術に当てはまる物だった。彼は己の魂を粘土細工のように千切り、他の人間や動物、肉体のない霊体、意識を持たないはずの自然物にさえそれを溶け込ませることができる。溶け込んだものに同化、対象の肉体だけでなく思考や記憶さえ共有し、その上支配することができた。彼の魂が埋め込まれた者は知らぬうちに彼の影響を受け、また取りつかれたことにすら気づけない。

 つまり古臭い言い方になるが、彼の力は分裂式の高性能な憑き物なのである。これを駆使してサタルは緊急時の班員への伝令だけでなく、必要な情報、目や耳を持つ人間に憑依して意のままに操ったり、なかなか口を割らない犯罪者にねじ入って内側から無理矢理要るものを得たりしていた。

「ああ。分魂は分裂したまま戻れなくなったり、人格が崩壊する可能性があるから。憑依は自分の魂が相手に取り込まれる、または逆の可能性があるから。服従は相手の精神を壊してしまうことが多いからだよね」

 サタルは屈託なく答える。

 彼の能力は確かにある意味で強力である。だが同時に危険でコントロールの難しいものなのだ。

「お前は確かによくやってる。魂の半分を他に裂いて複数の場所で生きさせたまま普段通りの生活を送れるなんて天性でもできないだろうし、ましてや努力なんかじゃできることじゃない」

 フーガは言いながら、それでもこの男が最初から能力を使いこなせたわけでなく、血の滲むどころじゃすまない苦労をしてこの力をものにしたことを意識していた。その過程にフーガはテングほど詳しくはないが、かつて初めて会った時の、現在とは全く異なる彼の姿は今でもよく覚えている。

「お前の能力は名の通り神に近い。だが、お前は人間だ。思い違えるな」

 長い付き合いの男の台詞に、サタルは笑みを消した。平時の甘さの削ぎ落ちた作り物めいた秀麗な顔は、彼が放蕩な優男ではなく冷酷な拷問の専門家であることを思い出させた。

「承知してるよ。俺はちょっと変わってるだけの、凡庸な人間だ」

 ツートップは無言で視線を合わせる。スランが両者を案じるように顔を左右させ、アリアが落ち着かなそうに腕をさする。キラナは沈黙し、テングはただサタルを凝視する。

「で、どこにそんなに苦労させられたの?」

 凍りついたような部屋に、どこか呑気さの漂う声が上がる。キャンドルと見つめ合うことをやめたルネだった。

「それが、光の教団なんだよ」

 サタルは一転して軽い調子で答える。場の空気が和らいだ。

「光の教団ってあそこでしょ? 郊外の山の上にでっかい建物造った」

 キラナがサタルに問う。彼は頷いた。

「そう。甦りの奇蹟をもって信者だけでなくお茶の間の話題までかっさらってる、今流行りの宗教集団さ。さらに彼らの言うことには」

「死者たちが蘇っている! 終焉なる審判の時は近いぞぉー!」

 テングが芝居がかった口調で乗じる。アリアが目を丸くする。

「まあ、そんなこと言ってるの?」

「そうそう。勿論それだけじゃない。肝心なのは宗教お決まりのアレだ」

「信じる者は救われる、か」

 フーガが机の上に肘をつき、組んだ手へ顎を乗せて呟く。サタルは彼に向って朗らかに笑いかけた。

「そういうこと。警察は今必死に頑張ってるけど、このところ死体が起き上がってるのは本当だ。だからみんな、馬鹿げてるって思いながらも何となく無意識に本気にしちゃってるんだよねえ」

「煙臭いわね」

 ルネは愉快そうに言う。これには班の全員が首を縦に振った。

「だからちょっと信者をジャックしてみたんだよ。そしたらまあ……」

 サタルは堪え切れないといった風に笑い声を上げた。

「怪しいも怪しい、真っ黒さ! ジャックした信者五人、全員が洗脳されてる! おまけに教祖様っていうのが奇跡の代行人、言うことには能力者名乗っててその蘇生の能力っていうのもパチモン臭い。だいたい教団の人間っていうのがまず人間じゃないんだから笑っちゃうよ」

「魔物か?」

 スランがぎょっとする。サタルは多分ね、と軽く肯定した。

「これは今の所公安……何課だっけ? の管轄だけど、そのうちウチに全権が来るよ、フーガ。覚悟しといた方がいい」

「またか」

 フーガはげんなりとした。ただでさえも疲れたような顔が更にひどくなる。

「じゃあ景気づけに、パーッと食べに行きましょうよ!」

 ルネが威勢よく立ち上がる。時刻はいつの間にか定時を過ぎていた。

「そうだ、食べに行くって話だったんだよな!」

 目を輝かせてスランが帰り支度を始める。つられて全員が身支度を整え始め、急に浮つき始めた中でフーガが釘を刺すように言った。

「おい、言っとくけど驕らないからな」

「えーっフーガのケチぃ」

「ケチケチィ!」

 テングが丸い頬をマシュマロのように膨らませる。キラナがそれに乗っかって、一方でアリアが慌てて言う。

「私は勿論自分の分は自分で払います! フーガさんにばかりご負担をかけさせるわけには参りません」

「アリア……」

 課長は感極まって、思わず片付けの手を止めた。

「お前、ホント良い奴だな」

「よっ、十課の良心っ」

「冗談だよアリア!」

「えっそうだったの!?」

 サタルが調子のいい掛け声をかけ、キラナの訂正に純真な淑女は本気で驚いた。白い頬が薔薇色に染まる。

「おーい、電気消していいっすかー?」

「待って早い!」

「レディの支度は待ちなさい」

 スランが戸口でスイッチに手をかける。テングがあわあわとリュックを床に落とし、ルネは逆に威厳さえ感じるゆったりとした動きで引き出しに鍵をかける。サタルが、アリアがスラン同様外に出て、キラナが同様に部屋を出てルンルンと言う。

「ああ、奥さんと旦那さん元気かな! 私あのオシドリ夫婦大好き!」

「ヤンガスの奴にもしばらく会ってないな。ゲルダさんは間違いなく元気だろうが……」

 フーガは荷物を整えると室内の戸締りを確認し、テングとルネが部屋から出るのを確認してから一同に問いかける。

「忘れ物、ないよな?」

「ない!」

 大きな背中が扉を潜り、明かりが落ちた。

 

 

 

まさかⅢで現パロすることになるとは…とびっくりしてます。これが案外楽しんで困ります。

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2015年

3月

02日

現パロ「ホーリーツインズ」

「いっけなーい! 遅刻遅刻ぅ~!」

 行儀よく並んだパステルカラーの家々、こんもりと葉を茂らせて二列に整列する街路樹たち。あたしはその前を慌ただしく走り抜ける。黒いウェイトレス服は人目を引きまくってるけど気にしてる場合じゃない。寧ろ私の美しい形の太腿が見られるんだから感謝して欲しい。

 ってそんな余計なこと考えてる場合じゃないの! 急がなくちゃ、開店の時間になっちゃう!

 あたしが働いてるのはちょっと頑固なお爺ちゃんが経営するカフェバー。お店が始まる時間は十一時、終わりも十一時なんだけど、あたしったら朝に弱いから寝過ごしちゃったの! 今十時三十五分、あたしの住むアパートから職場までは徒歩で三十分! これはもうバス使わないと間に合わない!

 もう、兄貴のバカ! あたしのことも起こしてくれたっていいじゃない!

 無我夢中で走っていると、見えた見えた。前方十二時の方向にバス停に停まるバス発見。今日もお客さんが群がるように乗り込もうとしてる。おかげでまだ予定時刻だけどバスが発車してない。

 いいぞお客さんたち、そのまま引き留めて! もっと強くアスファルトを蹴ろうとした時、鼻に覚えのある匂いが届いた。カビ臭いような、下水の匂いみたいな。

 んん? よく見るとバスに群がってる人達、顔色悪すぎない?

「もーっ何なのよこんな時にぃ!」

 あたしは文句を言いながら肩に下げたカバンのジッパーを開け放った。手を突っ込んで馴染んだハンドルを取り出す。その先の直方体がブルルンと唸る。

 いつもの倍の力を込めて大地を蹴る。街路樹の町がジオラマみたいに遠のく。ハンドルを天に向けて掲げた。

「ぶっ飛べしょーてんっ! ニフラーヤ!」

 掲げたハンドルがズシリと重くなる。ハンドルの反対、直方体から帯状に光が生え、あたしと丈がどっこいのカッターがお日様に銀の輝きで答える。

 刃がギャルルンと物騒な回転を開始した。眼下にバスへたかる人の群れが迫る。あたしはお腹に力を籠めた。

「どいて――――ッ!」

 こちらを緩慢に見上げる黄色に濁った眼。ああやだ、やっぱり!

