セントシュタインの広い青空に、カラフルな光が弾けます。それからやや遅れて、ドンドンと響く花火の音と火薬の匂い。

 堅牢な街並みで知られるセントシュタインの城下はこの日、常よりずっと華やかな装いに身を包んでいました。街のいたる路地に彩色豊かな三角旗が下げられ、派手な看板を競うかのように掲げた出店が立ち並んでいます。

 セントシュタインに初めて立ち寄る旅人達が、橙に灼けた煉瓦通りを埋め尽くさんばかりの人混みに、目を白黒させます。人の波の凄さに眩暈を起こして、たった今出ようとしていた宿から出られない者もいます。喜び勇んで、何か分からないまでも飛び込んでいく者もいます。城門を潜ったばかりの者は、近くの番兵にこれは一体何の騒ぎなのか尋ねます。

 すると、門番は決まってこう答えます。


「お客さん、運がいいね。今日はセントシュタインにとって特別な日。三ヶ月に一度の、全商会総出店総売り出し祭りの行われる日なんですよ!」


 そして同時に、書店業界の出店スペースことフクロウ煉瓦通りでは、「こんなにみっけもんの本が!祭り」こと「コミマ」が行われる日でもありました。


 そのフクロウ煉瓦通りの片隅に、小さな小さな販売スペースがありました。大した飾り付けもしていないそのスペースには、申し訳程度の本の山を三つだけ乗せた長机の前に、「異次元サークル:導かれしマブタチ」というアホのようなサークル名の書かれたプレートを下げています。そして店の奥には、ドクロのTシャツを羽織った小柄な少女が、死んだ泥人形のごとく座っていました。


「カノンさん、交代です」


 スペースの前に人影が一つ立ち、彼女に声をかけます。泥人形のようだった少女の瞳が、やっと焦点を結びました。


「ナイン……助かるよ」

「今日は本当に人が多いから、大変でしたでしょう。お疲れ様です」

「いや、大変じゃないんだけど。なんかたまに、すごくテンションの高い人が話しかけてきたりするから疲れる……」


 少女ことカノンは大きく伸びをして立ち上がりました。そしてやっと生気の宿り始めた瞳に救世主の姿を映して、思わず問いました。


「アンタ、その格好でやるの?」

「はい」


 少年は、手足の生えたスライムタワーと化していました。てっぺんのスライムの口から彼の大きなグレイの瞳が見えていなかったら、カノンは不審者として迷うことなく攻撃していたかもしれません。


「このスーツ、結構便利なんですよ。目立ちますし、女性や子供からの評判も良いんです」

「十八禁売るのに、子供の視線釘付けてどうするの」

「ご安心下さい。子供たちには『十年後にまたおいで』って言います」

「やめて」


 童顔の自分より幼い彼の瞳には、一点の曇りも見当たりません。

 何故、恋人が異次元へ行った先で紹介する人間は、奇人ばかりなのだろう。カノンは一瞬悩みましたが、もう面倒になってきたので、全てをこの少年に投げて帰ることにしました。


「あいつらがサークル漁りから帰ってきたら、このメモ渡しといて」

「はい」

 

 カノンは売上冊数等に関する報告メモを託して、その場を後にします。残されたナインは彼女の座っていた椅子に腰掛け、店番を開始します。


 わー。

 ドンドンドン。

 ヒューっ。


 遠くから、人々の歓声や楽器の音が聞こえます。遠くからぼんやりと聞こえる程度なので何をしているのか最初は分かりませんでしたが、じっくりと耳を傾けているうちに、どうやらイベントステージで出し物を始めているらしいとナインは察しました。

 遠くからの音にこれだけ悠長に集中できるということは即ち、何を指すのか。ええ、そうです。閑古鳥です。暇を持て余したナインは、体を鈍らせないために椅子をどけて空気椅子の特訓を始めることにしました。