「昼間っから腐ってんじゃないわよっ!」

 振り下ろしたカッターが、伸ばされた無数の手を一息に薙ぐ。巻き上がる風が届ける匂い、まき散らされる青黒い液体、切り離された傍から砂状に解けキラキラと消えていく腕、間違いない。ゾンビ! 臭い! 汚いっ!

 奴らを踏みつけ一瞬、足に力を溜める。周りのゾンビがこっちに腕を掲げる。その前に三百六十度回し斬りッ!

「あたしはっ! 今日もっ! 働かなくちゃなのっ!」

 一節一節を区切りながらチェーンソーを振り回す。青黒い血、ぶよぶよの肉塊、あたしの相棒が触れるだけでキラキラと溶けて散開していく。

 このゾンビが昇天する時のキラキラだけは綺麗じゃないかな。じゃなくて!

 臭い身体が遠のいたところでバスに飛び乗る。良かった、運転手さんは無事みたい。でもおばさんのゾンビに襲い掛かられてる!

 あたしはぼろきれをまとった背中に刃を突き立て、後ろに振り抜いた。おばさんは外に吹っ飛んでいった。

「おじさん、車出してッ!」

 ぽかんとあたしを見上げていたおじさんは、急かされて慌ててアクセルを踏み込んだ。ドアが閉まろうとして閉まりきらず、ドアの間にゾンビの指を挟んだままバスは発車した。

 バスの中を見回す。乗客たちは怯えた顔でこちらを見返してきた。ゾンビ化の傾向がある人は……多分なし。外は、うん。結構ついてるね、ゾンビ。いちにぃさんしぃ……数えるの面倒だわ、気持ち悪い。

「おじさん、バスずっと走らせてくださいね。ちょーっと綺麗にしてきますから!」

 運転手のおじさんは何か言いかけたけど聞かずに、手近の窓を開け逆上がりの要領で車体のてっぺんへ。ううっ、風強すぎ身体に染みる! これ絶対パンツ見えてるわ。サービスにもほどがあるわよ!

 窓はちゃんと閉めて車体の上に立ち、相棒を握りなおす。あたしの可愛いチェーンソーちゃんが嬉しそうに短く鳴く。それに気づいたのか、車体の周囲についてたゾンビたちがこっちを向いた。

「はいっ! アン、ドゥー、トロワッ」

 あたしはさっさと車体についた汚いヨゴレを落としにかかる。ゾンビって奴らはとことんトロい。でも力は強いし普通にぶった切っただけじゃバラバラになったパーツだけで動いたりするから、みんなやられちゃうんだよね。

 でもさすがあたし。バスの周りはみるみるうちに綺麗になっていく。うーん、だけど車体に結構青黒いのついちゃったなあ。まあいいよね。ロックでカッコいいんじゃない?

「あっ!」

 おぞましいくらいについてたヨゴレがやっとなくなった時、あたしは思わず大声を上げた。そうだ、仕事! もう通り過ぎちゃったかな!?

 ちょうどその時、あたしの目に煙突みたいな背の低いビルが目に入った。ああこれ、ラッキー!

 あたしは素早くバスを飛び下りた。バスはキリキリ猛スピードで走っていくけどあたしにも余裕なんてない。早く、職場に着かなくちゃ!

 煙突に飛び込み階段を駆け上がる。落ち着いた色調のドアにかかった武骨な木彫りの立札が見えた。「lumberjack」と記されている、ここがあたしの職場。

「ごめん! ギリギリセっ――」

 ガシャッリーンっみたいな音を立ててドアを開け放ったら、顔の横を何かが掠った。背後でくぐもった音がした。

 振り向いたら、腐ったお兄さんが立ち尽くしていた。だけど眉間に空いた穴から、サラサラと崩れていってしまう。その歪んだ顔は心なしか安らかなように見えた。

「もうガキじゃねえんだから、泥遊びすんなら泥は全部落としてから来い」

 ガサツな感じがにじみ出た声が言う。身体を返すと黒いウェイター服が銃口を下げたところだった。身内ながら端整な面立ちが挑発的な笑みを浮かべている。

「ごめん、ありがと! まさかリビングデッドがいるなんて思わなくて――ってそうじゃないっ!」

 あたしは大声を上げた。

「昨夜起こしてって言ったじゃん! 何で一人で行くの!?」

「声かけただろ二回くらい」

「起きるまで声かけてよっ! バカバカヨハンのバカ!」

 あたしは後ろを向いたバカ兄貴の背中をポカポカ叩く。でもはいはいとか言いながら裏へ向かっていってしまう。ちょっと、どこ行くの!

「それよりその物騒なブツしまって着替えろよ。そんなんで給仕されたら出されたモン片っ端から吐くわ」

 我に返って自分を見下ろした。白いフリルが可愛いブラウスは青く染まり、スカートも黒さを増して重くなっていた。やだ臭い。汚い。

 頭にぼふっと何かがぶつかった。手に取ってみると洗い立てのタオルとウェイトレス服だった。チェーンソーのカッターを収めカバンにしまう。裏だから人目も気にせず、そのまますぐによごれた服を脱ぎ捨てて身体を拭く。それで綺麗な衣装を着ると、生まれ変わった気分になった。

「あーさっぱりした。もう、腐った死体だらけで大変だったんだから」

「それだけどよ」

 ふとヨハンは真剣な顔つきになった。ただでさえ鋭めの目つきが更に鋭さを増す。

「妙じゃねえか、スー。何で夜の化けモンがのうのうとお天道様の下にいるんだ」

「……あ」

 あたしは口を抑えた。そうだ、違和感はあったのに考えてなかった。

 ゾンビたちは日の光に弱い。だから日の当たらない地下や夜に活動する習性がある。なのに、あたしが出くわしたゾンビたちは平然と外にいて動いていた。日差しに身体が溶ける素振りもなく、まるで闇の中にいるように闊歩してた。

 急に室内が暗く感じられて腕をさすった。背筋が寒くなってる。

「スーザン」

 珍しく、ヨハンがまともにあたしの名前を呼んだ。

「しばらく気合入れて朝起きろ。巡回増やしてここに泊まり込むぞ」

「お祖父ちゃんを一人にさせちゃいけないもんね」

「ま、あの偏屈のゾンビ面なんか見たかねえからな」

 頭を掻く兄は祖父に似ている。

 ヨハンとあたしは双子。髪はヨハンが直毛であたしが癖っ毛だけど、その色は同じ翡翠にも見える不思議な緑。瞳はアメジストみたいな紫。姿形は異性だからやっぱり違う。でもどっちも気の強そうな美形。働く場所は同じカフェバー「lumberjack」。共通項の多いあたしたちは、もう一つの職業まで一緒だった。

「分かってるな? ゾンビハンターはここらじゃ俺らだけだ」

「分かってるよ、あたし達の街を汚されちゃ堪らないよね」

 あたし達は頷き合った。

 

 

 

チェーンソーを振り回すチアガールを知っている貴方は、管理人と握手!

爺さんは「ケツがかゆくならあ!」のあの人。この現パロはどこに向かおうとしてるのだろう。

 

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2015年

3月

01日

現パロ「公安の十字架」

※ちょっとグロ注意? かもしれないので畳みます。苦手な方は戻って戻って!

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2015年

2月

26日

戦隊パロディ「ブラックを見る目」

 空港の人の足はどこか浮いているように見える。もうすぐ飛ぶんだから、無理もないだろう。翼を持たない人間が空を飛べるのは奇跡だ。

 浮足立つ人々の中で、沈んだ顔、張りつめた顔の者も勿論いる。きっと楽しくないことで飛ぶんだろう。気の毒だが、俺には推測して同情することしかできない。

 その中で彼はどちらでもない顔つきでいる。気持ち怒っているようにも見える仏頂面だが、尖りすぎてはいない。また気怠そうではあるものの弛緩しきってはいるわけでもなく、要はアレフという男はいつもそうなのだろう。だからその様相の揺らぎに、他人は本人以上に惹かれる。

 無頼な風を装ったって、揺るぎない地盤があって芯を持って立ってるのは誰が見たって分かるよ。ひねくれてるとは言っても一本気。寄る辺のない葦は確固とした土壌が欲しいものだって。

 外見どころか戸籍さえ不安定な俺とは違う。妬ましいね。

「おい」

 お、もう気付いた。予想より早い。

 視界の中央にはモッズコート。眼光も鋭くこちらを見下ろす彼の立ち姿がある。

「さっきからジロジロ見やがって何の用だ。分身で尾けるならもっと分かんねえようにやれ」

 貴方の気を引きたくてね、と俺は正直に返す。今の俺はただの老婆だから。

 彼はあからさまに嫌そうな顔をした。意味のない冗談は嫌いな性質らしい。

「用件はなんだ」

 用なんてないんだけど。

 強いて言うなら、先日の例の川原に出現した穴に顔もろ出しで近づいた一般人がいて、それがしかも現在要監視レベル五である異次元戦隊ヒーローズの一員だったから、ビビった警察から俺の方に尾行及び観察の依頼が来ちゃったっていうそれだけなんだけど、そんな理由じゃ無粋にもほどがあるよね。まったく、いくら俺が潜入も得意だからってこういうのは特殊部隊に頼めっての。まず、間接的でも彼を一応知っている俺がやったんじゃあ意味がないじゃないか。

 まあ間接的に話してみたいとは思ってたし、交換条件も悪くなかったから受けたけど。俺は少し考えてから口を開く。

「貴方は確かに優秀な戦士だけど、自分のこととなるととっても疎いね。それとも知らないフリをしてるのかな?」

 漏れる声は勿論しわがれている。もともとの俺の美声とは似ても似つかない。

「は?」

 アレフは本気で意味が分からないと言いたげだった。分からなくていいよ。俺も分からせたくて言ってるわけじゃないし。

「恍けたってどうしようもないよ。イイ男、イイ女の背中は追うものって相場は決まってるでしょ? 追うなって言って誰が言うことを聞くの」

 今度は半眼になって、ポケットに両手を突っ込む。うっとおしがっているような態度だ。

 本来なら俺達みたいなタイプはお互いにほどほどに距離取って、近づくような真似はしないんだけど仕事だから仕方ないね。今後も俺としては、仕事で直接彼と会うような事態になることは避けたい限りだ。俺が仕事で直接誰かと会うなんて、ほとんどありえない話ではある。けれど可能性を考慮せずにはいられない。

「持つもの持ってるのに。拒んでもついて来るって分かってるくせに。羨ましいなあ」

「何なんだよてめえは」

「身のまわりに気を付けなよ。私は君がどこで何をしてても行動範囲の広さを楽しませてもらうだけだけど、他の連中はそうじゃないから」

「おい、質問に――っ」

 指をパチンと鳴らす。すると老婆の身体がぽんと飛び、大輪の花がエントランスホールいっぱいに咲き誇る。空港の客達は驚いて声を上げ、花を受け止める。けれど雪よりも早く消えてしまう。

人々は不思議がって降ってくる花の出所を探る。その目は消え去った老婆がたった一人で座っていた席の前に佇む男に行き着く。男、アレフは苦虫を噛み潰したような顔をしている。

 あはは、いい顔。可愛い可愛いはとこ達にも見せてあげたいね。

「班長ー」

 はいはい。俺は席から立ち上がった。

 



誰得って私得。分かりづらいですがサタル目線です。

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2015年

2月

26日

戦隊パロディ「忍び寄る戦いの予感」

「ブラックとして町に出ると、女性がキャーキャー騒ぐ」

 ブラック会不屈の男として名を馳せるアレフレッドが、珍しく沈痛な面持ちで溜め息を吐いた。ラーメンから立ちのぼる白い湯気が揺れるのを見ながら、レックはその理由を考える。

「ああ、ブラックの奴らってみんなキラキラしてるもんな」

 マスクをしていてもその魅力は溢れ出ているらしい。正規ブラックことアレフは外見に気こそ遣わないもののなかなかの男前、おまけに実力も折り紙付き。ブラック代理その一のサルムは落ち着いて品のある、男でありながら可憐とも言える姿に定評がある。代理その三のゾーマは佇まいも麗しく一挙一動に風情があり、実際戦闘の際は艶やかな声で薔薇の雨を降らせる。

「ブラックスーツで出るとブラックローズお願いします、私の方に降らせて、ああ今こっちを向いた……なんて大騒ぎされるんだ。やりづらい」

「人気高いよな、ブラック。チームアイドルとしてデビューしちゃおうぜ!」

「そうはいかないだろう」

 アレフレッドは真面目にレックを睨む。

「ヒーローズはその並外れた能力と技術力のせいで各機関や好事家から血眼で探されているんだぞ。お前だって身をもって知ってるだろう」

「あー、そうだった」

 レックは眉根を寄せる。いつぞやに黒塗りの高級車軍団とデスレースを繰り広げたことを思い出していた。どこの団体かは知らないが、巻きに巻きまくらなくてはいけなくて面倒だった。

「大体能力持ちなら俺ら以外にも他いるだろ。そっちじゃダメなのか?」

「お前らには自覚がないようだが、ヒーローズ正規メンバーの身体能力は他の能力者と比べても上の上、Sクラスだ。それにロトさんのあの技術が加わって、研究対象や味方に欲しいと思わない組織はないくらいだぞ。軍隊然り国家然り国際団体然り」

「えーっ俺らそんな人気者なの? やべえ」

 レックは口ではそう言いながら、白く透き通る汁に替え玉を放り込む。更に刻みネギと据え置きのもやしナムルも入れて豪快に掻きこむ。あまり事の深刻さが分かっているとは思えない。

「で、だからお前は正規ブラックにヒーローの仕事やって欲しいの?」

「それは別だ。ただ単に、あの仕事は正規である彼にこそふさわしいと思うだけだ」

 アレフレッドはキリリとして言い切る。レックは速く食べないと伸びるぞと彼を急かしてから言う。

「別に俺はいいと思うけどなあ。アイツの本業ってある意味ヒーローみたいなもんだろ? 呼ばれりゃいつでもどこでも見参! 何でも屋って感じでさ」

「まあ……言われてみればそうだが」

「そっちなら生活に必要な金も出るわけで、俺は優先して普通だと思うけどな。こっちの仕事は俺達もいるしお前らもいるし、アイツが一人きりで頑張ることもないんじゃね?」

 ラーメンをすくい取った手を止めて、アレフレッドは考え込む。レックは早々と替え玉も食べつくし、満足そうに腹を撫でて笑う。

「俺は趣味で正義のヒーローみたいなことやってるけど、他のみんなに強いるつもりはないぜ。一緒に戦える奴がいれば嬉しいけどな」

 アレフレッドは少しの間黙っていたが、レックにまた指摘されて麺をすする作業を再開した。その胸にはヒーローとは何なんだろう、優先すべきは何だろうなどという疑問が渦巻いていた。

 正義とは、とアレフレッドは思う。正義を口にする時は押し通したいものがある時だ。それが真に正義か否かなど関係なく、勝った者は正義となる。負けた者は悪だ。だから何が正義でそうでないかなどという議論は――

「アレフレッド!」

 頭を跳ね起こす。急に起立したレックは険しい顔をしていた。

「レーダーに反応が出た。行くぞ!」

 二人は慌ただしく店を出てスーツに着替えた。ロトのくれた敵探知レーダーは悪しき気をキャッチして持ち主に知らせる。それが、敵が近いと告げていた。

「なっ何だありゃあ!?」

 レックが素っ頓狂な声を上げる。ビル街のただなかに巨大な何かが生えていた。車一台より裕に太い、鋭い棘のついた蔓である。だがあまりに大きすぎて、蔓というより触手に近い。

 得体の知れないそれは、先端に人を絡ませて蠢いている。

「植物かあ!?」

 レックが目の上に手を翳す。アレフレッドは一足先に跳躍し、片手を振り上げる。

「刈りとれ、ブラックブレイドッ!」

 手が描いた軌道に漆黒の刃が放たれる。蔓は二つに裂け、反動で離された人が悲鳴と共に落ちてくる。アレフレッドは大きく飛んで被害者を受け止めた。

「大丈夫ですか?」

 被害者は外回り中らしきサラリーマンで、怯えた様子でコクコクと頷いた。彼が走って逃げていくのを見ながら、そう言えば自分も外回り中だったことをアレフレッドは思い出した。だがこちらの方が急務である。

「レッド! ブラック――は」

「代理な」

 反対方向から、蔓の死骸を飛び越えて三色の仲間達がやって来た。レックは彼らに尋ねる。

「何なんだ、これ」

「植物の怪物だ。あちこちに蔓を出して人を襲ってる」

 イエローが答える。それを聞いて、レックの目が輝いた。

「焼いちまえばいいわけだなっ!?」

「ただ焼けばいいわけじゃない」

 グリーンが常と変らぬ口調で言う。

「大元がいる。でも、地中にいるみたいで簡単には――待て」

 あっと言う間だった。レッドはグリーンの制止を聞かず、先ほどまで蔓が出ていた穴に飛び込んでいた。

「アイツまさか」

「直接殴り込みにいったな、あれは」

 アレフレッドが状況から考えて言うと、イエローとブルーが肩を落とした。二人は普段からアイツの無茶につき合わされてるからな。アレフレッドは同情した。

「俺が後を追う。みんなは一人でも多く人の保護を頼む。あとブルーは、消火の準備をしといてくれ」

 ブルーこと従兄は黙って頷いた。アレフレッドはその丸い頭を軽く叩くと、コンクリートに空いた穴へと飛び降りた。

 土の下は湿気っぽく、壊れた水道管や下水道がそれに拍車をかけている。アレフレッドは足早に周囲の被害を確認しながら、レッドの反応を求めて進む。彼は短い期間に随分な距離を動いたようだった。