「おや、ナインじゃないか」


 そこへ、声がかかります。

 ナインは空気椅子の状態を保ったまま、顔を上げます。二人の男が、長机越しにこちらを覗き込んでいました。


「アレフさん。こんなところでお会いするとは、奇遇ですね」

「ああ、全くだ」


 二人連れの片方、金髪の男が応じます。

 彼はナインの仕事仲間兼友人である、異次元からの旅人です。今は旅人の服というラフな格好こそしていますが、腰に下げたオリハルコンの光沢を帯びた剣は、彼が只者でないことを示しています。

 ナインは彼の連れ立つ相手を見ます。濃い茶髪の、よく日に焼けた男です。彼はナインにさして関心がないのか、その尖った眼差しで辺りを見回しています。


「そちらは、どういったお方でしょう?」

「ああ、紹介しよう。こちらは友人のアレフだ」


 金髪のアレフは茶髪の彼を、そう紹介しました。


「俺と同じ名前なんだが、とても頼りになるいい戦士なんだ。彼といる時は、俺の方をフルネームのアレフレッドで呼んでほしい」


(そういう意味で尋ねたわけではないのですが)


 ナインはそう言おうかと思いましたが、以前、リッカに知人を「竜神族と人間の亜種でいらっしゃいます」と紹介したところ、「こういう時は、名前を言うだけでいいんだよ」とたしなめられたことを思い出したので、やめました。

 その代わり、手元にある本を差し出しました。


「二人のアレフさん、本はいかがですか?」

「本?」


 アレフレッドが聞き返します。隣のアレフもちらりとこちらを見ましたが、すぐにまたふいと別方向を向いてしまいました。どうしたというのでしょう。あちらに、そんなに気になるものがあるのでしょうか?

 ナインは二人に興味を持ってもらおうと、チラシと冊子のセットを一部渡します。アレフレッドはチラシを一瞥し、アレフへと回します。これには、突然現れた空気椅子をするスライムタワーの人間を頑張ってスルーしようとしていたアレフも流すことができず、渋々読む羽目になったのでした。


 そこにはだいたい、次のような紹介が書かれていました。






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サークル【導かれしマブダチ】

新刊『Going his GOIN way』

すべての強引な男を愛する人に送る、バリエーション豊かな強引攻め短編三つを収録。ある時は情熱的に、ある時は優しく、またある時は危険な香りを漂わせて、強引な男たちが迫る!

1.「青いカンジョウ」 

 冷静沈着で腕の立つ傭兵サムは、先日相棒であるひたむきなステイに告白され、紆余曲折の末に付き合い始めたばかり。しかし付き合い始めたステイは、何故かいつまで経ってもサムに手を出そうとしなくて……?【R18】

2.「My fairy Lady」

 お嬢様のマリーは、自分に仕える騎士スチュアートを連れて初めての街へと飛び出した! お騒がせだけど可愛いマリーと、彼女を愛する堅実なスチュアート。二人の紡ぐ、のほほんラブコメディ。

3.「茹だる夜に昼顔ほころび」

 その時、女は思い知った。間男によってもたらされた悦楽を。そして彼女が、どれだけ夫に守られていたか、ということをーー。

 純真な幼妻が昏い情愛に蝕まれるメロドラマ。

 

 

☆★☆★☆★☆






「何だこれは」


 アレフは眉根を寄せました。

 明らかに男性向けではありませんし、当然彼の趣味でもありません。どうしても声を上げずにははいられませんでした。


「確かにこれは、す、すごいな」


 アレフレッドは冊子を手早くめくって読み、動揺しています。


「一話一話の雰囲気が違いすぎて……こんなに差が激しいと、読者がついて来れないんじゃないか?」

「そこかよ」


 戦士の口から出るとは思えなかった編集者のような台詞に、アレフも一言差し込まずにはいられません。

 一方、ナインは首を傾けています。


「そうでしょうか?」

「ああ。たとえば、この話からスタートするわけだがーー」






☆★☆★☆★☆

 