「バァァァニングサァァァアアンイェアーーーーーッ!!!」

 だから、アレフレッドが彼の場所に辿り着いた時には全て終わったも同然だった。

 狭くグネグネとした道の先は広い空洞になっており、アレフレッドがそこについたその時は、ちょうど何かに豪快な着火の儀がなされたところだった。それは遠目には巨大なラズベリーなのだが、下方に先程の触手が生えてのたうち回っているところを見ると、これがティアの言っていた本体なのらしい。

「おっ、いいところに! この蔓斬るの手伝ってくれよ」

 びくんびくんとのたうつ触手を片足で踏みつけ、赤い閃光を纏った手を躊躇いなく振り下ろして分断したレッドはこちらを見ると嬉しそうに言った。掠りキズもなければ汗をかいている様子もない。

正規ヒーローはやっぱり化け物だ。アレフレッドは、やっぱり早く同じ名を冠する男にブラックを返上したいと思った。

 

 

 

「あれが、異次元戦隊ヒーローズですね?」

 日の光を浴びていきいきと伸びていた太い蔓が急に勢いをなくす様子を、高層ビルのてっぺんから見下ろしてその男は呟いた。普通に喋っているのだろうに、笑みを含んだような口調だった。

「ヘルバオムなどという下等なものを寄越したということは、オルゴ・デミーラ様はミルドラース様同様とるに足りぬコバエとして見ていらっしゃるのでしょうか。それとも小手調べということでしょうか」

 背後に控える二体の魔物は返事をしない。彼が喋るのは、主である男がその名を呼び発言を許可した時だけと決まっていた。

「ですが、それにしても少々うるさいハエですね。羽根をもぎ取って静かにさせてやりましょう。ジャミ、ゴンズ」

「はっ」

「彼らの周囲を調べなさい。異次元戦隊とかいう連中がどういう者なのか、何をして過ごしているのか、そして……ふふふ。彼らを取り巻く人、何が嫌いで何が好きかまで調べつくして私に報告するのです」

「はっ!」

 二体の返事を聞いて、男は振り返る。その顔は笑っているのに、その目には冷たい水底のように温度がなかった。

「いい仕事を期待していますよ」

 

 

 

レッドあんまり暴れませんでした。そして最後が書きたかった。

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2015年

2月

23日

戦隊パロディ「ヒーローズの敵、現る」

 狭いドーム状の地下というのもあって、耳がつん裂けそうだ。アレンは耳を塞ぎたいのを全力で堪えて音源へ向かう。着ぐるみなんじゃないかと疑ってしまうような巨大で愛嬌のあるモグラの怪人の手からは、しかし邪悪な旋律もとい騒音がかき鳴らされている。あんな小さいハープなのに、何でこんな心臓を尖った爪で毟られるような音を出せるんだろう。ここまでくるともう才能だ。

「裂けろ、ランドインパクト!」

 凶悪なメロディに負けまいと声を振り絞ったイエローの、グローブに包まれた手が地面にめり込んだ。たちまち大きく裂け目が入り、大地が割れて亀裂が走る。隆起した地面に手下の小モグラ達が慌てふためく。小さい奴らは跳ねて飛んでとできる余裕があったが、重いとそうはいかない。モグラの大怪人は裂けた亀裂に見事嵌まり込んだ。

 だがこれだけでは駄目だ。奴はモグラ、すぐ逃げられてしまう。

「ブルーッ!」

 ノアがアレンを呼ぶ。二人は同時に駆け出し、大モグラが嵌まった亀裂の両サイドに飛び乗って地に両手をつける。

「溶けちまえ」

 吐き捨てると、みるみるうちに大地の色合いが透明になりチョコのように溶け始めた。溶けた砂は急速な流れとなり大怪人を中心として渦潮を作る。

「いくぞ!」

「おう」

 掛け声を合わせ、液体化した砂の渦を再び硬い大地へと作り上げる。アレンがやるのは流動するそれで怪人の身体を覆うこと。そこから先はノアとの合わせ技、先ほどよりずっと硬い鋼のような氷の牢を作り上げる。

「合体封印、アストロン!!」

 大きな土と氷の達磨が出来上がった。達磨は少々暴れようとしたようだが、微かに震えたのみで大人しくなってしまった。しっかり硬く作れたらしい。

「親分~」

 小モグラ達が達磨に駆け寄る。しかし助けることはしない。彼らの目の下には、浅黒い肌でもよく分かる隈ができていた。

 ノアとアレンは彼らに歩み寄る。するとモグラ達は親分を庇うように立ちはだかった。ノアが首を横に振って彼らを宥める。

「ひぃぃ、勘弁してくださいィィ」

 大モグラは情けない声を上げる。アレンは何だか彼が気の毒になってしまった。

「ドン・モグーラ。お前がいつも賑やかに演奏してるせいで地面の上の人たちが眠れないんだよ。もうちょっと静かにしてくれないかな」

 ノアも同じように思うらしく、口調を和らげて大モグラを見上げた。モグラはどうにか動く目だけをきょどきょどと動かす。

「そんなこと言われても、これが楽しみで生きてるようなもんでして」

「防音設備つければいいじゃないか」

「予算ないです」

 アレンはがくりと肩を落とした。まさか怪人の口からこんな現実的な用語を聞く日が来るなんて。

 ノアは頭を抱えている。困ったように唸って文字通り頭を捻り、しばらくして迷いながらモグラ達に提案した。

「……知り合いに掛け合ったらどうにかしてくれるかも。アジト内を案内してくれないか?」

 面倒見がいいなあと思いながら、アレンは喜んで早速アジトの奥へと消えていくモグラ達の背中に続いた。

 

 

 

「やーまいったまいった!」

 事務所に戻ってきたレックは大きく伸びをした。久々にやって来た正規ブラックことアレフはさっさと黒いスーツを脱ぎ捨てる。ティアは彼らをしり目にポットを持って簡易キッチンへと消えた。

「せっかくカンダタ盗賊団とやっと決着付けられると思ったのになあ。警察が来たから逃げるなんて、小物にもほどがあるぜ」

「バカ、テメーのせいだろ」

 安楽椅子に腰かけてぐらぐら揺れるレッドにアレフは容赦なく言う。

「お前が川原に火なんて放つから大騒ぎになってサツに消防に救急車にフル稼働で来たんだろうが。少しは手加減くらいできねえのか」

「手加減ー?」

 レックは安楽椅子で揺れたまま、高い声で返す。

「アイツら相手に手加減したら逃げられるだろ」

「逃げられたじゃねえか」

「まだあれくらいの火力、序の口序の口ぃ」

「ふざけんなこのクソガキ。これだからおめえと組むのは嫌なんだ! いいか、戦いってのはめいっぱい突っ込めばいいってもんじゃ――」

「それだけじゃない」

 アレフの言葉は中途に切れた。ティアが盆を手に戻って来たのだ。テーブルに盆を置き、ティーセットを並べる。それから電気ポットからティーポットに湯を注ぎ、立ちのぼる湯気を眺めながらまた口を開いた。

「警察が来たのは、そのせいだけじゃない」

「何だよ、他になんかやったか?」

「警察の人、何人か言ってた。穴が空いたって」

「穴ぁ?」

 レックが振り子のように首を大きく傾ける。

「大変だッ!」

 突然、扉が壁に叩きつけられた。黄色い閃光が飛び込んでくる。イエローことノアである。その後ろから青いアレンもやって来た。

 思わずこちらを見た三人に、ノアは叫んだ。

「地下にっ! この町の地下に化け物が!!!」

 





ここから悪役との本格的な戦いと、新たなる戦闘のための新戦力参入、そして諸々が始まるわけですね! 諸々ってなんでしょうね! 私には分かりませんネタください!

新戦力のあの方はまだ性格を分かりきれていないので出せてません……すみません……。

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2015年

2月

22日

星に願いを

 誰からともなく空を見上げ感嘆の溜め息を漏らす。赤紫の天井から天使の羽根が舞い落ちる、お伽話のような情景が広がっていた。風が甘く清涼なミントの香りを運び、戦いの熱気を静かに覆い沈めていく。

 カプシン神は次第に小さくなり、初めこそ何やら喚いていたものの今ではすっかり黙り込んでしまった。死んだのだろうか。それとも自分のいるべき場所へ帰ったのだろうか。

「あれ、何だ?」

 景色に見惚れていたティアが宙の一点を指す。不規則に瞬く光が、雪に紛れてゆるやかに落ちてきていた。

 皆知ってるように、子供というのはヒカリモノと新しいものと珍しいものが大好きだ。そんなわけで、その光を真っ先に受け止めに走りジャンプして取ったのは俺の馴染みのガキだった。

「星の欠片じゃん!」

 レックはそれを掲げて見せる。小さな黄水晶に似た結晶体が煌めいている。

「何でいきなり降って来たんだ?」

「ロトさんが何かしたんじゃないかな」

 俺の問いにノアが答えた時、力強い羽ばたきが近づいて来た。竜とロトだ。ロトがその背から飛び降りると、竜はバンダナの少年に姿を変えた。

「ロト、これで帰れるんだろうな?」

 アレフが少女に詰め寄る。

「ちょっと待って」

 彼女は地面に向け、指先でくるくると円を描く。すると見覚えのある青い燐光が発生し、緩く渦を巻こうとした。しかしそれは完全な渦になりきる前に、一瞬で掻き消えてしまった。

「うーん、おかしいな。できそうなんだけど」

「どういうことだよ」

「まだ少しカプサイ神の歪みの影響が残ってるのかも。時空が混乱しちゃってる」

「俺のルーラストーンもダメかな」

 ノアが小さな石を掲げるが、反応は芳しくないようだ。

「神様精霊様天使さまーっ! もとの世界に帰してくれー!」

 レックが星の欠片を天に捧げるように持ちながら、ぴょんぴょんと跳ねている。

「落ちつけドアホ」

 何でお前はまだそんなに元気なんだ。俺は奴を抑えにいこうとして目を見張った。星の欠片から強い煌めきが生まれ溢れ出し、ロトの作り出そうとする渦巻きに注ぎ込む。するとなんと、渦は星雲のように輝き完璧な流れを保って留まった。

「さすが星の欠片だね! おかげで旅の扉できちゃった!」

 ロトが喜ぶ。俺にはどの辺がそのおかげなのか分からない。だが、察した可能性を尋ねてみる。

「ってことは、俺達帰れるのか……?」

「うん、そうだよ」

 皆歓声を上げた。

 

 

 

主人公共闘企画リレー小説、七巡目二十番目です。稲野さんから「星の欠片」頂きました。

もっとロマンティックな活かし方があったんじゃないかと思うのですが、それは置いといてエンディングです。

次は夏ミカンさんへ。回すアイテムは「ルーラストーン」です。

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2015年

2月

21日

現代パロディ「ブルーの心配」

 アレンは大量に盛られたピラフにがっつきながら眼前に座る人物に訴えかける。

「なあサタ兄、なんとか言ってやってくれよ。アレフ兄ちゃんが言うこと聞くの、ローラ姉ちゃんかアンタくらいだろ」

「そんなこと言ってもなあ」

 テーブルを挟んでそう微笑むのは秀麗な顔立ちの青年である。背はアレフほどではないもののすらりとして高く、体つきもほどよく筋肉がついて男らしくも麗しい。細身の眼鏡が似合う優男だった。

「それよりアレン、ちょっと姿勢が悪いぞ。背筋の曲がった男はモテないよ?」

「モテなくていーし。てか話逸らすなよ」

 アレンが今いるのは、目の前の男が住むアパートの一室である。この男は名をサタルといい、アレンやアレフレッドとははとこの関係にあるらしい。

 父が言うことには、アレンやアレフレッドの家は所謂新宅であり、サタルの家が本家筋なのだという。何で本家とか新宅とかそんな区別をしているのかは知らないが、彼らは時折互いの家を行き来して兄弟のように育ってきた。

「だって、俺が言ってどうするんだよ」

 サタルは軽く問い返す。アレンは膨れ面をした。

「アレフ兄ちゃんは昔っからサタ兄の言うことは絶対聞くだろ」

「まあそうだね」

 堅真面目な従兄は、どういう理由かこの正反対な飄々としたはとこを異様に慕っていた。その慕い具合は尊敬を通り越して崇拝と言えるほどで、アレンも従兄が結婚するまで彼ははとこに傾慕しているのではないかと疑ってしまうくらいだった。

「アレフの他人に期待しちゃう性格は、俺がこうしちゃダメって言ったくらいじゃ本当の解決にはならないよ。もうちょっと身に堪えさせないとね」

 それに、とサタルは眼鏡のつるを軽く指で上げる。

「問題が起きてるのはヒーローの間でなんだろ? そこに一般人の俺が出ていったら滑稽にもほどがあるじゃないか。アメコミに朝の連ドラの登場人物が出ていくようなものだよ」

「何だよそれ」

「ちぐはぐだってことだよ。アレフのためにも良くない」

 たとえはよく分からないが、従兄のために良くないという台詞は胸にきた。サタルは頬杖をついてアレンの瞳を覗き込み、励ますように微笑む。

「五人もいれば性格も環境も違う。みんなが何を考えてて、ヒーローとして何がしたいのか、よく観察してみたらどう?」

「ヒーローとして……」

 アレンは考え込む。彼らは無作為に選ばれたが、それぞれ仕事に誇りは感じていると思っていた。しかし、それを直接本人達の口から聞いたことはない。

「よく話して、聞いて、見てみたら? 少し見ただけじゃ分かりづらいものだけど、お前の目は曇りがなくてまっすぐだから分かるはずだよ。分からないということも含めてね」

「分からないのか?」

「それは見てみないと分からない。人のことなんて全部把握するのは無理だからね。無駄に自分に自信を持っちゃいけないよ」

 アレンははとこの言葉を反復する。ヒーローのみんなをよく見ること。よく考えてみれば自分は、ヒーロー達の悪を討つという大雑把な指針は知っているものの、それについてどう思っているのかは聞いたことがない。そして、仕事についてまともに話し合っているのも見たことがない。

「うん、よくみんなの様子見てみる」

 サタルはにっこりと頷いた。

「そうしなよ。それとついでに、いい加減週に三回くらいはお父さんとご飯食べてあげたら?」

「やだよ、あのスパルタくそ親父」

 アレンは思い切り毒づいて、チキンのソテーにかぶりついた。皮が香ばしく、身はしっとりしていて美味しい。はとこは男のわりに料理が上手いと思う。

 アレンは週のうち、日曜日と水曜日しか家で夕飯を食べない。理由は簡単だ。母が他界してから家には軍人の父しかおらず、ほとんど仕事で留守にしていればいいものの、いる時は息子である彼に非常に厳しく接してくるからだった。

「アイツ飯作らないし。俺が作ると文句付けるし。絶対やだ」

「お父さんは何もお前が嫌いでそうしてるわけじゃないんだって」

 サタルが宥めるが、アレンは絶対嫌だった。だから夕飯は三人いる従兄妹の家を練り歩き、このはとこの家にもお世話になる。アレフの家はこちらがいてもあからさまにいちゃつくし惚気られるので、週に一回と誘われた時しかいかない。それより行くのは親友でもあるアーサー・サマルトリアの家とこのサタルの部屋だった。

「サタ兄いつも一人だしいいだろ。コームインだから上がりも早いし」

「いつも一人って……そんな他人を友達がいないみたいに」

「いるのかよ?」

「あまり会わないだけで、いるよ」

 サタルのプライベートは、はとこである自分にも謎に包まれている。現にアレンはその年齢さえ詳しく知らなかった。アレフが敬語で話すから年上なのではないかと思うものの、はとこは昔から見た目に気を遣い伊達男を自認していたから、ひどく大人びて見えることもあれば学生のように見えることもある。だが少なくとも運転できるし酒も飲めるし職に就いているから、成人はしているのだろう。

「彼女は?」

「います」

「マジ? どんな人?」

「はい、これ以上は事務所通してくださーい」

 いつもこれである。まあたまに家にいないこともあるし、そんなことだろうとは思っていたのだが。昔から、はとこは自分と違ってよくモテた。

 その時、玄関のチャイムが鳴った。サタルが立ち上がり見に行く。ややあってリビングに入って来たのは、短い黒髪の女性だった。

「あらアレン。久しぶり」

「サンドラ姉ちゃん、こんばんは」

 彼女は名をアレクサンドラという。サタルの双子の姉で、アレンも幼い頃からお世話になっていた。

「いきなり悪いわね。まだ仕事の途中なんだけど、落ち着いた場所で電話がしたかったから」

 サンドラは弁護士である。家は別の場所に借りているらしいが、たまにこうしてサタルの家に足を止めることがあった。

「じゃあ俺、席外すよ」

 アレンはいそいそと立ち上がって、会話の聞こえない別の部屋へと移った。これもよくあることだった

 

 

 