『青いカンジョウ』

 

「なんてことするんだッ!」

 怒鳴られて、俺は硬直した。

 ステイは魔物の死体を退け大股に歩み寄ってくるなり、逃れようとする俺の方を掴む。思い切り揺さぶられ、視界が霞む。

「魔物の群れに剣一本で挑むなんて! 串刺しにされたいのか!」

 奴の瞳がぶれて、燃え上がる蒼炎のように見える。怒りに駆られた、白熱の炎だ。

 人の気も知らないで、何を勝手に憤っているんだか。

 俺は煩わしい手を振りはらい、冷ややかに返す。

「うるせぇな。それが何だって言うんだよ」

「はあ!?」

「俺が串刺しにされたって、お前には関係ないだろう」

「関係あるに決まっーー」

「だって、クソつまらねえ恋人だからなあ?」

 俺は。これまでに隠してきた気持ちを、剥き出した。

「落としてみてやっと、自分の思っていたのと違うって分かったのか? バカだろ。そんなことにも気づけねえくらい、俺たちの付き合いは短かったか?」

 そんなに息巻くな、やめとけ。頭のどこかで理性が窘める。だが、自分でも止められない。

「ちがっ、そういうわけじゃ――」

「そうだろ。振るにも中途半端に長く同業者でやってきたから振りづれえんだろ。それならそう言えよ。不健全だなんて、回りくどい言い方するなよ」

 奴のブロンドが垂れ下がる。俺は更に言葉を浴びせる。

「俺は気にしないから、さっさと終わらせろよ。お前が勝手に始めた関係なんだ。終わりだってお前がーー」

「悪かった」

 俺の口は止まった。

  俯いたステイの声が、震えていた。

「俺が全部悪かったから。君を抱きたくない、不健全だと言ったのも、避けたのも、何もかも。だからもう、頼むからやめてくれ」

 腕が伸びてきた。拒んでもいいはずなのに、俺は動けない。

 腕が首元に回って、鎧が擦れあって、秀でた額が俺の黒髪を掻き分ける。そうされて俺は、奴の震えていたのは声だけでなかったことに、やっと気付いた。

「耐えられないんだ。君を失いたくないけど、同時に君が正体をなくすくらい滅茶苦茶にしてしまいたい。だからどうしたらいいか、分からなくなってしまった」

 金の頭が上がる。ステイの、無理矢理笑う形に歪ませたのだろう顔が、視界の中央に映った。

「抱きたくないなんて、嘘だよ。俺はもうずっと前から、君を、ただの戦友としてなんて見られなかったんだから……」

 縋りつくように、覆いかぶさってくる。躊躇いがちに舌で唇に触れられる。驚いて声を上げようとした途端、言葉を絡め取られる。

 ああ、厄介なぬかるみに嵌ったーーそう気付いた時には遅く、俺の体はぐずぐずと崩れ落ちていった。ーーーー



☆★☆★☆★☆

  






「友情の延長線上にある恋愛話だから取っ付きやすくはあるが、冒頭にいきなり野原での十八禁を山場とする小説を持ってくるというのはどうなんだ?」

「ふむ。普通ならば違和感を覚えるところなのですね?」

「違和感と言うより、そぐわないと言った方がいいかもしれないな。で、その次がこれだろう?」


 アレフレッドはページを捲ります。








☆★☆★☆★☆

 


『My fairy Lady』

 白魚の指が自分の体のそこここで戯れているというのに、騎士は呆れた様子なのだ。

「おやめください、お嬢様」

「お嬢様はダメよ。敬語も取ってちょうだい」

「やめてくれ、マリー」

「イヤよ。あたしたち、カップルだもの。腕組んで歩いてくれなくちゃ、イヤ」

 マリーは綿飴のように白い頬を膨らませ、スチュアートをつつき続ける。彼がベンチの端まで逃げても、距離を詰めて体を押しつけてまでしてつつきに行く。

(ああもう。もっとかまってよ!)