「アレンは相変わらずなの?」

「ヒーロー業に精をだしてるよ。嬉しいことだね」

 サタルは朗らかに言う。サンドラはカバンから書類を出し、見比べながら話しかける。

「噂は聞いてるわよ。伝説の異次元ヒーロー。でも彼らの周り、安定してないみたいね」

「なんてことないよ。いつだってそうじゃないか。正義と正義のぶつかり合いさ」

 弟の言うことにサンドラは鼻を鳴らす。彼は楽しそうに続けた。

「彼らフリーに任せておこうよ。聞いてると面白いよ」

「趣味悪いわね。あの子達のことが心配じゃないの?」

「うちの血統をあまく見ちゃいけないよ。ちょっと叩かれたくらいじゃへこたれない」

 サタルの眼鏡の奥の瞳は愉悦で煌めいている。

「貴方は出ていかないわけ?」

「国家権力はいつだって高みの見物、それと良いトコ取りさ」

「それ、特に貴方に限った話でしょ」

「俺はデスクワーク派なの。ハリウッド映画の主役には、ひ弱なモブよりスーパーマンの方が似合うだろ?」

 サンドラは溜め息を吐く。以前から捉えどころのない弟だったが、今の職についてからそれがひどくなっている気がする。裏の黒い世界などないと思っているが、彼の世界では黒以外の色合いなんてあるのだろうか。

「ところでその伊達メガネ、ウザいわよ」

「酷いな!」

 

 

 

 

こんなおまけ話どうなんだ……どこに生きるんだ……。

でもこれで現パロにⅢ主二人出せました。公務員と検察官です。ヒーロー連作とは全く無関係でいいんですけど、きな臭そうなのが書けて良かったです。

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2015年

2月

20日

現代パロディ「ヒーローズの疑惑」

 異次元戦隊DQヒーローズというのがいる。彼らはそれぞれ赤、青、緑、黄、黒のスーツを纏い覆面を被った五人組であり、誰かが困った時に颯爽と現れ事件を解決する。そして気が付くと、風のように消え去っている。人々はその存在を半ば都市伝説と思いながら生活している。だが誰かの悲鳴が響く度、パトカーが通り過ぎる度、彼らは鮮やかな五色の人々を求めて辺りを見回す。そして彼らを見つけた者は狂喜し、叫ぶのである。

「来た! 私達のヒーローだ!」

 

 

 

 首都のそのオフィスビル街を歩く人は、各々仕事のことで頭がいっぱいになっている。だから街路に並ぶビルがどこの会社のものなんていちいち立ち止まって確認したり、覗き込んだりなんてしない。

 そのおかげで、かの廃墟じみた古ビルは正体を晒さずにいた。

「やっぱり、ブラックの奴怪しいと思わないか?」

 古ビルの五階、四人の男達が一室に集まっている。そう言うのは顔の周りで切りそろえた茶髪が特徴的な好青年。身に纏うスーツは黄色。普段は大学で健全なキャンパスライフを送る学生で、本名をノアというらしい。学部は栄養何ちゃら科だったか。

「ブラックって、どの?」

 彼に向って尋ねる緑髪の美少年ティアは、髪と同じ色のスーツ。整ったかんばせは大人びているが浮かぶ表情はそれにしてはややぼんやりとしており、実際彼はまだ高校生なのだと聞く。

「本物のブラックだよ」

「代理じゃなくて?」

「元祖だろ? そんなに怪しいか?」

 きょとんとするのは真っ青な髪と正反対な真っ赤な衣装の男、レック。レッドと呼ばれる彼は一応今そろっている四人の中では年長で、そのくせかなりの自由人。何せ本業はミュージシャンでピアノ調律師だ。わけが分からない。

「なあブルー」

「俺には分からないよ」

 大体、何でブルーの色が一番似合わない自分に聞くのだろう。

アレンは普段は苦手な勉強に頭を抱え、部活と運動関係は人一倍活躍する中学三年生だった。それが何の因果か、無償の人助けを生業とするヒーローなんてやる羽目になってしまっている。

――そう。お察しの通り、この四人は伝説の異次元戦隊なのである。

しかしその空気は和やかなものとは言い難い。原因は、この場に欠けた一色にあった。

「だって、この間の銀行強盗の見た?」

 イエローは眉根を寄せて指を振る。レッドとグリーンはううんと首を横に振る。

「俺達が駆けつけた時、客として平然と座ってた」

「え、マジで?」

 レッドが目を丸くする。ヒーローにとって、事件が起こったら変身と人助けは必須である。それをしないというのは考えられない。

 イエローはそう、とレッドに詰め寄る。

「俺達が来たらさり気なく騒ぎに紛れていなくなったみたい。怪しくねえ?」

「そう言えば。俺も見た」

 グリーンがのんびりとした口調で言う。

「先月の立てこもり事件、見物人の中に紛れてた」

「嘘だろ!?」

「本当。しっかり見た」

 レッドは目を剥く。二度頷いて、イエローは腕を組む。

「もしかしてブラックの奴、本当は俺達の敵なんじゃ……」

「いや! アイツ確かに顔怖いし無愛想だし金に目がないけど、そんな悪いことやるような奴じゃないだろ! なあ!?」

「うーん」

 アレンは眉間に力を込めたまま黙ってしまう。

 正式ブラックことアレフは、去年職場体験でお世話になった人でもある。だが正直なところ、彼の身辺は近ごろ怪しい。どう怪しいとは言えないのだが、野生の勘だけは鋭いと言われるアレンの勘が騒いでいる。加えて本人より何より、ブラックの代理の一人である従兄のアレフレッドの様子がどうもおかしいのだ。ブラックのことを聞くと変な顔をする。アレフレッドはブラックとの付き合いが長く、おまけに嘘を吐くのが下手だ。これは何かあるに違いない。

「やっほー! みんな元気ぃ?」

 陽気な声とともに部屋の扉が開け放たれた。腕に大きな地球儀やら古めかしい箱を抱えたスタイル抜群の美女である。なびく白衣を見てレッドが博士と呟く。彼女こそ、ヒーローの活動を支援する博士だった。

「なあ、博士。元祖ブラックって今何してんの?」

「そんなに気になるなら、実際に見て確かめればいいんじゃない?」

 博士は平然と言い、くるくると回していた地球儀の一点を指した。アフリカ南端、希望峰。

「いやいや、無理無理」

 ヒーローたちは声を揃えた。

 

 

 

青い小鳥のさえずりでまたまたとんでもない話が始まったので。ひとまずこんな感じで……。

 

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2015年

2月

20日

心を一つに

「わああっかっれええええええ」

 思いっきり叫んだら後頭部を殴られた。俺は恨みがましい眼で殴った奴を見るが、奴はゴーグルをつけて素知らぬ顔。くっそ、あとで覚えてろよこの脳筋! ボキャ貧だからってこの他人が辛さに苦しんでる時に暴力で突っ込むなよな!

 まあそんなことは置いといてだ。あのかぷりこん? とかいう奴はダメだ。全身から辛いオーラが出てる。こっちの皮膚どころか目、舌までヒリヒリしちまう。

「なあなあその氷菓子? くれ!」

 博士が何か取り出してた。何だろう、氷の結晶みたいだけど美味そう。手を伸ばそうとしたら引っ込められた。

「ダメだよ、それよりこれはこう使うの!」

 博士はそう言って、思いっきり氷の結晶を投げつけた!

 唐辛子の化け物が悲鳴を上げる。なるほど、見た目火っぽいなと思ってたけど本当に氷に弱いんだ。

「みんなこれ持ってて!」

 博士がどんどん氷を投げつける間に、ノアことイエローがちっこいものをみんなに向かって放る。それぞれが掌に落ちたものを覗き込んだ。

「何だ、これ」

「ホーリーキャンディだよ。アイツ対策に一応持っといて」

 尋ねたグリーンにイエローが答える。それから休むことなく袋の中から重そうにまた袋を取り出す。ライトが重そうなそれを手伝って持つ。何で大袋の砂糖なんて持ち歩いてるんだろう。ま、いっか。

 俺はキャンディを口に含む。うん、めっちゃ美味い!

「ちゃっちゃと片づけるぞ」

「おう、やるぜッ!」

 ブラックが駆け出していく後ろに意気揚々と続く。俺は今、すっごく機嫌がいい。だって、美味い菓子食えて元凶もボコれて、一石二鳥ってもんだからな!

「これは腹減った分!」

「散々食い物探して歩き回った分!」

「無駄に戦闘させられた分!」

「スープが無駄になった分」

「何度も危ない目に遭わされた分!」

「えっと……何もないけど連れて来られた分!」

 男六人で恨みつらみを口にしながら唐辛子を剣で叩いて、博士は後ろから氷の結晶をまいて。俺達は未だかつてない連帯感に包まれていた。

 

 

 

 

主人公共闘企画リレー小説、六巡目十七番目です。稲野さんから「氷の結晶」頂きました。

Ⅹはお祭り要素満載ですね。余計手出すのやめようと思いました。

次は夏ミカンさんへ。回すアイテムは「ホーリーキャンディ」です。

 

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2015年

2月

18日

脱出を目指して

 塔の中は変だった。どの辺が変かって、人形ばっかりなんだ。壁沿いには銅像、壁自体には剥製がついてるし、天井にはモンスターの模型が吊るされてる。道はグネグネクネクネしてて先が見えず、行く手を探ろうとすれば先に無機質な顔がこっちを見返して来る。おまけに窓が小さい上にほとんどないもんだから、たまにこちらの灯りを跳ね返した奴らの目が暗がりにギラッて光るんで心臓に悪い。

「わっひゃあああ! 死体ッ!」

「死体じゃねーよミイラの模型だろ」

 アレンがぶっきらぼうに俺の悲鳴に言葉を返す。ロトはよくできてるねえと心なしか嬉しそうにそれを目で追い、ノアは気味悪そうにミイラを見て、新顔の兄ちゃんは無表情なティアの手をさり気なく握る。先頭を行くアレフはこっちには見向きもせずどんどん先を進んでいく。

 何だよぉ。みんなリアクション小さくてつまんねえ。こういうところはみんなでぎゃあぎゃあ騒ぎながら行くのが普通だろ。バーバラもハッサンもアモスもみんな俺よりうるさくて楽しかったのに。

 足だけは一応動かしながら周りを見る。それにしてもよくできた人形たちだ。銅像にはストーンビーストや何て言ったっけな、忘れたけど頭しかない何とかヘッドって奴とか、そういうを真似た奴がたくさんいる。人形はメタルハンターとかサボテンボールとか、これが一番バリエーション豊かだ。頭上にはメランザーナやハナカワセミが漂っている。

 どれも本物そっくりだ。どうなってるんだろう。

ちらりと前を行くアレンを窺う。こっちには気付いていない。ちょっとだけ足を止めて足下に座ってるファーラットの手を握ってみる。わあ、もこもこ。あったかい。

 ……ん?

 俺が違和感を覚えて手を握りなおした刹那、円らな目がぱちくりと瞬きした。それに合わせたように、遠くで石の扉が閉まる重い音がした。

「やべえ! コイツら本物だッ!!」

 叫んで跳び退った途端、奴らも命を吹き込まれたように動き出した。暗闇に無数の瞳が浮かび上がる。

 俺は袋から手探りでラーの鏡を取り出して見る。周囲を囲むのは魔物、魔物、魔物――人形なんていやしねえ!

「ぼやぼやすんな!」

 アレンが剣を抜いて落ちて来たメランザーナを斬る。ティアが中級爆発呪、ライトが剣で辺りを払う。ロトは退路を探している。

「ダメ、他に道ないよ!」

「くそっ!」

 アレフが聖水を撒く。魔物達が怯んで、僅かだが視界が開けた。その隙をついて駆け出す。

「とにかく上だ、一番上を目指せ!」

 ノアの叫ぶ声。言われるまでもなく、俺達は上を目指してひた走った。

 

 

 

主人公共闘企画リレー小説、五巡目十四番目です。稲野さんから「聖水」頂きました。

五巡目まで来るとは……いやはやありがとうございます。

次は夏ミカンさんへ。回すアイテムは「ラーの鏡」です。

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2015年

2月

17日

行け!DQヒーローズ!

「みんな飛び乗れー!」

 でかいスライム戦車がこっちに向かって突っ込んでくる。俺達はそれぞれタイミングを合わせて戦車に飛び乗った。

 ダークホビットはあらかた蹴散らした今、何でこれに乗らなくちゃいけないんだろう。理解できないが、猛進されてきちゃ乗るしかない。またアイツの勢いに飲み込まれる形になった。

「なあアンタまじすげーな! 博士!? 博士なの!?」

「ねー可愛いでしょスラリンガルって!」

 中にはいつの間にかすでにこれを出したねーちゃんが乗っていて、レックと噛み合ってるのか微妙な会話をしている。だが二人とも満面の笑みで問題には感じていないらしい。

「こうなったらアレ欲しい! こう、着るとピカーッてなるヤツ! バトルロードのおっさんが着てるみたいなヤツ!」

 レックは身振り手振りを交えて言うが、何のことを言っているのかさっぱりわからない。だがねーちゃんはうんうんと大きく頷いた。

「おっけー、任せて!」

 そしてまた鍋を床に据え、カバンから何やら取り出して放り込み蓋を落とした。鍋がぶるぶると震え始める。

「お前なあ、いきなり突っ込んできたら危ないだろう!」

 マフラーの奴が双剣を鞘に収めてレックに詰め寄る。だがレックは鼻歌交じりに操縦レバーを動かして残党を蹴散らしながら明るく言う。

「でもみんな乗れたじゃん」

「そうじゃなくて」

 マフラーは額を抑える。分かるぞ、その気持ち。俺も少し前ならツッコんでた。だが今なら分かる。コイツに普通の理論は通用しない。

 レックはそれでも文句を言いたげな雰囲気を察したのか、振り返って唇を尖らせる。

「えーとアンタ……何だっけ名前。覚えづれえんだよな、似た奴らいっぱいいるから。あだなつけようぜ!」

「いや何でそうなったし」

「むしろ覚えづれえよ」

 しかし奴の持って行った方向は完全に俺の予想外で、思わず放ったツッコミは鎧の兄さんと被った。

 ――チーーーーン!

 ちょうどその時、軽快な音と共に鍋の蓋が吹き飛んだ。鍋から目が利かなくなるほどの眩い光が溢れ出し、俺は目を腕で覆う。再び目を開けて見るとそこには信じがたい光景が広がっていた。

 俺も含めた五人の男達の服装が、シンプルなスーツに変貌していたのだ。

「ヒーローイエロー!」

 急に現れた真っ黄色の衣装に目を丸くして見ているマフラーの男を指して、レックが言う。

「ヒーローグリーン!」

 不思議そうながら無口な少年は、自分の髪と同じ色の衣装にも何も言わない。

「ヒーローブラック!」

 鎧だった全身黒づくめの兄さんは凄く帰りたそうな顔をしている。

「ヒーローブルー!」

 俺のことらしい。ぴったりした服は目の覚めるような青だ。

「そして俺、ヒーローレッド! と、俺達をサポートしてくれる万能博士!」

 赤いスーツのレックが姉ちゃんを示し、これまた何故か白衣を着た姉ちゃんが手を振る。

「みんな合わせて! 異次元戦隊DQヒーローズ!」

 ババーーーンっ!!

 バカが高らかに叫んで何故か爆弾石を宙に向かって投げたところで、俺達はまったく操縦していなかった戦車が崖から空中滑走していることに気付いた。

 

 

 

主人公共闘企画リレー小説、四巡目十一番目です。稲野さんから「勇車スラリンガル」頂きました。

そしてOKサイン頂いたのでやりました。良かったんでしょうかこれで。

次は夏ミカンさんへ。回すアイテムは「爆弾石」です。

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2015年

2月

15日

食事時は落ち着いて座りましょう

 どこからか芳しい匂いがする。鼻を利かせてみると剣を交える連中の風上、黒髪の女と緑髪の男の二人が囲む釜から何やら丸いものがぽこぽこと生まれ出ていた。何だあれは。マメか?

「なに!? マメ? マメ?」

 縫うような剣の連撃の最中に身を置いているのに美味そうな匂いを嗅ぎつけたらしく、わーいと叫びながらバカが戦線離脱して駆けて来ようとする。しかし完全に駆け出す前に鎧の方に足をかけられてつっこけた。

「お前が先はおかしいだろう」

「そうだよ。て言うかお前は絶対料理に近づくな」

 マフラーの男が同調する。レックはごろりと仰向けになって、かと思いきや腹筋だけで勢いよく飛び起きた。

「何でだよーケチ! 早いもん勝ちだろ!」

 唇を尖らせて後転しながら蹴りを突き出す。ブーツが二人の顔の間を掠めて半円を描き直立で着地。さらに身体を半回転させてすたこらと釜を目指す。

「おっ……お前なあ!」

 悪びれない奴に二人は怒る。マフラーの方が一足飛びにレックの前に立ちはだかり、双剣を構え直した。

「えーどけよ!」

「せっかくの料理をまた不意にされてたまるかっ」

 マフラーはガンガン攻め込む。レックはおっわっほっなどと間抜けな声を漏らしながらラミアスで受ける。せせこましい足の動きを封じるように鎧が剣を繰り出す。すげえな。二人して上手いことアイツの動きを止めてる。俺もこんな場合じゃなかったら手合せしてもらいてえんだけど。

「一回落ち着いて下がってろクソガキ」

 鎧の兄さんが言う。まったくだ、もっと言ってやってくれ。

 だが追い詰められてるっていうのに、逆にレックの目は子犬みたいに輝いてきてる。あーまずい。テンション上がってる。

「ボミオス!」

 突如、三人の動きがゆるくなった。詠唱した主は釜を緑髪の奴に持たせてのろのろと振り返る連中に歩み寄る。

「はい順番ねー! ほら早く手出して」

「おーまーえー」

「そーんーなーひーどーいー」

 男達は全く非難の感じられない緩慢な口調で責める。だが彼女の方は全く気にせずのろい掌を出させてその上にちょいちょいとマメを置いて行く。

 まあ確かにボミオスしといて早くしろは無理だな。こういう時補助呪文使いは強いと思う。

 俺は自分の手にあるものを見下ろす。とりあえず、コイツをぶちまけるような羽目にならなくて良かった。

「そこのゴーグル君、ご飯いらないの?」

「いや、いる」

 まだらくも糸を袋に入れ、俺は足を踏み出した。

 

 

 

主人公共闘企画リレー小説、三巡目八番目です。稲野さんから「ハツラツマメ」頂きました。

やっとご飯……カナー?