 抱き着くみたいな恰好までしてるのに、彼はカラメルの髪に似つかわしい苦々しげな表情でそっぽを向いている。マリーにはそれがつまらない。

「えいえーい。何でこんなに魅力的な女の子がずっとそばにいるのに、何にもしないのよー」

「魅力的な女の子は、人前で何かしろとか言わないからな」

 つれない! つまらない! マリーはますます膨れる。そして感じてるつまらなさが、つつく回数にどんどん比例する。

 つんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつん。

「スチュアートぉ。構ってくれなきゃやだやだやだやだやっーー」

 駄々をこねるのに夢中になっていたマリーは、溜息を吐いた騎士の瞳が鋭くなったことに気付かなかった。

 気付けば彼女は、ベンチを背にしてスチュアートの腕の中に閉じ込められていた。

「えっ」

 マリーは言葉を失った。ここは公共の広場で、しかも彼に動きを封じられていて好き勝手できないというのに、暴れる気力も湧かなければ文句も口にできない。

 何故ならば。

「悪戯が過ぎるご令嬢にはーー」

 騎士の日に焼けた指が、マリーの滑らかな頬を辿った。覆いかぶさる彼が、悪戯に笑っている。

 「後で、お仕置きが必要だな」

(ど、どどどうしよう……)

 カッコよすぎてドキドキして、窒息しそう。ーーーー

 


☆★☆★☆★☆









「事件性が足りませんね」

「そうじゃない。急にほのぼのするから、余計前の話とのギャップが際立って、読んでる側もくたびれるだろう」

「そうなのですか」

「で、最後かこれだ」


 アレフレッドはまたページを捲ります。








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『茹だる夜に昼顔ほころび』

 吟遊詩人である夫は深夜を好む。彼は深まる闇と静寂にどっぷりと浸かった世界を愛し、足音を忍ばせて様々な夜を渡り歩いては、詩を詠ずることを愉しんでいた。

 少女がそんな夫に出会ったのも、やはりこの刻限でのことだった。共に漆黒の檳榔をかぶる花々や、月光の銀に煌めく狼の行進を眺め歩いた、深夜の散歩道。あの頃、月が闇を照らす世界に住むことを許されたのは、夫と彼女の二人だけだった。日出の気配が近づく度、世界の終わりだと囁き合いながら逃げるように、縺れるようにしてベッドへまろびこんだ。

 今は遠去かりし、美しく儚き逃避行。

 なのに、何ゆえに。人妻となった少女は嘆く。

 夫の旅の無事を祈るため、彼と深夜の逢瀬を重ねたこの教会に来ているはずなのに。

「ああ。だめ、ダメぇ」

 田舎町の老神父は、夜が早い。事件など起こるはずもないと聖堂を開け放したまま、床についてしまう。

 夜な夜な聖堂に響く、切ない喘ぎに気付かないまま。

「こんなの、おかしいよぉ……」

 薔薇窓から射し込む聖なる煌めきに満ちた空間に、湿ったモノのかき混ぜられるくちくちという音が尾を引く。

 規則正しく整列した長椅子の一つに、少女は腰掛けている。いや、正確に言うならば、長椅子に座った男の膝の上に、彼と向かい合う形で腰掛けているのである。そしてその男は勿論、優男風の夫とは異なる鋭利な風貌をしているのだが、男の鍛え抜かれた肉体に、瑞々しく従順な少女の躰は、隙間もなく沿うていた。しかし互いの顔の、時折月光を映して白く濡れる唇と舌だけは、緩慢にくっ付いては離れを繰り返していた。