次は夏ミカンさんへ。回すアイテムは「まだらくも糸」です。

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2015年

2月

13日

燃えろ食欲の炎!

 頭の上を黒い点が過ろうとしている。よし、今だ!

「ライディンッ!」

 掌にかき集めた力が爆発する。碧空に走った稲妻は過たず点を射抜いた。

 ひゅるるると気の抜けた音を立てて姿焼きになった鳥が落ちて来た。ヘルコンドルだ。勿論既に絶命していて、白く煙を上げていた。

「やった、今度は成功だ!」

 俺はヘルコンドルに飛びつく。ウキウキと首を落として羽毛を剥ぎにかかる。だがその前に視界の端に何かが光った。手を止めて見てみる。今落としたばかりの首、嘴に黄金の輝きがあった。

「何でモンスターコインなんて持ってんだろ」

「知らねえ。スライムでも食ってたんじゃねえ?」

 アレンがそれを拾い上げる。しかも絵柄はスライムだ。コイツ、ヘルコンドルなのに。変なの。

 まあいい。そんなことより飯だ! ナイフを動かす作業を再開する。火が通っちまうと剥ぎづらくて見た目がボロボロになっちまうんだが食えりゃいいよな。

「アレン、一応松明用意してくれねえ?」

「大体火通ってるだろ」

「でも生で腹壊したら嫌じゃん」

「仕方ねえな」

「あっ!」

 アレンの声に、アレンじゃない声が被った。思わずそっちを窺う。ゴツゴツした岩場の向うから、明らかに岩じゃないものがこちらを見ていた。なんかおっかねえ顔した鎧の兄ちゃんと目を丸くしたショートヘアの女の子だ。

「わあ、あれ私達のモンスターメダルだよね! 良かった、これでご飯かデイン君か決められるね」

「いや、勝敗は関係なくなったぞ」

 兄ちゃんの目が暗く燃え上がり、口の端が吊り上がった。こちらへ向かって踏み出しながらすらりと腰の業物を抜き放ち、剣先を俺に向ける。

「一応聞く。さっき、キメラをデインで撃ち落としたのはお前か?」

「え? ああ……そういや落としたかも」

 答えた瞬間だった。岩が崩れる音、一筋の鈍い光。肌が泡立って後ろに飛びのいた。俺がいた空間に兄ちゃんが剣を突き刺していた。

「てめーかさっきのデイン泥棒は!」

 兄ちゃんが声を荒げて俺に斬りかかる。おいおいおい! 五月雨の如く繰り出される剣を飛んで跳ねてかろうじて避ける。

「ロト、手伝え!」

「アレフさん」

 ロトって呼ばれた女の子が真摯な顔つきで兄ちゃんを呼ぶ。

「いくらなんでも人は美味しくないと思うよ」

「そうじゃねえよさっきの借りを返すんだよ! 食い物頂くからいいから何かかけろ!」

「バイキルトでいい?」

 ロトが詠唱すると俺の周囲で上がる剣の唸り声が大きくなった。くっそ、あの子魔法使いタイプか! っていうか俺何でこんなことになってるんだ?

 こりゃヘルコンドルどころじゃねえ、そして素手でやり合える相手でもねえ。俺はヘルコンドルを後ろに投げ捨ててラミアスを引き抜く。

「アレン助けて!」

「やだよ、自業自得だろ」

 俺が人に襲われてるっていうのに、仲間は冷たい返事をしてきた。くそっ薄情者!

「じゃあ手伝わなくていいから飯取っといて!」

 アレンは不承不承といった様子で松明を放り投げ、焼き鳥を回収しにいこうとする。

「いてっ!」

 どこからともなく第三者の声がした。

 

 


主人公共闘企画リレー小説、二巡目五番目です。稲野さんから「モンスターメダル」頂きました。

一回やってみたかったんです、主人公vs主人公!

次は夏ミカンさんへ。回すアイテムは「松明」です。

 

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2015年

2月

12日

痺れアゲハは食べられるかもしれません

「当たった! すっげー俺のコントロールすっげー!」

 雷の柱が黒い点になりかけていたキメラを貫いたのを見て俺は飛び上がった。やっぱり俺のデインコントロールは日増しに良くなっている。毎日欠かさず使ってる甲斐があったってもんだ。努力ってのは大事だな! うん!

 満足感に浸っていると、雷が落ちた場所から白くて細い光が立った。目の上に手を当てて目を凝らす。何だ今の。転移呪文っぽいような?

「おおっ!?」

 次の瞬間、今見たのとそっくりな光が何故か俺の足下に落ちて来た。綺麗に地面に鎮座したのはキメラの翼。と、煙を上げる黒っぽい何か。

 俺はその塊をとくとくと眺めて、どうも俺が射落としたキメラは炭になってしまい、何故か羽根だけが無事だったらしいと理解した。がっくりと肩を落とす。

「ああー……やっと食い物にありつけると思ったんだけどなあ」

 実はこのよく分からない場所に来てから既に丸一日が過ぎているのだが、その間俺は何も食べられていない。携帯食料があればそれで凌げたんだがあいにく何も持っていなかった。そろそろ腹も身体も限界で、いい加減何か食べたかった。

 ああ、俺に世界を駆ける翼があったなら。そうしたらすぐに帰って何か食べられるのに。

「ん? あっ!」

 その時、閃きが走った。足下にある物を改めて見てみる。キメラの翼。翼じゃないか! これを使えばどこかに飛べるかもしれない!

 早速キメラの翼を拾い上げてみる。改めて見てみるとキメラの翼っていいな! 今までルーラできるし要ると思ったことなかったけど、こういう覚えのない状況じゃあ助かる。このキメラの翼が記憶した場所に連れてってもらえるかもしれないからな。うーんキメラの翼、良いアイテムだ! 何となく食えそうな気もしてきたし!

 俺はキメラの翼を見つめて食ってみようか使おうか迷う。そのうちに近くの茂みがガサガサと鳴った。

「おい、レックお前ふざけんじゃねーぞ!」

 頭にまずそうな木葉を付けた青い旅装の男が飛び出して来た。俺は戦利品を見せてやる。

「アレン見ろよ! 俺の超絶デインテクニックでキメラ落とした!」

「それどこじゃねーよバカ!」

 後ろ見ろ、とアレン。俺は言う通りに目をやる。そしておっと声を漏らした。

 木々の隙間からピンクの風――いや、痺れアゲハの大群が押し寄せてくる!

「お前のデインでびっくりして俺を襲って来やがった!」

 アレンが剣を抜いて大きく空を薙ぐ。衝撃波が痺れアゲハを襲い鱗粉がぶわっと舞う。俺は袋を取り出して走り出した。鱗粉に袋を翳すと中に粉が溜まっていく。

「お前何やってんだよ!」

「毒蛾の粉って適量なら食えるらしいぞ」

「んなことやってる場合か戦えよ!」

 俺はもっと毒蛾の粉を集めたかったが、仕方ないので袋を閉じて指先を伸ばし真空派を飛ばす。

「べぶっ」

 しかし急に目の前が真っ暗になった。顔面にへばりついたものを投げ飛ばす。ただの痺れアゲハだった。けれど投げた方を見て顔から血の気が引いた。いけねえ、キメラの翼と毒蛾の粉も一緒に投げちまった!

「あーっ! キメラの翼とふりかけ!」

「黙れ!」

 アレンの毒づきと共に、一筋の光が立ちのぼった。

 

 


主人公共闘企画リレー小説、二番目です。稲野さんから「キメラの翼」頂きました。

レックとアレンでギリギリ共闘です。まだちょっと様子見な感じで次は……頑張りたいです。1000字は意外と短い! 他の方の主人公も出せなかった。


とりあえずブログに投げて後で様子見てページ改めます。


次は夏ミカンさんへ。回すアイテムは「毒蛾の粉」です!

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