 少女のぽってりと腫れた唇は、男の舌が差し込まれては抜け出ていく度に、悩ましさを識った女の腰のようにくねる。

「ねえ。これ、変だよぉ」

 少女は訴える。だがその声は再び男の唇に呑まれ、妙な艶を帯びてきたようにしか聞こえない。

「何が、変だって?」

 男は知らぬふりで誤魔化す。少女は必死で男に呑まれすぎまいと言葉を紡ぐ。

「こういうのって、結婚した男のヒトと女のヒトがするんだよ?」

「ただの親愛のキスだろ、義姉さん」

 息も絶え絶えに訴える年下の義姉を、年上の義弟はせせら笑う。

「まさか、兄貴とはまだやってないのか?」

「こんな長いの、やってないもん」

「それはいけないな」

 男はじれるほどにゆったりとした口調で説く。

「旦那のために女になってやるのが、妻というものだろう」

「お、んな」

 その口実のもと、男はいったい幾晩、夫のために祈ると言う少女についてきてはこうしているのだろう。

 躰の線を添わせ、漫然と口吸いだけを繰り返す。最初はよく意味の分からなかった少女だったが、次第にその躰をもって悟りつつあった。

「安心しろ。旦那のためにも、俺がお前を女にしてやるよ」

 この義弟はおかしなことを言っている。

 少女は薄々察してきていた。だが同時に、自分にこう言い聞かせていた。

 まだお互い服を着ているから、セーフだと。

 男の躰は炎のようで、緩やかに躰の芯が炙られていく。じっとりと汗ばむ少女の柔肌が男の筋肉の凹凸に馴染み、柔らかく包みこもうとする。硬い肌から滴る汗の匂いが、少女のまともな思考を犯す。

 ああ。受け入れてしまう。熱気でくらくらとする額を天へ向ければ、必然的に持て余した豊満な躰を擦り寄せる形になって、少女は喘ぐ。

 受け入れてはダメ。受け入れるべきヒトが、他にいるのに。ーーーー



☆★☆★☆★☆








「ドロドロですね」

「そうだ。本自体は強引な攻め手による恋愛短編集として統一しているつもりなのかもしれないが、話のジャンルや内容の差が激しすぎて、何でもイケる口の人間でないと厳しいだろう。普通の人間は、読んでいて疲れるのではないか?」

「うーん。そう言われましても……」

「だが、繋がりを無視して話の中身だけ見れば面白い」


 アレフレッドは冊子を閉じ、掲げます。


「一冊いただこう」

「マジか」

 アレフがぎょっとします。

 

「お前、普段からこういうものを読んでるのか?」

「別にそういうわけではないが、妻が恋愛小説を好んでいるからな。買って帰れば喜ぶだろう」

「アレフレッドさんの奥様は、スキモノですね」

「ナイン、それを言うならモノ好きだ。その言葉は、女性にかけてはいけないぞ」

「これは失礼しました」


 ごく真面目に流れていく会話に、アレフは何とも形容しがたい表情を浮かべています。ですが会話の当事者たちは全くそれに気付かず、さっさと代金と商品を引き換えます。


「また後で会おう。仕事の話がしたい」

「承知しました。では日没後、リッカの宿で」


 アレフレッドとナインは片手を上げて軽く挨拶を交わし、別れました。アレフは最後まで微妙な顔つきをしてナインを見つめていましたが、距離が離れた頃、何やらアレフに話しかけたようでした。


「それにしても、あのお連れの方……」


 その背中を見送りながら、ナインは一人つぶやきます。


「よほどの試練の星のもとに生まれたようですね。人ならざらぬがごとき人に出会うことにも慣れましたが、いやはや」


 静かに首を振ってから、続けます。


「とりあえず、この後アレフレッドさんに会ったら、光の加減次第で黒にも茶にも紅にも見える髪の人に、ご本人を元ネタにした同人誌の話をすることは失礼に値しなかったか、伺ってみるとしましょう」


 そうしてまた、空気椅子で店番を再開するのでした。


 





20170309